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初版本2

ハードカバーを胸に抱えて帰宅。スクールバックをベッドに放り投げてイスを引き寄せた。


「涙雨……」


タイトルと睨めっこするように言葉にした。なんだか、悲しい内容な気がした。


「ん~……」


目次も重苦しい。それに読めない字もあった。硬いページをペラペラと捲ってはみたものの、二回目はないと確信してしまった。一体、君は何をさせたいんだい?と問いかけたくなった瞬間に目に飛び込んで来たものがあった。

それは、最後の白紙の部分にあったものだった。手書きで『文歌へ』と記された一行だけの言葉だった。


お母さんの娘でありがとう、ごめんなさい


胸が苦しくなった。幼い頃に母を亡くしている私にとって、ごめんなさいはさよならと同義だ。笑っていたはずの母が泣きながら私を抱きしめた時のことが蘇る。


「娘さん……文歌さんに届ければいいの?」


リン――


【彼】は、強い音色で返してきた。私にしか聴こえない風鈴のような音。低めは【彼】、高めは【彼女】。

物にも意思があるというふうに私は認識している。この現象が裏付けているとしかいいようがない。例え他人に理解されずとも、私にとって変えようのない事実だった。また、【彼】・【彼女】達が決して利己的なことで音を届けないことでも受け入れられる理由として大きかった。関わった誰かのことを想ってしか鳴らないのだ。

私は、そういうところに惹かれて協力を惜しまなかった。とはいえ、出来ることは限られているし、幼い頃は泣くことぐらいしか出来なかった。


(それにしても…)


文歌さんは、お母さんのことを恨んでいるのだろうか? 仕事ばかりで構ってもらえない不満がわだかまりとなって大きな溝を作ってしまったのだろうか? 


「考えてても、仕方ないよね!」


生きているうちにしか出来ないことだらけ。お母さんに会って欲しい。私は、それを強く思った。

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