怖い話
俺の知り合いの話でさ、
そいつ、同年代の女の子なんだけど
ある時そいつと二人で怖い話をすることになったんだよ。
まあ夏だったからさ
ちょっとしたおふざけ感覚で話し始めたんだよ。
交互に怖い話をすることになってさ
最初に俺から話すことになったんだけど
俺、あんまり心霊とか興味ない方なんだよね。
だからそもそもそういうエピソードが無くて
仕方ないから話を脚色、誇張して話したんだよね。
けど俺こういうエピソードトークってのが
あんまり得意じゃ無くてさ
すぐに嘘だってバレちゃったわけ。
「絶対嘘じゃん」なんて言ってそいつが笑うわけ。
俺も自分の話の下手さに笑えてきちゃって
その場の雰囲気が全然怖く無かったんだよ。
交互に話すから次はそいつの番でさ
そいつ、ちょっと考えてから話し始めたんだけど
話の構成もぐちゃぐちゃだし、何より後付けが多くて
すぐに嘘だって分かったんだよ。
「お前も下手くそじゃないか」なんて言って笑ってんの。
そんな感じで楽しんでたらさ
三回目の順番が回ってきたときに突然
「あ、思い出した!」ってそいつが言うんだよね。
どうやらちゃんとした怖い話を思い出したっぽいの。
ここからはそいつが言ってた話なんだけど
去年の夏の話でさ、
姉貴と旅行に行った時の話だって言うんだよね。
旅行先は三重の方で、そいつの運転で姉妹揃って旅館に泊まったんだって。
ここから三重まで車で四時間くらいかかるんだけど、
運転の疲れもあって、初日は旅館でゆっくりすることになったらしいの。
すぐ近くに海がある旅館だったから
海辺で持参した手持ち花火を二人で楽しんだりしたんだって。
その旅館、花火を全面的に許可してるから
バケツとかも快く貸してくれたらしい。
二人で一通り花火を楽しんでから
部屋に戻ることにして
戻った頃には食事の時間だったらしく
急いで食事の会場まで行ったんだって。
豪華な料理を楽しんで
その後大浴場で温泉に浸かったらしい。
風呂から上がったら自分たちの部屋に戻って
二人でゆっくりしてたんだって。
問題はここからでさ
二人でゆったりと寝そべっていたら
突然部屋の電気がパッと消えたらしいんだよ。
夜だったしどこにも光源が無くて
一気に部屋が真っ暗になったんだと。
そいつ、パニックになって「え?え?」なんて言ってたら
またパッと電気がついたんだって。
ホッとして、「停電かな?」とか姉貴と話してたらしい。
でもこれが一回じゃ終わらなくてさ
数分後、またパッと電気が消えたんだよ。
「また?」何て言って再びつくのを待ってたけど
今度は待っててもつかなかったらしい。
そいつ、姉貴に「旅館の人呼んでくる」って言ったら
途端に電気がついたんだってよ。
「もう、何これ」とかちょっとぼやいたりしてさ
蛍光灯の調子でも悪いのかななんて考えてたら
数分後、またパッと電気が消えたらしいんだ。
そいつ、これは流石におかしいと思って
姉貴に「やっぱり旅館の人呼んでくる!」って言って部屋を出ようとしたら
突然「ごめん!」って姉貴が言ったんだって。
何のことかと思ったら電気が付いて
リモコン持った姉貴の姿が現れたんだって。
実は姉貴が悪戯で電気を操作してたらしくて
「なんだあ!びっくりした!」
って安心したんだって。
そこでそいつの話が終わったもんだから
「何だその話」ってツッコんだよ。
そしたらそいつ笑いながら「写真見せてあげる」って
もうとうとう怖い話でも何でも無くなったんだよね。
写真見せてもらったらさ
普通に楽しそうにしてるそいつの姿が写ってて
「楽しかったなー」ってそいつが言うから
そこからはただただ旅行の写真を見せてもらってたよ。
「俺も行ってみてえな」なんて言ってたらさ
そろそろいい時間になったから
そいつを駅まで送り届けることにしたんだよね。
まあ一応女の子だし俺の家で呑んでるんだから
ワンチャンあるかなーって思ってたけど
その日は素直に駅まで送ったよ。
駅に着いたらそいつが「また飲もうねー」って言ってきたから
俺も「おう、またな」って返してさ
そこでお別れしたんだよね。
歩いて自宅まで引き返して
玄関の鍵を開けてさ
ドアを閉めたらさ
だんだん恐怖が蘇ってきて
足の震えが止まらなかった。
初めは何かの冗談かと思ってたけど
そいつが姉貴との旅行の写真を見せてきた時
あ、これマジだなって思ったよ。
その写真、そいつ一人しか写ってなかった。




