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8、弱い生徒に人権はない②

「よくも散々バカにしてくれたわね、このバカ男! これからは女の時代なんだから舐めんじゃないわよ!」

やられた蝉村の心配を、残りの不良共がしている間に、そう捨てゼリフを吐いて、鬼オーラだらけの教室から飛びだした。そのまま下校中いつも立ち寄る横山家の玄関を開けると、

「鈴ちゃん、二階にいるのー? 上がるよー」

と我が家同然の気楽さでクツを脱いで玄関に上がると、そのまま階段を駆け上がり、鈴ちゃんに部屋に飛び込む。テーブルに向かって勉強中だった鈴ちゃんに、

「私ねえ、蝉村の股間にキック当ててやっつけたんだ、すごいでしょ、初勝利をあげてきましたー!」

大喜びでガッツポーズを決める。

「すごいじゃないリカコちゃん、蝉村ってキックボクシング習ってたんでしょ? よく勝てたねー」

鈴ちゃんは驚きながらも祝ってくれた。

「まぐれまぐれ、やみくもにキックしてたら、蝉村がよそ見してる間に、股間に当たったのよ。あと鈴ちゃんが話してたヤンキーマンガの事も不良共に語ってやったわよ」

「うん、ヤンキーマンガって、犯罪行為をしている不良の事を美化してる有害図書だからね。そんなもので大金を稼いでる漫画家の印税なんて、大半を国が没収すればいいと思っているわ。でもほんとにリカコちゃんってスゴイ。私なんかその代表だけど、いじめられっ子って体が萎縮して、手も足も出なくなるから、やられっぱなしなんだよね。だからその事を思い出すと、余計ストレスがたまって、くやしくて、くやしくて、腹立たしすぎて、動悸が止まらなくなるんだ。この間なんか心臓のドキドキが激しいから、お昼寝して落ち着こうとした訳。でも二時間ぐらい寝て起きても心臓のドキドキ止まってなかったの。

寝ている間もこんなに激しく心臓が高鳴り続けていたら、私の心臓パンクして病気になっちゃうよって、本気で心配してたんだけど、最近、動悸を鎮めるいい方法を見つけたんだよ。こっち来て」

立ち上がって歩き出した鈴ちゃんに付いていくと、隣のお兄さんの部屋に入っていった。中へ入ると、学習机と本棚以外何もなかったはずの広々とした部屋に、ボーガンが置かれてあった。

「百均で買ったジョイントマットを十枚くらい重ねて、それをガムテープで止めたのが的なの」

不登校中なので、時間がいくらでもある鈴ちゃんは、四十インチテレビぐらいの大きさの的を作り上げて、部屋の奥に置いある。

「もっと大きいボーガンがあったよね?」

押し入れで見かけたのは、両手で構えるぐらいの大きさがあったが、この部屋にあるボーガンは片手でも射てそうな小ぶりのものだった。

「あれ百五十ポンドのヤツで女の子じゃ弦を引くの無理だから、八十ポンドのこれにしてるの。だけど見ててね。これでも威力凄いから。これを射ってるとね、動悸が鎮まるんだ。呼吸するのが楽になるの」

 そう言いながら矢を装填し、狙いを定めて、射った。発射音は小さく、迫力に欠けたが、矢がジョイントマットに深々と命中する乾いた音は、見るものに恐怖心を起こさせる。おもちゃのようにも見えるが、その威力は小型の銃にも匹敵した。所持が原則禁止になる訳だ。


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