第4話 暴走
あたりがすっかり暗くなってしまった頃になってようやく飽きてきた僕は、死体を処理することにした。
いまだに誰かが来る気配がないのは妙だなとは思いつつも、僕はその死体にはさみを入れてバラバラにしていく。
骨ははさみじゃ切れなかったので、教室を一時的に抜け出して自宅から耐水性ペンキ、ビニール袋、金槌を持ち込んで、金槌を使って体を砕いていく。
……最初からこうしたほうが早かったかなとも思いつつ、僕はバラバラにした死体を自宅から持ち込んだビニール袋に入れていく。
あたり一面に飛び散った血は、我ながら雑だなと思いながらもとりあえず床と同じ色のペンキを上から塗りつぶして隠した。
その後はビニール袋を持って近くの川に行き、僕はその川に死体を捨てた。
次の日。教室の中が何やら騒がしい。
どうやら生徒の一人が一晩中家に帰ってきていないらしく、生徒の間じゃその話で持ち切りのようだ。
学校側はその件について警察に対応してもらっているとしつつも、通常通りに授業を行った。真実を知っている僕からすれば何を考えているのやらという話だが、もし真実を知らないでいるのならまぁ行方不明程度にしか思っていないのかもしれない。
それからというものの僕は、毎日のように生徒を殺す日々を送った。
あらゆる手段を用いて生徒を一人ずつ空き教室に誘導し、空き教室の中で好き勝手に拷問して殺し続けた。
殺していく中で分かったことだが、この空き教室は人を殺すうえで最適な場所だということだ。普段使われない棟の中にあるここなら誰も来ないし、殺した後遺体の処理を雑にしても誰も気づかなかった。
それでもまぁ一応、毎回死体をバラバラにして川へ捨てに行ってはいたのだが。
だけど、数日も同じことを繰り返してきたからか、僕も空き教室に閉じ込めて少しずつ殺すことに飽きてきた。
たまに三~四人くらい同時に空き教室に誘い込んで殺したりもしたが、どうにも心が満たされない。
もういいや、どうせみんな殺すつもりなんだ、そろそろ警察にでもなんにでもばれてしまえばいいかと思い始めていた僕は、とうとう教室でひと暴れすることにした。
そのために、鍵を開けられなくするための大量の刃物と接着剤、自身に危害が及ばないようにするための凶器の数々をネットから買い寄せた。
もっとも、もう教室内で運動が出来すぎるやつはみんな殺してしまったから、多分なくても全員殺しきれると思うんだけど。
そして、当日。
その日の教室はいつにもましてピリピリとしていて、皆黙り込んでいて、空気が最悪だった。
生徒の三分の一が行方不明になっているともなれば、こうなってしまうのも無理ないか……そんな風に考えながら、僕は教室をおもむろに出て廊下に出る。
今は授業中で廊下には誰もいなかった。今のうちに僕は、窓に接着剤を散布して開けられないようにし、廊下に粉々に砕いておいた刃物をばらまく。
これで、準備はできた。僕は教室に戻り、入り口にも接着剤を散布する。
「……先生」
「ん、なんだ? さっさと席に戻りなさい」
「いえ、その必要はありませんよ。何せ――」
僕は先生の懐まで一気に近づき、隠し持っていた大きなナイフを先生の胸に突き刺した。
「うっ……」
「授業は今日で終わるんですから」
服を赤く染めていきながら先生が倒れると、教室内に生徒たちの悲鳴が響いた。