198、おすすめ本『これからの日本、これからの教育』(前川喜平・寺脇研)③
引き続き本の内容を紹介し、それに対する私の反論を記したいと思います。
◎初中局の局長になったとき、教育委員会の改革にも関わりました。直接のきっかけは、滋賀県大津市で起きた、いじめによる中学生の自殺事件です。今でも教育委員会が、いじめはなかったと早々と断定するとか、調査を拒むといった隠蔽体質が問題になることがありますが、あのときの大津市教育委員会の対応の仕方は、本当にひどかった。市の教育委員会が「いじめはなかった」との判断を示したため、遺族からも不信感を持たれていたんですね。それで、大津市の市長が独自に調査委員会を作って調べたところ真相が公になり、社会問題化したわけです。それが2012年の秋ごろでした。それで、議員立法でいじめ防止対策推進法を作りました。これによって、いじめ問題については、担任も、学校も、教育委員会も、それぞれ抱え込んだりせず、きちんと情報共有を図り、全体が責任を持つようにしたんですね。その際、市町村長にも報告がいくようにし、市町村長は自ら教育委員会を調べることができるようにすることで、いじめ問題とは自治体全体で取り組むべきものだと、はっきりさせたわけです。
【私の反論:まず以前紹介した《132、おすすめ記事『旭川いじめ自殺』》の中からの文章を載せます。《9日放送のNHK番組『クローズアップ現代』は特集『~それでも「いじめはない」というのか~』を放送し、今年2月に北海道・旭川市の女子中学生、廣瀬爽彩さんが、いじめを苦に命を絶った事件を追った。この事件をめぐっては、学校と旭川市教育委員会の杜撰ずさんな対応が問題視されてきた。 爽彩さんは2年前の2019年、転校前に通っていた中学校で上級生グループから不適切な動画の撮影を強要され、その画像をSNSで拡散されるといういじめを受け、自殺未遂を起こしていた。母親が今年8月に公開した手記によれば、爽彩さんがいじめを受けている様子を感じた母親は、複数回にわたり学校の担任に相談したが、「いじめるような子たちではありません」「思春期ですからよくあること」「いじめなんてわけがない」と押し切られたという。さらに母親は学校側に「子どもたちに囲まれ、ウッペツ川に飛び込んだ事件の後、爽彩の携帯電話に、いじめを受けていることを示す履歴があることを学校に知らせ」(手記より)たものの、学校の教頭から次のような言葉を浴びせられたという。「10人の加害者の未来と、1人の被害者の未来、どっちが大切ですか。10人ですよ。1人のために10人の未来をつぶしていいんですか。どっちが将来の日本のためになりますか。もう一度、冷静に考えてみてください」事態が大きく動いたのは、今年4月にニュースサイト「文春オンライン」が詳細を報じたことだった。自殺未遂が起きた当時の中学校長は「文春」の取材に対し、「(いじめに)至ってないって言ってるじゃないですか」などとコメントしたが、事件の全容が全国的に知られることとなり、ついに旭川市の西川将人市長(当時)はようやく、市教委に調査を指示した。しかし、第三者委員会の設置から3カ月が経過した8月には、生徒や関係者への聞き取り調査が行われていないことが判明するなど、調査は進んでいない。今月3日には遺族側に開示された道教委の文書で、19年に爽彩さんがいじめを苦に自殺未遂を起こした後、川に入ったまま学校に電話をかけ、教員に「死にたい」などと訴えていたことも判明。道教委は旭川市教委に対し、いじめとして対応するよう指導したものの、市教委は「いじめはない」と判断していたことも明らかになった。9日放送の『クロ現』では、爽彩さんの母親が初めてテレビのインタビュー取材に応じた。母親は、19年に爽彩さんが加害生徒たちに囲まれて川で自殺未遂を起こした際、爽彩さんの携帯電話の中を確認して、問題のある写真や動画を撮影させられていた事実を把握し、それを学校側に告げたが、教頭から「これは単なる悪ふざけ。いたずらの延長だったんだから。もうこれ以上、何を望んでいるですか」と繰り返し言われたという。そこで母親が「じゃあ、娘の記憶消してください」と答えたところ、教頭は「頭おかしくなっちゃったんですか? 病院に行ったほうがいいですよ」と発言。続けて母親が「学校に通うというのは、とても怖くてできないと思う」と言うと、教頭は「僕なら怖くないですよ。僕は男性なので、その気持ちはわかりません」と言い放ったという。爽彩さんの自殺未遂の際に母親に対応した前出の教頭は、現在もその職にあるとのことだが、『クロ現』が伝えた、あまりに凄惨ないじめの内容や、爽彩さんの苦しみ、そして学校の対応を受けて、Twitter上では次のような声が多数あがる事態となっている。<多くの人が番組を観つつ怒っていたと思う。これがいじめでなかったら何がいじめだというのか。教頭も校長も教育委員会も常識がないのか><ほんとにホントにどうしようもなく本当に涙と怒りが込み上げてくる最悪極まる旭川教育界における酷い事件><子を持つ親としては聞くに堪えない内容><こんな学校と教育委員会の環境では、まともな教育は無理><学校のとんでもない対応は本当に腹立たしいです><加害者が悪いのは大前提として学校側も共犯レベル>爽彩さんの母親はインタビューで、「本当にいじめって普通に認めて、先生方も本当にちゃんと調べて、いじめっていうのをちゃんと対処してほしい」と話していたが、40代の公立中学校教師は8月19日付当サイト記事で、次のように実情を語っていた。「自分が担任を受け持つクラスでいじめの疑いを感じた際、物怖じせず徹底的に当事者の子どもたちと向き合うのか、逆にできるだけ“気づかないふり”をするのかというのは、教師によってまったくまちまち。学校単位でいえば、トップである校長や教頭によって全然対応が違ってくるのが実情です。また、あくまで私見ですが、特に50代以上の教頭や校長などの管理クラス、いわゆる“古いタイプの先生”のなかには、“学校にいじめなどあってはならない”“あるはずがない”という固定観念に縛られ、いじめの存在を認めようとすらしない人が多いような気がします」第三者委員会のしっかりとした調査が待たれる。》2013年に作られたいじめ防止対策推進法ですが、2021年に起きた「旭川女子中学生いじめ凍死事件」を防げていません。「いじめ問題については、担任も、学校も、教育委員会も、それぞれ抱え込んだりせず、きちんと情報共有を図り、全体が責任を持つようにしたんですね。その際、市町村長にも報告がいくようにし、市町村長は自ら教育委員会を調べることができるようにすることで、いじめ問題とは自治体全体で取り組むべきものだと、はっきりさせたわけです。」と自らのした事を誇っていますが、担任も、学校も、教育委員会も、いじめを隠蔽する気になればいくらでも出来てしまうのだから意味がありません。教育現場に警察が常駐、もしくは校内を見回るようにして、教員と警察が日頃から連携し、いじめなどの犯罪に取り組む。被害者生徒は、教員に助けを求めて無視されても、警察に助けを求めることが出来るため、早期に助けられ自殺を考えるほど深刻化せずに済み、助けを無視した教員の問題行動も早期に発見できる。校内に防犯カメラを設置し、いじめがないとシラを切る加害者生徒や無責任教員の悪事を録画し、言い訳が出来ないようにする。教育関係者の性善説に頼るやり方でなく、教育関係者が取りやすい無責任行動を取り締まる性悪説に基づいたこれらのようなやり方をしない限り、今も全国で育っている事件化していない『旭川いじめ自殺』の芽を摘むことは出来ないのです】
『これからの日本、これからの教育』(前川喜平・寺脇研・ちくま新書)より【次回に続きます】