1、自己紹介
では自己紹介を。私の名前は牧野リカコ。現在公立中学校に通っている三年生で十五才だ。身長は百六十五センチと日本の女の子としては高身長、長い手足のモデル体型の上に、色白で肩まで伸びたまっすぐな黒髪、そこに超絶美少女のお顔を付ければ私の出来上がりだ。ハッタリではない事実である。幼稚園の頃から評判の美幼女で、誰もがこの子は将来とんでもない美人に育つぞという期待をいだき、それを裏切ることなく、むしろそれを上回る期待以上の美しさの中で育っているのが私だ。
家は裕福な部類に入り、それなりの大きな邸宅に高級外車が二台並んでいる。教育熱心な両親が雇った家庭教師のおかげもあって成績も優秀である。読書家の両親によって、古典の名作から、実用書まで幅広い分野の本を読んできたので、同世代の中では知識も豊富だ。鼻につくかもしれないが事実なのだから仕方がない。
裕福で成績優秀なら、なぜ大学までエスカレーター式の付属の中学校に通ってないのか、疑問に思う方もいるだろうが、それは父方の祖父の意向による。祖父は建設会社を一代で築き上げ、父はそこの二代目社長として日々働いているが、苦労して叩き上げてきた祖父は、お金持ちのお坊ちゃま学校、お嬢様学校は、苦労知らずの甘ったれしか生み出さないという見事な偏見の持ち主で、可愛い孫娘(しかも初孫)の私に対して、私立の学校の入学を決して認めなかった。一人っ子の私を、溺愛している両親は不服そうだったが絶対君主の祖父には逆らえない。当の私はどちらでも良かったので幼稚園、小学校、中学校と近所の公立学校に通ってきた。高校なら私立でも良かろうという祖父の許しも出ているので、めでたくカトリック系のお嬢様学校に入学する予定である。私の成績なら百パーセント合格出来るし、何よりも制服が可愛いのが気に入っている。私の美貌を可愛い制服がさらに際立たせることだろう。
そんな私には、幼少の頃からの変わった相棒がいる。私の体の周辺を全長二十センチほどの小さな白ヘビが宙を浮いているが、これが相棒だ。クモの糸のような細いもので繋がっているこの相棒は私にしか見えない。小さな頃、その事を話すと家族に心配され、友達には嘘つき呼ばわりされたので、それ以来、秘密にしている。白ヘビは赤い目をしていて、赤い舌先をチョロチョロと口から出し、確かに存在しているが、実際に触ってみると、水蒸気で出来ている雲と同じように、その体を通過してしまう。私はこのような存在をオーラと呼んでいる。半径三十メートル内なら他人のオーラも見る事が出来た。私にとって良い効用はあって、転んで膝を擦り剥いたり、友達と口ゲンカして心が傷ついたりした時、その赤い舌先で、膝や頭、胸の辺りをなめてくれると驚くほど早く回復した。そのおかげもあって心身共に健やかに育った。白ヘビを祀る神社もあるほどなので、ありがたい存在に違いない。大好きな私の相棒である。
学校生活は、クラスの女子の中で背は高い方、おまけに美人で優等生、気も強いとなればヒエラルキー上位者としてこれまで過ごしてきたが、中学三年生になったばかりの頃、あることがキッカケで最下層のいじめられっ子という地位にまで転落した。四月二十五日現在、いじめられっ子歴二週間が過ぎようとしている。