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117、成仏①

金色の目を爛々(らんらん)に光らせ、笑っている。鈴ちゃんの背後の山羊頭オーラも、気がつけば二メートル五十センチぐらいに成長している。このまま成長し、より巨大なオーラとなって、暗黒少女にまで堕ちた鈴ちゃんと組む事を考えた時、今笑いながら喋っている荒唐無稽こうとうむけいな事を現実化するだろう。もちろん白龍が許すわけない。上空にいる白龍が下りしだい、凶悪オーラは食いちぎられ、今度こそ根絶ねだやしの意味もこめて、丸呑まるのみにするだろう。鈴ちゃんはエネルギー源を渡断された事で気を失うだろうが、そこから目を覚ませば、いつもの可愛らしい鈴ちゃんに戻るはずだ。私が手が届く範囲ならなんとかなるのだ。しかし手が届かないところで芽生え、暴走した悲劇をテレビは見せつけている。鈴ちゃんは止められる。しかし全国にいる暗黒少年、暗黒少女まで、今の私の力では止める事は出来ない。

 その時、テレビ画面の中である変化が起きた。岡村七海人の周囲に立って、ニヤニヤ笑みを浮かべ炎上する体育館を見下ろしていた、七メートルもの凶悪オーラ。その水牛頭が胸をりながら、カッカッカッと高笑いを上げたあと、全てをげた者だけが浮かべることの出来る満足した表情をすると、一瞬に黒い粒子の固まりとなった。白龍に食いちぎられて、鈴ちゃんと半グレの一岡、両者の凶悪オーラは消滅したが、何もないのに、岡村の凶悪オーラは自ら消滅した。消え去る直前のあの穏やかな表情から、思い浮かぶ言葉は『成仏じょうぶつ』である。人間の殺戮さつりくという思いを遂げ、この世に末練みれんを残さず消えていった。黒い粒子は、小魚の大群のように空中をうごめいている。

 背後に立って、本体である人間の精神状態をあらわしているだけの通常オーラと違い、セミの幼虫ようちゅうの背中が裂け、中から成虫せいちゅうが誕生するように進化した覚醒オーラは、自らの意志で動き、本体の人間に力を与え、望みを叶えるべくあやつる。そして望みが叶えば思い残さず消滅することが現在いま判明した。逆に望みを叶える事なく、白龍によって消滅させられた鈴ちゃんの凶悪オーラ。今回の放火殺人事件を目撃した事で、過去のいじめられたトラウマがフラッシュバックで吹き出し、憎悪に取りつかれ、かつての暗黒少女に逆戻りした鈴ちゃん。その復讐心の炎の中から、強制退場させたはずの凶悪オーラが雑草のような生命力で芽を出し、成長して復活した。私の隣に立っているこの山羊頭オーラは、鈴ちゃんを使って自身の望み、人間の殺戮をおこなうだろう。では白龍の大願たいがんが『傷ついている子供達の救済』なら、その望みはたやすく叶う事はなく、私の周辺には生涯消える事なく、白龍が存在しているという事になる。まあ別にいいんだけど。そんな推測すいそくをしている間に、空中を蠢いていた黒い粒子に動きがあった。


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