生まれた息子、実は転生者でした!?
ここは、某領内にある屋敷の執務室。
「…………見張ってなくても、仕事はするよ……」
赤髪の端正な顔立ちをした一人の男性は、淡々と書類を片付けながら、傍らに佇むロマンスグレーの男性にそう告げる。
「いえ、旦那様は、私が見ていないと、仕事に身が入らないでしょうから……お気になさらず。」
「……………」
執務室内にはペンのカリカリという音だけが響き、張り詰めた空気が漂う。
そんな空気を切り裂くように、屋敷内から騒ぎ声が響き出す。
それに気付いた書類を片付けていた男は、居ても立ってもいられず、執務室から飛び出し、足早に騒ぎ声のする部屋へと向かった。
ちょうど部屋からメイド姿の女性が出てきた。
「旦那様、おめでとうございます。」
「ああ、セリアか、ありがとう………アリサは無事か?赤子は!?」
扉を開きながら、セリアに声を掛けるが、部屋からセリアとは別の人物から声が返ってきた。
「旦那様、私もこの子も元気ですよ。もう3人目なのに、旦那様は慌てすぎです。」
ベッドの枕に体を預けて座っている茶髪の女性、アリサは明るく、嬉しそうな声を発しながらも、安堵の表情を浮かべていた。
赤子も完全に目を開けることは出来ていないが、軽く手を握って、掲げている様は非常に可愛いらしい。
アリサの夫である若い男、レオガルドはそんな愛おしい我が子の手を握る。
「何人目であっても、心配もするし、緊張もするよ。ところで、この子は女の子かな?」
「いいえ、この子は男の子ですよ。」
「そうか、こんなに可愛いらしいのに、男の子なのだな……なら、この子の名前はルイにしようか。」
「ルイ………風と恵みを司る神様、ルイーズ様から名前をいただいたのですか?」
「そうだよ。この子、ルイは順当に行けば、家を継ぐことは出来ないからね。風のように自由に生きてほしいという願いを込めてね。」
「そうですね。この子にはピッタリの名前かも知れませんね。」
アリサは、生まれたばかりのルイを見て微笑みを浮かべ、その頭を優しく撫でながらそう呟いた。
「ふふ、そうだろう、そうだろう。………では、この子の名前は、ルイ・ノーマソンだ!」
一方で、レオガルドは、周りにいる使用人達に向けて、大きな声で赤ん坊、ルイの名前を宣言した。
その後、部屋に突撃してきた次男と長女によって、更に騒がしくなったのであった。
(それにしても、この子はあまり声をあげないのだな…)
これまでの子は多少なりとも声をあげていたこともあり、若干の違和感を覚えたレオガルドであったが、担当医は何も言っていないようだし、可愛ければよいかと、気にしないことにしたのであった。