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5話 もしかして

 どうしましょう。道に迷ってしまいました。


 私を周りの大自然達が包み込んでいる。どこかで鳥が鳴き、その声に応じるように風が吹き、森の木々たちが心地よさそうに揺れる。

 私もその一部になれたなら……。


「駄目駄目!弱気になってちゃ駄目!ようやくあの堅苦しい城から出られたんだから」


 でも心細いものは心細い。ここは王都の管轄外。つまり魔物たちがいつ出てきてもおかしくない。城では真面目に訓練を積んだので、そこそこ腕は立つと思う。

 だが絶対はない。それが外の世界のおきてだ。


 私は肩に乗るくらいの長さの、銀色の髪をなびかせる。絶対に私たちが今度こそ魔王を葬り去る。それが私たちの役目であり使命。


 キリッと顔を整えてみたものの、


「やっぱり寂しいよ~、ジイやも一緒に来てって言えば良かったかなー。でもそれだとかっこ悪いし……ぴょわっ!今なんか動いた!?」


 私はガサゴソと何やらうごめく、草木の方をじっと凝視した。

 いったい何だろう。動物だろうか。それならばいいのだが、一番最悪なのは魔物とエンカウントすることだ。


 じっと動かずにその時を待つ。生唾を飲み込む。


 すると、


「ギギャアア」


 現れたのは小柄な体に、大きな頭。右手にはこん棒のようなものが握られている。

 ゴブリンだ。


「ふ、ふふ脅かせないでくださいよ。たかがゴブリン一匹……」


 ここで私は気が付いた。自分はとても大きなフラグを立ててしまったことに。

 すると案の定、戦闘のゴブリンに続いてわらわらと他のゴブリンも姿を現し始めた。後ろの方向からも気配を感じる。どうやら囲まれてしまったらしい。


「……なるほど」


 囲まれてしまったが、どこか一方に穴を開けてやればいい。

 私は腰にさしてある剣を引き抜くと、右足を前にし、剣先を上げる。いわゆる上段の構えというやつだ。


「ザイン」


 一時的身体強化の魔法。これを使えば、このゴブリンたちの包囲網から抜け出せるはず。相手のゴブリンが一歩動いた瞬間、右足に大きく力を入れて大地を踏みしめる。

 土や落ち葉が舞い上がり、土煙として霧散する。狙いは正面、一気に駆け抜ける!


「てやああああ!」


 ゴブリンの間合いに入ると、力を込めて剣を振り下ろす。すると大きな轟音と共に、ゴブリンたちを吹き飛ばし、正面に道が広がった。

 私はそのまま走り抜けるつもりだった。ボブリンたちを蹴散らし、空いた道を突っ走る。だがそううまくはいかなかった。


「う、うそ」


 さらに奥にもゴブリンがわんさか集まっていたのだ。つまるところ、私の周りにいたゴブリンは一重目で、どうやら二重に包囲されているらしい。

 まさか人一人を倒すためにここまでするとは。ゴブリンの狡猾さを舐めていた。


 じりじりとゴブリンたちに詰め寄られる。さっきのように一点突破で逃げ切れるだろうか。いや、同じ手が二度も通用しないのは明らかだ。その証拠に、円が小さくなるにつれて、ゴブリンたちは円の線を太くしながら近づいてくる。


 まさかゴブリンに追い詰められるとは。私は一対一の戦いなら相当な自信があるが、一体多数なら不利だ。魔法も大人数に対する回答はほとんどない。

 答えになりそうなのが一つだけ、できれば使いたくない魔法が一つだけあるが、それはどうしようもなくなった時の緊急用。それに使えばどうなるのか自分でも分からない。


 すると上からゴブリンが降ってきた。恐らく木の上にいた奴だろう。私は素早く剣で切りつけ撃退するも、そのすきに背後から来ている一匹に気付かなかった。

 そのゴブリンの持つこん棒が私の横腹に向かって振りつけられ、直撃する。


「んうぐっ」


 せき込み、痛みが襲い掛かって来るものの、ここで繊維を喪失すれば奴らはもう容赦はしないだろう。だからここは気持ちが折れてしまっては負けだ。

 私はくるりと体を反転させて、横なぎに振るう。だが横腹に受けたダメージのせいか、ゴブリンにうまく当たらなかった。


 いったいゴブリンは何匹いるのだろうか。見えるだけでも三十はいるはずだ。見えない数も合わせればもっと……。

 いや、やめよう。マイナス思考になってもいいことは無い。そうだ気合で何とかしなければ!いつも稽古で言われていたことだ、どんなに戦力差があっても気持ちでは負けるなと。


「うおおおおお!絶対に負けないから!」


 気持ちを鼓舞する。負けない、負けたくない。まだ自分は何も成し遂げていない。

 こんな所で野垂れ死んでしまっては、私がこの世界に生まれた意味が無くなってしまう。それだけは絶対に嫌だ。


 私一人で全員倒し切ってやる。


「たぶん無理だ。これは逃げた方が良いな」


 !?


 話しても伝わらないと思うが一応言っておく。なぜか急に私の隣に知らない男が立っていたのだ。このゴブリンたちに囲まれている私に、ゴブリンにも私にも気づかれずに立っていた。

 

 一体いつから立っていたのか。音もなく現れたのだ。


 音もなく現れ、誰にも気づかれないように近づく。ということはまさか。


 も、もしかしてお化け!?こわいよー!


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


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