第272話 後方腕組み購入確認はづきっち伝説
物凄く写真を撮られた。
おかしい……。
周りの人達に比べて、特に目立つコスプレではなかったはずなのに。
むしろ本物なので、デザイン的にはオーソドックスなのだ。
だが!
ものすごーくみんな集まってきて、「いいですか!?」「撮影いいですか!?」「うわあ本物みたいだ」「なあ、本物って顔までそっくりにできるものなのか?」「あっ本物だこれ……」
何か仰ってる。
スマホと私たちを見比べたりしてるなあ。
なお、凄くローアングルから撮影しようとした人がAフォンに何かエナジーみたいなのをチュルッと吸い上げられてて、「ウグワーッ!!」と叫んでいた。
あれは後で蠱毒になるパターンだなあ……。
なお、ちゃんと歩いて帰れるくらいの力は残してあるよ! 単に今日一日気力がガタガタに低下するだけで。
広島VS大阪のシャツの人も、奇声を上げながら撮影しまくってた。
で、
「すみません! はづきっち、ビッキーと腕組みして右肩と左肩を合わせてからちょっとこっちに目線もらってもいいです? はい、センシティーブ!」
撮影の指示上手いなー!
というか、もう私とビクトリアを普通に呼んでるし。
どうも昔からいる感じのリスナーさんの気配が濃厚だなあ。
だが、詮索はしない。
詮索はしないが……。キャベツが本体だったり焼きそばを生地でサンドする系で様々な派閥が戦ってる御飯のお供にもなる粉物の雰囲気を感じる……。
「い、いつも応援、ありがとうございまあす」
撮影後に一声掛けたら、感激して飛び上がっていた。
「VRでもお喋りしたけど、リアルだと臨場感がちがーう!! 一生ファンやります!!」
喜んでもらえて嬉しいなあ。
そして撮影は放っておくといつまでも続きそうなので、私はビクトリアの手を引っ張って強制的に撤退することにした。
後ろから残念そうな声が上がる。
ちょっとAフォンを確認したら、15人くらい新型の蠱毒の材料が溜まっていた。
ローアングル狙いの人多いなー!
新しい戦力になりそうな気がするから、この蠱毒たちは鍛えておこう。
さて、いよいよフリーでブースを回って行きます。
年齢制限ありの同人誌なので、扱いがとてもセンシティブなのだ。
未成年の私が本を手にとって読んだら、サークルの人たちに迷惑が掛かる。
あらかじめ、ネットで確認できる私の同人誌サンプルには一通りチェックしておいた。
もう完璧よ完璧。
「リーダー、このバツマークのところはチェック必須で、他は軽く回るのね?」
「そうそう。ビクトリアは本を確認しておいて。私は後ろで腕組みしながら待ってるから」
「了解! 早くリーダーも成人するといいわねえ。あ、でもそれで悲しむ人もいるか」
「まあねー、そうねー」
色々な事に価値を見出す人がいるからね!
こうして、あちこちのサークルを巡る。
「は、はづきっちとビクトリアちゃん!?」「後方で腕組みして例の笑顔をしてる……本物だあれ……」「コスプレで再現不可能だもんな」
うーん、なぜかバレるぞ……?
どうしてなんだ。
「きゃーっ、は、はづきっち!? あのあの、握手して! 握手して下さい!!」
「あ、は、はいー」
サークル主の女の子に握手を求められたり。
「こ、これ新刊売り切れてたんですけど、身内用の本が一冊あるんでもらってください!!」
「ええっ、いいんですか!?」
「はづきっちにあげたって言ったら身内も絶対喜ぶんで!!」
もらってしまったり。
なお、受け取り、お金を出すのは全てビクトリア。
これはあくまで、現在18歳で成人しているビクトリアが買っているのだ……!!
私は荷物係ね。
相当な重量でも私は平気なので。
「はづきっち本のサークルをはづきっちが巡ってるってマ!?」「き、来た! はづきっちだ!」「え? コスプレじゃないの? あ、本物だわあれ」「配信で見たままの動きと見たままの表情してる……」
おかしい。
私たちがやたらと注目されているような……。
「はづきっち、明日誕生日でしょ! おめでとう!」「はづきっち、明日決戦でしょ! がんばって!」
「あ、ありがとうございます~」
あちこちから声援が飛んでくるなあ。
私は!
ビクトリアに任せて自分のエッチな同人誌を買っているだけなのに!
健全なのは昨日買いまくったからね。
今日のと合わせてすごい量になりそう。
明日魔将をやっつけたら、じっくり読もう……。
今後のことを考えてちょっとニヤニヤする私だった。
「リーダー! 周りから注目されてるのにニヤニヤ笑いするのよくないわ」
「ハッ」
しかし激写されてしまったあとだったらしく、私にだらしない感じの笑顔がツブヤキックスに流れてしまった!
なんたること~。
その写真に、
『解釈一致』『リアルで会ったはづきっちも配信の中と同じなんだな』『人間として一本筋が通っている』
高評価なんですけど?
「リーダーは表も裏も同じ顔をしているから、その辺りは評価されてるわよね。私もそこは好き」
「あ、これはどうもどうも……」
恐縮する私。
大量の本をゲットした私たちは、これの一部を宅配便で家まで送った。
フェイバリットな本は直接持ち帰るよ!
係の人が、
「明日以降の魔将襲撃の関係で、配送が遅れる可能性がありますがよろしいですか?」
とか言ってきたので、私とビクトリアはサムズアップして見せた。
「大丈夫です。一日で片付けますから」
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。