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192、おすすめ本『われらの子ども・米国における機会格差の拡大』(ロバート・D・パットナム)①

著者はハーバード大学教授で、国際的に権威ある政治学賞も受賞されています。この本の中で印象に残ったところを紹介します。


◎私のふるさと、オハイオ州ポートクリントンは、1950年代はアメリカンドリームをまずまずには体現していたが、半世紀後には二画面分割の「アメリカの悪夢ナイトメア」となってしまった。街を二つに分けたときの、貧しい方出身の子どもには、裕福な出身の子どもを待ち受ける将来を想像することすらほとんどできないだろう。そして、ポートクリントンをめぐるストーリーは、悲しくもアメリカンの典型であることがわかる。この変化はいかにして起こったのか、それがなぜ問題なのか、われわれの社会のこの呪われた行く先を変化させ始めるにはどうしたらよいのか、が本書の主題である。


◎二層化した家族パターンは、子どもの生活に明白な影響を与えてきた。上層にいる、大学教育を受けたアメリカ社会三分の一においては、子どもの大半は双親の元で暮らし、またそのような家族はいまでは二つの所得があることが典型的である。だが下層にいる高校教育水準の三分の一の方では、生みの親のせいぜい一人とと暮らす子どもが多く、実際には多くが万華鏡的な、複数パートナーもしくは混合家族の中にいて、そこに稼ぎ手が一人以上いることはめったにない。多くの研究がこれまで示してきたのは、子どもに関する悪い結果の多くが現時点で下層に特徴的なパターンと関連しており、一方でよい結果の多くが、上層に典型となったパターンに関連していることだった。早期の出産と複数パートナー生殖のコストを、人生における成功の見込みの消失という形で子どもたちが支払っている。実の父親なしで成長した子どもは、標準テストの得点が低く、悪い成績を取り、また学校に通う年数が短くなりやすく、これは人種や階級にかかわらず成り立っている。彼らの攻撃的な行動上の問題、そして不安や抑うつの増大といった精神的な問題も示しやすい。シングルマザー家庭で幼少期を過ごしたことのある子どもはまた、早期の性交渉を行って若くして片親になりやすく、それによりサイクルが再生産される。


◎大卒の親は高卒の親より、子どもの話に耳を傾け、話してくれる可能性が高く、また裕福な家庭の子どもは、貧困の中で育つ子どもよりも毒性ストレスにさらされることが少ない。加えて、階級に基づいた不均衡はごく幼少期に発現し、就学前の時期に最も強力に作用するということである。このことから早期の子どもの発達に焦点を当てることの重要性がここからは示唆される。皮肉なことだが、こういった研究上の新しい知見は、短期的には、階級差を増幅させる傾向がある。それは教育水準の高い親ほど直接的、間接的にこれらを学び知る可能性が高く、自身の育児にそれを利用しようとするからである。


 『われらの子ども・米国における機会格差の拡大』(ロバート・D・パットナム・創元社)より【次回に続きます】

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