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倶利伽羅怪談 ㇰリヵㇻ ヵィダン 〜社畜バディと奔放JKの怪異対応処理〜  作者: 路明(ロア)
【第似話】みィᑐιϯタ ミィッヶタ

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101/202

隠ᒐ神၈ɭ ɿᵹ村 六

 カサ、と革靴で踏みしめられた草がかすかな音を立てる。

 涼一(りょういち)は古井戸に歩みよると、中をのぞき込んだ。

 とっくに枯れているであろう井戸なのに、はるか底のほうが水面のように揺蕩(たゆた)っている。

 あれは子供らの霊体だろうか。


「やっぱ枯れまくってんな。すぐそこまで土で埋まってんじゃん」


 土屋(つちや)が中をのぞきこんでそうつぶやく。

「……え? そう見えてんの?」

 涼一は目を丸くした。

「どう見えてんの? 鏡谷(かがみや)くん」

 土屋が興味深げに聞く。

「いや……」

 もういちどよく見ると、たしかに五十センチほどのすぐ下まで土で埋められていた。

 現代ではどうなっているのか。


「ま、いいや。おまえメモ出せ」


 涼一は不動明王から借りた羂索(けんさく)を井戸の底に向けて垂らした。

 自身もスーツのポケットからスマホを取りだし、メモのアプリを開く。

「えーと」

 メモ画面をスクロールする。


「ちよちゃん、みぃつけた」


 つづけて画面をスクロールする。

「きちべえちゃん、みぃつけた。みよちゃん、みぃつけた、ろくろうちゃん、みぃつけた、まつじろうちゃん、みぃつけた、なつちゃん、みぃつけた」


 一気に言って、いちどふるえる息を吸ってからつづける。


「たけじろうちゃん、みぃつけた。まつさぶろうちゃん、みぃつけた、きくちゃん、みぃつけた、やえちゃん、みぃつけた、みつちゃん、みぃつけた」

 

 羂索(けんさく)がわずかにゆれた気がした。井戸の底で触れることができたのか。


「しちべえちゃん、みぃつけた。よねちゃん、みぃつけた、とめぞうちゃん、みぃつけた」


 はあ、と息継ぎをする。


「つるちゃん、みぃつけた、すえちゃん、みぃつけた」


 涼一はメモしたかぎりの子供の名前を読み上げた。

「お不動さんのアイテムだ。これなら登って来られるだろ。あと名前呼ばれてないやついるか!」

 涼一は井戸の底に向かって呼びかけた。


「いままで鬼やってたやつはお不動さんが連れて行った。俺もあと帰って寝て会社に出勤するから、かくれんぼは付き合えねえからな。お前らはもう親んとこ帰れ」


 こんな言い方で通じるだろうか。

 子供とはいえ、ストレートに「成仏しろ」のほうがよかったか。

「こいつらの親って……たぶんもう全員あっちの世だよな?」

 かたわらで井戸をのぞき込んでいる土屋に尋ねる。

「さいごの神隠しが昭和三十一年だからね。たぶん」

 土屋がスーツのポケットからスマホを取りだし、検索する。


「さいごが六十八年前か。……ギリ生きてる人もいるかもしれんけど」


「まあ、大部分がカスリの着物きてた時代みたいだし……」

 涼一は古井戸のふちに両手をかけて座りこんだ。

 はぁと息を吐く。

「あと残ってねえよな。つか、これ成仏してんのかどうか確認しようもねえんだけど」

「失敗してたらまたお不動さんが来るでしょ。おつかれ」

 土屋がふたたび古井戸をのぞきこむ。

「つかれた」

「帰りラーメン食って帰る?」

 土屋が肩をゆすって笑う。

 涼一は古井戸のふちに手をかけて、げんなりと項垂(うなだ)れた。





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