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第453話 復活の修学? 卒業旅行伝説

「昔は修学旅行というシステムがありまして」


 先生がそんな話をするので、クラスが騒然とするのだった。


「あっ、親の代にあったって聞くよね」


「ダンジョン無かった時代でしょ」


「大昔じゃーん」


 あちこちにダンジョンが発生したり、そもそも長距離移動するバスがダンジョン化したりする可能性がある時代になったんで、修学旅行という仕組みは無くなったのでした。


 そう言えば私も、そういう旅行をしたのはアメリカ遠征が初かなー。

 今はみんな、地元からあんまり離れないで過ごすもんね。


 都内の満員電車とかは、駅の間隔が近いから運用できてるシステム。

 直ぐに人が乗り降りするから、電車内に不満とか怒りパワーが溜まる前に人が入れ替わっちゃうわけだ。

 だからダンジョンにならない。


 よくできてますねえ、私、満員電車は一生乗りたくないけど。


「我々の代では修学旅行の再開は無理ということになったけれど、みんなの希望があれば卒業旅行という形で実現できるようになった」


 ななな、なんとー!

 驚く私、どよめく教室。


 そんなことが可能なんですか!

 クラスのみんなで旅行とは……!


「最近になって、ダンジョンの発生法則もどんどん明らかになってきました。ということで、移動に使う交通機関内でダンジョンを発生させない技術も発達したというわけ。そこまで遠くには行けないけれど、近場の修学旅行なら可能ということで……」


 先生が提示した修学旅行は、割と近く。

 箱根・小田原だった。

 なるほど近い!


 でも、今の時代ってよっぽどリスクを背負った人でも無ければ、長距離移動はしないからね。


 みんなテンションが上がるのだった。


 ホームルーム後の授業との合間。

 私の前の席にいるぼたんちゃんが、感慨深げに「時代が変わったよねえ」と呟くのだった。


「変わりましたか」


「そりゃあ、アメリカとイギリスに行ってる人は実感ないかもだけど、本来は県境をまたぐ旅行って凄くリスキーだからねえ。だから同じ車両に長時間乗らないよう推奨されてるし、昔は寝台列車っていう寝ながら乗れる電車もあったらしいけど、今はないでしょ」


「ないねー。そっか、もうちょっと気軽に旅行できる時代が来るわけですねえ」


「今だって、一人や二人、家族単位の少人数なら行けるよ? だけどそのためにはダンジョン避けの保険入らないといけないし、高価なわけ。カナンさんが重宝されてるの、そういう高価な代償を払ってでも行きたい観光地の良さをアピールしてくれてるからだし」


「なるほどー。そう言えばそっかあ……。うーむ」


「実感のない人が……!! まああなたは自力で県境を飛び越えていけるから」


 意外と、世の中の方々は大きな移動とかできないで暮らしているのだなあ。

 いや、中学までの私もそうだったけど。


「でも、こういう風に世界が変わってきてるのはどこかのきら星はづきさんのお陰だと思うわ」


「そ、そうなの!? なぜそんなことに……」


「イレギュラーなダンジョンに次々挑み、100%の攻略率でたくさんのダンジョンコアを持ち帰ったお陰で各地のダンジョンの特性が分かってきたの。あとは迷宮省と全国の配信者を繋げて、リスナーの人たちとも親しくさせたりとか……。普通に凄い事をやってるのよきら星はづきちゃんは」


「な、なんだってー!! 全然意識してなかった……。カッとなって行動してるだけだった」


 私が毎度持ち帰ってきたたくさんのダンジョンコアは、そういう使い道がされていたんだなあ。

 Aフォンが自動で回収してくれるから、全く意識していなかった。


 それで、日本各地で少しずつ、長距離移動が楽になり始めているらしい。

 前までは高級だった観光地への旅行も、今は日常的に手が届くかも……? みたいなところになってきている。


 安全性が確認できたから、修学旅行再開というわけね。


 実に四半世紀……25年ぶりくらいの話らしい!!

 ひええええ。


 で、私たちの学年は、電車に乗って何時間か掛けて小田原まで行けるようになったと。

 なるほどなあ……。


「まさか配信活動が回り回って、修学旅行に繋がるとは。このはづきの目を持ってしても見抜けなかった」


「誰も分からないわよ、そういう先のことは。とにかく……。卒業が見えてきてるのは寂しいけど、でも楽しみが増えちゃったわね」


「うんうん、楽しみ! よし、今日の帰りも未来のためにダンジョン一個潰しちゃおうかな!」


「大きな声で宣言するのはやめようね! クラスの外に聞かれちゃうからね……!」


 あっ、いけないいけない。


 ということで、学校帰りにぼたんちゃんと二人で、手近に発生しているダンジョンを検索。

 十分位で攻略配信をしたりしたのだった。


 こういう小さな仕事を積み重ねていくことで、世の中変わっていくんですねー。


※『家に出る害虫退治みたいなノリでダンジョンを攻略したぞw』『しかし今日のはづきっちとぼた姉はテンション高かったな』『何かいいことあったのかな?』『二人とも高校生だろ? だったらこれだよこれ』『あっ、修学旅行再開のニュースかあ』


 世の中はマクロだとダンジョンの脅威が増してるけど、ミクロだとダンジョン発生頻度が下がったり、予測がしやすくなったりしてきているのだった。

 なのであとは……予測の邪魔になる、新型の魔将をみんな駆逐しておかないとですねえ。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ていうかこんなに移動リスクがあるのにやく都市機能維持できる流通が機能してるね 単純な食料だけでも膨大な流通インフラ必要なのに トラックドライバー命がけなのな
[一言] なるほど、以前北海道に行った時も大騒ぎだったけど。その後思いつきで山梨まで足を伸ばしたりしたのもなかなか他の人にはできない事だったのか……
[良い点] 更新お疲れ様です。 まぁ今までのお話で散々描写されてた事では有りますが…修学旅行のくだりを読んでたら、改めてこの世界のダンジョン(というか異世界からの侵略)は他の作品と違って『極少数のメ…
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