58、中庭にて①
各クラス男子二名、女子二名、計四名ほど。各学年、五クラス、それの三学年分なので不良グループは全員で六十人ぐらいいる。昼休み、私に残るように言われた不良グループは、ひとかたまりになって立っていたが、一人残らず青ざめていた。なんせこの中庭は、自分たち不良グループに逆らうとどうなるか、全校生徒に見せつけるため、私一人をリンチにかけた場所だからだ。しかし結果は、私一人に全員がやられてしまい、全校生徒に恥をさらした。そしてその時から今までの間に、県内ナンバー1の不良高校の精鋭を鼻血塗れにして倒し、県内を制している三大暴走族、そのトップ五十人の喧嘩屋を三十秒もせず蹴散らし、残りの千人のヤンキーにもタンカを切り、相談役三人にわびを入れさせてきた。今や『県内最強』『無敵の闘神』『美しき死神』と不良界で呼ばれ始めている私の前で、震えあがらない不良など存在しないのだ。ベンチの上に再び立つと、その前に不良らを移動させ、座らせた。
「これ学力診断テスト」
数十枚のプリントがまとめられたものを掲げると、拡声器を使って説明をはじめる。
「中学一年生から中学三年生の五教科の問題が載っているので、これを各教室に戻ってクラス全員に渡して、数日中に提出させて集めたものを私に持ってきて」
不良グループは一様におびえたような目で私を見ていたが(別に殴ったりしねえっつーの)、その中で二年をしきっている坊主頭の巨漢、秋山が恐る恐る手を挙げる。
「あのー、これ何でやるんですかね?」
「この学力診断テストで個人の学力を調べるためよ。個人の学力が分かったら、それに合ったプリントを配るから、各々(おのおの)、授業中それをやるのよ」
「あ、あのー」
また秋山が喋りだす。
「何?」
訊きかえした私の顔が怖かったのか、あわてて下を向いて黙り込む。
「いや、別に怒ってないよ。何なの?」
「あのー、オレ中二なんですけど、中一の問題もわかんないんスけど」
顔が赤くなって声が小さい。
「いや別にいいよ。本当にわかんない人は今渡す学力診断テスト、白紙でいいから。そういう人のために次は、小四から小六の問題を集めたの持ってくるし、逆に中三まで全部解ける人は高校生の問題を持ってくる。これを何度かやっていくことで、個人の学力を正確に把握して、それに合ったプリント学習をするのよ」
中庭の芝生の上にいる不良グループと私を、校舎内の廊下にいる一般生徒の多くは立ち止まって見ている。二階、三階、四階から身を乗り出して、興味深げに見ているのもいた。そんな視線にはお構いなしにさっきの巨漢を指差して、
「じゃあ秋山さ、アンタが中二なのに中一の問題すら解けないのって、誰が悪いと思う?」
「えー、そりゃあオレがバカなのが悪いと思います」
「違うね、秋山アンタは全然悪くない」
不良たちの視線を、一身に浴びながら私は言い切った。




