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倶利伽羅怪談 ㇰリヵㇻ ヵィダン 〜社畜バディと奔放JKの怪異対応処理〜  作者: 路明(ロア)
【第死話】死に水怪談 ㇱニミㇲ" ヵィダン

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150/202

天神様၈云੭ੇ೬おιյ

 平日昼間の勤務中。

 涼一(りょういち)は外部からかかってきた電話があると事務員から内線で伝えられ、営業課の固定電話のほうに回してもらった。

 顧客のクレームじゃないだろなとイヤな緊張を感じながら受話器を取り、指定された番号のボタンをプッシュする。

 

 あの企業だろうか、それともあの企業、いやいやもしかしてあっちと考えをめぐらせる。



「お電話代わりました。営業課の鏡谷(かがみや)です」

「──あっ、りょんりょーん!」



 とたんに耳に響いたのは、爽花(さやか)のかん高い声だった。

 また近場にでも出没しやがったのか。涼一は顔をしかめた。

「……成仏しろ」

「──死んでないよぅ」

 爽花が語尾をのばしたウザいしゃべりかたで答える。

「人さまの職場にイタズラ電話してんじゃねえ」

「──ねねね、なんで土屋さんとの同棲に終止符打っちゃったの? りょんりょん。ねね、なにが原因? 相談のるよ? わたしBLマンガ読みまくって勉強したから相談イケるよ?」

 涼一は、きつく顔をしかめた。


「……何なのおまえ。威力業務妨害で通報するぞこら」

土屋(つちや)さんのスマホにかけたら、営業先についたところだからごめんねって言われたんだもん」


 爽花がすねたように言う。

「俺だってこれから出るとこだわ」

「土屋さんにいろいろ調べてって頼まれてたから、調べたこと伝えようとしたんだけど」

「三行にまとめてメールでよこせ」

 涼一はそう指示した。


「そんなの、元気? わたしもー。湿気あるから髪まとまんないーで終わっちゃうぅ」

「そこ差っ引いて要点から入りゃいいだろ。おまえの髪とか知らんわ」

 

「きれいにまとまんない日はポニーテールを急きょ変更してお団子にしたりすんの」

「知らんわ」

 涼一は眉根をよせた。

 窓ぎわの席にいる上司が、チラリとこちらを見る。

 私用電話を長々と。もう少し話してたら何か言われるかもしれん。


「ともかくメールよこせ。それか五時半以降に土屋にかけ直す。どっちかにしろ」

「──うん、分かった」


 爽花がすなおにそう返事する。

 つづけて、ほぅぅ……といういつものウザいため息をついた。

「土屋さんとなんかあっても帰りの時間は把握してるんだあ……。やっぱり二人のきずなっていうか」

「おなじ会社なんだから勤務時間おなじに決まってんだろ。それ以上働いてると労働基準監督署がうるせえんだよ」

 「切るぞ」とつづけて、涼一は受話器を置いた。

 上司がもういちどチラリとこちらを見る。

 気づかなかったふりをして、カバンを持ち席を立った。





「 “裏の天神さまの言うとおりって唄う地域を調べてみました(絵文字)” 」


 国道沿いのホームセンターの駐車場。

 営業先を二件ほど回り終え、一段落ついて車内でスマホをみると爽花からのメールが入っていた。

 土屋にも転送したが、もしかして爽花がおなじものを送っているだろうか。

 被るかもしれんが、まあいいかと思う。


「 “天神さまだけの地域だと、A県のA市とかG県のI市とかF県のF市とかT都のS区とかT県のT市とか日本全国に点在してる感じ” 」


 涼一は書かれている地名と日本地図を頭のなかで照らし合わせた。

 東日本から西日本まで、見事にバラバラに点在してる。

 どうやったらこんなふうにバラけて伝わるのかいっぺん誰かに解説してほしいとまで思う。

 

「 “でも裏の、ってつくとけっこう限定される感じ。F県F市の一部とかM県S市の一部とか (絵文字)”」


「……M県S市」

 涼一はつぶやいた。

 葬式に出向いた地域だ。

 正直、これだけ分かればいい。あのガイコツはやはりあの葬式からついてきたものだと確定できる。

 涼一は、スマホのデジタル時計を見た。

 つぎの営業先の約束の時間までは少しある。

 メールのアプリを閉じて爽花に通話をかけた。

 

「──はいはーい」


 爽花がほとんど間を置かずに出る。

「……おまえ、授業ってどうしてんの? さっきも聞こうと思ったけど」

「いま授業中だよ? 理科実験室に移動してるとこだけど」

 爽花が答える。

 いまどきの学校だと下校までスマホ禁止とか聞くが、学校によるのか。


 受話口のむこうから「さやりーん、マグネシウムリボン光ったヤバい。こっち持ってー」と聞こえるが。

 実験はじまってんじゃないのか。どういう状況だ。

 涼一は顔をしかめた。

「──待って待って。ガスバーナーよりこっち大事ー」

 爽花がおそらくうしろを向いた感じで声を張る。

「いやガスバーナーのほうが大事だろ。何やってんの、おまえら。先生いないの?」

 なぜか涼一のほうがあせる。



「──マグネシウムの燃焼実験より、二人の恋の燃焼のほうが大事っ」

「あほなの? おまえ」



 涼一は目をすがめた。

 だいたい誰の恋の話なんだ、自分のか。脈絡もなく恋バナにつなげるあたりがマジでついて行けん。

「ま、いいや。SNSでちょっと聞いてくれんかな。答えられる人いないかも知れんけど。──死神とか憑きものの現象で、時系列おかしかったり逆になったりすることなんてあるのかって」





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