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第467話 それは恐怖を陳腐化させる伝説

『ふう、ふう……待たせたな……』


「あっ、魔将側の仲違いが終わったみたいですね。向こうも人間関係で悩んでたりするんだなあ。大変だ。心中お察しします……」


※『同情する気持ちが湧いてきた』『魔将も三人集まると社会が生まれるんだなあ』『つらい』


『やめろ! 同情するな!』


『ぐわあああああ、またも我らの力が低下していく!!』


『これだ! これこそが魔王様が仰っていたこの女の恐ろしさだ!!』


 なんだなんだ?


※もんじゃ『低下していく? 同情されると? ……ということは……向けられる恐怖こそが彼らの力の源なのか』『あっ、なーる』『配信者とは逆か』


 うちのコメントで、何か凄い分析が行われているような。


『ええい、かかれ! かかれー!』


『命令するな!』


『我が先に出る!』


 ワーッと魔将が飛び出して、こっちに踊りかかってくる。


 カナンさんは魔法を展開し、リーさんは腰からヌンチャクを……。

 あれっ、なんでAフォンから木製のテーブルと長椅子を出してるんです?


※『ま、まさかこの配信者……。カンフー系の格闘タイプ配信者ではなく……』


「さあ来い! ふおおお! ほわあ!」


 襲ってくる魔将の攻撃を、立った体勢からテーブルの上に寝そべって回避。

 追撃を、テーブルの上を転がって回避して、さらに来た攻撃を、椅子を取り上げて受け止めて……。


 テーブルをひっくり返されたら「うおっ!」とか叫んで転がって、また取り出していたはしごに足を引っ掛けて、足の力だけではしごに取り付く。


『な、なんだこいつの戦闘は!』


『全く先が読めん!』


「おわちゃあ!」


 はしごを駆け上るリーさん。

 はしごは倒れていき……魔将数人の頭が隙間にスポッとハマった。

 そこに飛び乗ったリーさんが、頭をヌンチャクで叩いて駆け抜ける。


※『こいつ、カンフーアクション映画系配信者だ!!』『まじかよw!!』『古き良き香港映画じゃんw』『肉体と小道具と演出とお約束アクションで、魔将と戦うのか……!!』


「かっこいいなー! 見栄えしますねー」


 私は魔将をバーチャルゴボウでぺちぺち選り分けながら、リーさんの戦い方を見学した。

 動きが一つ一つオーバーで、楽しい。


 勝ちっぱなしじゃなくて、攻撃を受けて倒れたりするけど、倒れた先にもう小道具が取り出してあるので、そこにあった大型のくまでを踏んで長い取っ手を起き上がらせ、相手の股間を痛打するとかやってる。


『アオオオオッ!?』


 股間を抑えてピョンピョン飛び跳ねる魔将。

 その頭を、連続パンチで叩いて地面に沈めるリーさん。


「まったく、キリがないな! 勘弁してくれ!」


※『冗談みたいな映画のアクションなのにしっかり強いw!』『日本にいなかったタイプだぞw』『そうか、敵をお約束の中に取り込むところまで含めて、リー・ダオロンの強さなのか!』『凄い逸材が見つかってしまった』


 どうやら今までは、少数民族の出身ということで、色々配信を制限されてたみたい。

 それがついに、私の配信に乗って全世界に流れた!


 なんかリーさんが光輝いている。


「あっ、俺の体に力が溢れ出してくる! こ、これは……!」


 彼は着ていた上着を脱ぎ捨てると、ランニングシャツ姿になった。

 おおー、鍛えられた上腕二頭筋と大胸筋。

 大きすぎず、実用的な感じにムキッとしているのだ。


「うーん、女子のむちむちも好きですが男子のむきむきも良い……」


※『はづきっちがよそ見しながら敵を蹴散らしてる!』『つまり、このアクションも敵を弱体化させてるってこと……!?』もんじゃ『舐めた戦い方で圧倒されると、俺たちリスナーも魔将なんて大したことないと思ってしまう。そのイメージに奴らも支配されるんだ! そうだったのか……!!』


 新事実が明らかになってしまいましたねえー。


「それはそうと、皆さんどうして今回は総出でお出迎えなんですか?」


 私の質問に、律儀な魔将の一人が答えてくれた。


『お前が来てから何もかもおかしくなったのだ! 人間どもは我らを恐れ、統制された情報の中で猜疑心が膨れ上がり、それがまた我らの力となった! この広大な国は己の力によって滅ぶ、まさにその寸前だったのだ! だが! なんか意味のわからない連中が空からやって来て、フューリーをあっさり蹴散らして空気が全く変わってしまった!!』


「あーあーあー、あれが! ははあ……。そのう、ふ、フユーリーさんという人は強かったので?」


『お、覚えてないのか!? いや、演技? ち、違う!! こいつ完全にフューリーを覚えてない! それどころかフューリーをフューリーと認識してなかった!!』


『や、やめろ! 我らの力がまた下がる……!』


『お前が丁寧に解説するほど、人間どもの中で我々の脅威が下がっていく……!!』


 向こうでカナンさんの大魔法、温泉メイルシュトロームが炸裂し、魔将たちが『ウグワー!』と巻き上げられていく。

 リーさんは、今度は巨大な門の形のハリボテを呼び出し、これに登っていった。

 ハリボテがリーさんの重みで倒れ始めて、これが魔将たちを押しつぶす! 不思議な戦い方だ……。


『起死回生のために集まったのに、我々はここに来るべきではなかった……! できる限り、きら星はづきとその一党に関わるべきではなかった……!!』


 なんか悲鳴みたいにして叫んでる。

 私がバーチャルゴボウを繋げて九節棍にし、ポコンと叩いたら『ウグワーッ!』と消滅した。


 そこからはもう、魔将の人たちがポンポン叩かれては消えていく。

 音ゲーみたいにリズミカルに『ウグワー!』と叫んで消えるので、ちょっと面白くなってきた。

 だけど、いつまでも魔将は続かない。


 ついに最後の一人がリーさんの「ホアッチャー!」という飛び蹴りで倒されると、桂林市はまた静かになったのだった。


※『リー・ダオロン、本場カンフーっぽいアクションはちょっとしかしなかったな……』『ずっと小道具使ってコミカルバトルしてた』『すげえ面白かった』『登録しよ……』


 リーさん、とても満足げだ。


「ずっとコツコツ作ってきた小道具をついに使うことができました。俺はとても満足です」


「それは良かったー」


「全く新しい戦い方だったな。あとでアーカイブで研究させてもらう……」


 そうか、リーさんのやり方にまあまあ近いの、カナンさんなんだな……。

 観光地のお土産品で最近は戦ってるし。


 こうして、中国全土の魔将が一掃されてしまった!

 残るは支配している大魔将だけなのだった。

お読みいただきありがとうございます。

面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 名前はブルース・○ー(が演じた役名)っぽいのに、戦い方は昔のマジ○ガーZのパイロットと似たり寄ったりの声してる人の方の戦い方なのかよリーさんwwww それでは今日は…
[一言] ジャッ◯ーだ……若い頃のジ◯ッキーのスタイルだ……w
[良い点] こつこつ作ってきた小道具の大活躍 [一言] >『お前が丁寧に解説するほど、人間どもの中で我々の脅威が下がっていく……!!』 社会で不遇な目に遭ったり、思うように活躍できなくて不満を募らせ…
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