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土屋とともにだらだらとした足どりでロフトに上がり、雑にたたんだ布団によりかかる。
涼一は、ふぅ、と息を吐いた。
土屋が、ロフトの床に座るなりスマホを操作しだす。
「K大橋、通行再開だってさ。――ここ一帯だけずっと河の水の大波でグラグラゆれて点検もままならなかったけど、ようやく止んだんで点検再開したって記事でてる」
「んじゃ、あしたは帰れんな……」
たたんだ布団に顔をふせて涼一はそう返した。
「さいごに龍王に引きずり出された黒いのって、あれが黒幕で白いうにょうにょは引っぱられてただけの海の死亡者って解釈でいいのか?」
「んじゃないの? 俺もそう思った」
土屋が返す。
「海の死亡者はとくに罪はないので観音さまが極楽浄土に案内、黒幕の悪徳お坊さまたちはお不動さまが焼却して地獄にご案内って感じでいいのかな」
土屋がそうつづけて、スマホを床の一角に置く。
「寝るならちゃんと布団敷いて寝ようよ、鏡谷くん」
土屋が中腰で立ち上がり自身の布団を敷きはじめる。
「このままで寝れる」
涼一は、たたんだ布団に顔をうずめた。
「変な姿勢で寝ると起きたとき体バキバキになんない?」
土屋が自身のふとんの上にポンとまくらを投げる。
「んー」
涼一は小さくうめいて体を起こした。
「なる」
しかたなく起き上がり、のろのろと布団を敷きはじめる。
「あのう、もうだいじょうぶですかぁ?」
「あらあらまあまあ、仏さまの持ちものにかつお節の袋がのってるの、これなに?」
ロフト下から、幽霊の老夫婦の声が聞こえる。
観音について行ったとかじゃなかったのか。今後もひきつづきここに出るつもりなんだろうか。
「あー花火見える」
土屋が窓の外をながめた。
さきほどから花火の大きな音と、しずかな波の音が交差している。
「さやりん、見に行ってんのかな」
「しらね」
涼一は敷いた布団の上にゴロンと横たわった。
うすい毛布を雑に自身の上にかける。
「死ぬほど寝るからな、起こすなよ。三日分とりもどしてやる」
「分かった、おやすみ」
土屋がそう返し、同じように横になった。薄手の毛布をかける衣ずれの音がする。
「起きたあと風呂は、さきに使ってたほう優先」
「おけ」
「行員さん来たら、気づいて目ぇ覚ましたほうが対応」
「わーった」
土屋の声が眠たそうに曖昧な感じになる。
急な眠気に襲われて、毛布のふんわりとした肌ざわりに身をゆだねた。
土屋の寝息が聞こえる。
「……おつかれ」
花火の大きな音と、しずかな波の音。
そのままずるずると眠りに落ちた。
【第唔話】補陀落怪談 ㇷダㇻㇰ ヵィダン
終




