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倶利伽羅怪談 ㇰリヵㇻ ヵィダン 〜社畜バディと奔放JKの怪異対応処理〜  作者: 路明(ロア)
【第碌話】鬼ਟੋᖾこƽʖˋ ォニサン ⊐チㇻ

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203/262

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 市内郊外にある単身用アパートの一階共用通路。


 黒いスーツを着た不動産屋の男性が、ポケットから鍵を出して右から二番目の部屋のドアを開ける。

 涼一(りょういち)がルート営業で回っている企業のうちの一つで、事故物件もとりあつかっている老舗の不動産屋だ。

 店舗はとなりの市にあるのだが、昼間は本営業のほうでなかなか営業と話す場所が()けられないからと、担当者がいつも手近かな空き部屋の一室に案内する。


 きょうはこのアパートか。

 涼一はうながされて中へと入り、玄関とそこからつづく水場を軽く見回した。


 自身のアパートよりも築年数がありそうだ。

 いつも対応してくれる男性職員は事故物件担当者なんだそうだが、ここも事故物件なのか。

 


「奥どうぞ。いまお茶出しますから」



 担当者が童顔を愛想よく微笑させてそう伝える。

 涼一はうなずいて奥のたたみの部屋に靴下の足を踏み入れた。

 担当者が、シンクで水道の蛇口をまわす。

 ジャッと音を立てて真っ赤な液体が流れでた。

 

「ああ、すみません。ミネラルウォーター使いますね」


 涼一は、ただよってきた鉄分の匂いが気になって顔をしかめた。

 真っ赤な液体が、こわいくらい勢いよく流れつづけている。

 担当者が、キュッと蛇口を閉めた。



「血液……くらい赤いですね。サビですか?」

「まあ慢性的に血液が流れてると、サビやすいですね」



 担当者が答える。

 答えがややズレてるような。涼一は宙を見上げた。

「どうぞ。おすわりになってください。いまミネラルウォーター持ってきますので」

 そう言い、担当者がドアを開けて外に出ていく。

「はあ」

 涼一は、たたみの上にカバンを置いた。

 ふと横を見ると、髪の長い女性がざぶとんを二枚置いてくれている。

 うつむいてざぶとんをすすめ、自身もたたみの上に正座した。

 

「あ、ども」


 涼一はそう礼を言ってざぶとんの上に座った。

 不動産の女性職員か。

 いつの間にいたのか。気づかなかった。

「おつかれさまです……」

 髪の長い女性が、ボソボソとした声でそうあいさつする。

「ああ、えと。お世話になってます」

 涼一は愛想笑いをしてそう返した。


「すみません。わたしの怨みと出血量が多すぎたばっかりに」


 涼一はふたたび宙を見上げた。

 あんまり意味が分からん。

「えと……おケガでもなさったんですか?」

 愛想笑いをしながらそう返す。

「いまはこの通りです」

「ああ、回復されたならよかった」

 ははは、と愛想笑いをしてみせる。



「おまたせしました」



 玄関のドアが開く。

 担当者が、ペットボトルを一本持って戻った。

「いまお茶淹れますので」

「あ、おかまいなく」

 涼一は正座した脚を少しくずして座り直した。


「ああ、脚くずしてけっこうですよ」


 担当者がガスコンロに火をつけながら声をかけてくる。

「おそれいります」

 涼一は脚をくずしながら、ふと横を見た。


 

 さきほどの髪の長い女性がいない。



「あれ」

 部屋のなかを見回す。

 隠れられるところなんてなさそうだが。

「先日お貸しした海のほうの一軒家、どうでした?」

 担当者がお盆にのせたお茶を一人分だけ運んでくる。

 涼一のまえに静かに置いた。

 

「……そちらの分は。お飲みにならないんですか?」

「飲めないもので。いつも自宅ではお供えしてもらうんですが」


 担当者がにっこりと微笑する。

 意味が分からんが、何か変なものでも入れられてんのかと怖くなるじゃないか。

「えと、さきほどの髪の長い女性職員のかたは」

 涼一はお茶には手をつけず尋ねた。

「職員ではなくて、ここのもと住人ですね」

 担当者が答える。


 話があんまり見えん。

 だがここで困惑を顔に出すのは営業としてご法度だと思っている。

 涼一はいつもの営業用の愛想笑いを浮かべた。



「あの一軒家はとてもすごしやすくて、よい休日をすごさせていただきました。同行した友人も気に入って、たびたび来ようかなんて言っていて」


 

「お友だちもごいっしょだったんですか。気に入ってくださって何よりです」

 担当者がにっこりと笑う。

「ええ。ロフトからの海のながめがとてもきれいで、波の音が落ちつくものですね」

「それはよかった」

 おたがいに愛想笑いをし合う。

 


「それで、替えのたたみと床材なんですが」

「ええ。関連会社のほうに発注いたしますので」





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