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197、おすすめ本『これからの日本、これからの教育』(前川喜平・寺脇研)②

引き続き本の内容を紹介し、それに対する私の反論を記したいと思います。


◎行政をゆがめる要因の一つに、規制緩和至上主義があるわけです。それで言うと、小泉政権のもとで構造改革特区を利用して作られた株式会社立学校にも問題が多く、いろいろな弊害が表面化しています。株式会社立学校は全国にいま20校以上ありますが、ほとんどは広域通信制高校です。これが、きわめて質が低いものが多いんですよ。まったく勉強しなくても、授業料を納めていさえすれば高校を卒業できるので、飛びつく生徒はいますよね。親にしても、高校卒業資格くらい持たせてやりたいという理由で、高校を中退したわが子が改めて入る学校として選ぶことが少なくありません。


【私の反論:まず以前紹介した《154、おすすめ本『見捨てられた高校生たち』(朝比奈なを)》の中からの文章を載せます。《私自身も含め、多くの公立高校教師は自身の勤務歴の中で「底辺校」の経験をする。そこで最も強く感じるのは「底辺校」の生徒は不幸だということだ。彼らは家庭からも、学校からも、教育委員会からも、社会からも見捨てられた存在なのだ。この存在の重大性に社会は気づいていない。あるいは気づかないふりをしている。ここでも彼らは見落とされている。見捨てられている。》《圧倒的多数の生徒は小・中学校レベルの勉強がわからない、その上勉強そのものに嫌悪感をもっている。「学力の樹」の「根」がそだっていないのである。信じられないことに、ひらがなが正しく書けない高校生が実在する。小学校3・4年生レベルの算数ができない生徒はざらだ。アルファベットを書けず、特に「b」と「d」の区別ができない生徒が多い。》これは都内の公立・底辺校に勤務経験のある朝比奈なをさんが書かれた文章です。文科省の官僚だったお二人が批判している小泉政権以前から「底辺校」は存在し、広域通信制高校ではなく、全日制高校の話をされています。つまりこのお二人が現役の文科省官僚時代のことであり、お二人は「底辺校」に対して問題意識も解決策もなく、致命的なのは罪悪感すらないということです】


◎役人や役所が何のために存在しているかというと、国民に対して「品質」を保証するためなんですね。役人が学校制度を運営している以上、学校というのはまともなところだろうと、一定の信頼が置けるわけです。教育とか医療は、一定の信頼を保証するための「岩盤」がしっかりしているからこそ、安心して学校に行かせたり、病院に通ったりできる。規制緩和論者の皆さんは、いつまでたっても、そのことが分からないようで、岩盤を突き破ったとか言って、喜んでいる。そんなこと言って、喜んでいる場合じゃないという話なんです。


【私の反論:まず以前紹介した《158、おすすめ本『進路格差』(朝比奈なを)①》の中からの文章を載せます。《学力が伸びなかった理由は様々でも、中学校卒業時に低学力と判定された生徒は、受験偏差値の低い高校に進学する状況が現在も続いている。このような学校では教職員が多大な努力をしているにも拘わらず、教育活動が功を奏していない。本来であれば、生徒一人一人、低学力になった原因を探り、現時点での学力を診断し、個別指導で学習理解を深めていかなければならないのだが、それを可能にする人員も資金もないからだ。現在でもこのような高校の状況は変わってないことは、筆者に2021年3月に寄せられた公立教員の以下のメールからも確認できる。その一部を引用する。「(拙書『ルポ教育困難校』)描写に何度も図星だわ……と感じ、時に涙が流れ、自分にも起こってきた情景が幾度と思い出されました。どうにもならない事象では、自分がちっぽけで、何のために働いているのかと、悔しい思いもしたものです。(中略)授業が成立する高校は、ジャマする子がそこにいないからやん……と小さな声でボヤいています。(中略)アルファベットから仕込み直しの子たちは指導要領作成者の『高校生』に含まれておるんやろうか」》授業が成立せず、アルファベットも分からない高校生を相手に悲鳴を上げている現場の教師たち。これらを読めば、お二人が誇らしげに語る『国民に対して「品質」を保証する』という言葉が嘘であることは明白です。一斉指導のせいで、分からない生徒に振り回される現場の教師たちは被害者であると同時に、分からない生徒を見捨ててきた加害者の面があります。本当の被害者は見捨てられた生徒たちです。このような教育現場の惨状を作り出したのは、教育界の頂点に君臨する文科省の官僚であり、そのお二人の自覚のなさは、何を言っても聞く耳を持たないインチキ宗教の信者のようですらあります。そのような人たちが作った「大勢を不幸にする教育」岩盤は、突き破らなければならないと思います】


『これからの日本、これからの教育』(前川喜平・寺脇研・ちくま新書)より【次回に続きます】



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