あれから4年……
あれから4年が経ち私ゼフィ=アルフヴィダントは12歳になっている。やはり、モンスターの活発化が目立つようになりこの地域もランクが高いモンスターが少なからず見かける。
それと、1年前ぐらいから父親アルガが、【聖騎士】となって戻ってきている。
あの女聖騎士フィルメイアさんとは違って[聖魔法]等のスキルもそこそこ上げていたのでアンデットが現れても安心なのがいい。
私も、背が伸びて町の人からキレイねとか言われるようになったよ。長かった髪を後ろで結び短く見えるようにしている。
姿見の鏡の前で髪を結び、鎧を着けていて思い出した。
ついこの間、母親が『あら、ゼフィちゃん。 その鎧キズだらけね。大きくなったし、そろそろ女性用のに変えないとね』と言ってきてんだよね。
私が『ジョセイヨウ?』って聞き返してしまい、女性用なんてあるの知らなくて驚いてしまった。今の鎧は兄のお下がりだけど全然問題なく使えている。
姿見の鏡の前で体を横にしながら鎧を着けていて思ってしまう。それは私の体は、細くスレンダーな体型らしいけど、正直、悲しいが胸の膨らみなんてほんの少ししかない。母親は、たわわにみ実っているのに……。
まだ9歳の妹に『おねえさま おむねのかたち わたしと おなじね』なんて言われちまった、その時の私青ざめて苦笑いしか出来なかったよ。
もちろん5歳の時に宣言した通り服装は青と白を基調としているけど、白いシャツと青い作業者で腿あたりちょっとした小物を入れられる袋が付いているオーバーオールだよ。少し汚れているけど青と白は、なんたって清楚にみえるから、なんてね。
「おい、ゼフィ。 ライクは、どうした?」
家の扉が開いて父親がいきなり入ってきて大声で聞いてきた。
「お父様、ライクは自衛の方に行ったんじゃ……」
「今日は、俺と外回りなのに来てないぞ」
「それじゃ、私が付いていきますよ」
「お前は、充分だろ。 ライクは、戦闘の経験不足だからな」
「あら、ライクちゃんならさっき出ていきましたよ」
母親が、洗い物が終わって私のいる玄関まで出て来た。
「もしかして門で待ってるんじゃないんですか? 朝ご飯の時に準備出来たら門で待ち合わせするとか言ってませんでした?」
私がそう言うと父親が、ハッとして「そうだ!」と言い残して駆け足で家を出ていき門の方へ向かっていた。
今まで、気にしなかったのだがモンスターの活発化により世界に目を傾けてみた。
この世界は、世界樹という空高く天を突き抜けるぐらい高い樹が聳えたっていてその周りに樹海が広がる。
そこを中心にして8枚の葉が、生えているかのように大地がある。その1つに私達が住んでいる。隣の大地と繋がってはいるが境界に世界樹と同じぐらいの高さの山脈があり、到底人では乗り越える事が出来ない。山には、ドラゴンなど手強いモンスターが住んでいるとも言われているからだ。
「ゼフィちゃん。 そろそろ行かないとダメなんじゃないの?」
母親が、まだ鏡の前にいて支度が終わらない私に言ってきてふと外をみる。
「ヤバい。 お母様、行ってきます」
「気をつけて行ってくるのよ」
今日は、ライアンさんと見回りの後外回りしている父親と共に狩りをする予定だ。
「はぁ はぁ セーフ」
「何がセーフだ。 遅刻じゃないがもっとゆとりを持って行動しろ」
守衛所に着いてゆっくり席に腰を下ろす。叱ってきたのはライアンさんで、父親と歳が近いライアンさんだけど、顔は渋く髪がロマンスグレーみたいになっている。4年という年月は人を変えるなぁと思い町をライアンさんと巡回する。
昼過ぎになり交替のため1度守衛所に戻る。
「ゼフィ、悪い急用が入ってな外いけなくなった」
「えっ え? 1人で行っても……」
「アルガの所に行くなら大丈夫だろ。 西に向かったと聞いてるからな」
「じゃぁ、行ってきます」
私は、町を後にし父親のいる西の方へ向かう。父親の傍には弟がいるはずなので直ぐに見つかるはずだ。しかもレーダーマップを確認しているし家族は、マーキングしているので近づけば分かるはず。
結構走っているが、父親と弟の姿が見えない。もちろん、レーダーにも中々表れない。
どこに行っているのだろうと思っているとレーダーマップに現れてくる青い点が2つ。
その近くに赤い点が1つ、しかもちょっと大きいので急いで駆けて行く。
段々近づき父親と弟が見えてきたらとんでもないヤツと戦っている。
「お父様、こっ こいつ……」
「盾で相手の攻撃を防ぐ。もしくは、誘導させて隙を作り攻撃するんだ」
「でっ、でもぉ」
弟は、自分よりも大きいモンスターと戦っている。少し腰が引けている弟は、涙を堪えながら声を出している。
現場に到着した私は、父親に声をかけ現状を把握しようとする。
「お父様、ライク大丈夫ですか?」
「おっ おお。ゼフィか、警備は終わったのか?」
「えぇ。交替してきました。 ライアンさんは、用があると言って来れなかったですよ。それにしても……」
「まさか、こんな所にまで現れているとはな」
「おっ お父様!!」
弟に向かって飛びついてくる相手は、鋭い爪が生えている前足を振りかぶって何度も攻撃してくるが、弟はその攻撃を身長の半分ぐらいある盾で防いでいる。攻撃におされていてへっぴり腰になっている弟は、涙声で「お父様ぁ……」と言っているよ。
「兎に角、盾で防いで」
「やってますー」
「攻撃しなきゃ勝てんだろう」
「出来ないですー」
「お父様、無茶ですよ。 ライクにサーベルタイガーなんて!」
弟が相対しているモンスターは、上の犬歯がサーベル状になった体長が弟よりも少し大きい虎のサーベルタイガーである。
ベテランの【戦士】でも見習いの【騎士】でも気を抜けばやられてしまうほどの強さなんだよね。今の弟をみてなんでサーベルタイガー?と思い父親に訪ねる。
「盾のスキルか【盾技士】のジョブを得るためとわかるけど」
「それもあるが、戦いの技術は実践あればこそ」
「ライク、へっぴり腰だから」
「ワーウルフやワイルドボアからのサーベルタイガーは無理か」
そりゃムリですよ父親よ。ランクが飛びすぎてやられるパターンですよ。
「えっ? お姉様いるんですか?」
「いるわよ。ライク頑張れ」
「頑張れないですよ。でぇい」
掛け声でサーベルタイガーの攻撃を弾き返す。へっぴり腰では無くなった弟は、腰を入れて盾を構えている。
「お父様……」
「なんだ?」
「あの盾、重たいんじゃないんですか? ライク、盾を動かす時、剣を持っている方の手も使っているし、顔を赤くして持ち上げているから」
「あの盾は、俺のだし騎士の盾だからな」
[騎士の盾]名前はカッコイイが実の所、長方形の鋼の盾だ。
私はその盾の名前を聞いて進言するよ。
「お父様、あの盾ライクにはムリですよ」
「なんでだ?」
「あの盾【戦士】では、装備レベル範囲外じゃないですか」
私の言った言葉に父親は、気づき直ぐに剣を手に取ってサーベルタイガーへ斬りこみを入れに動いてた。
「そうだった。支えるのが精一杯なのか。悪かったなライク」
ライクは、盾を立てたまま尻もちをついてぐったりする。
「お父様、私も行きますよ」
「サーベルタイガーは、危険だ。ライクを見ててくれ」
「えーっ」
「えーじゃない」
さっきまでライクにサーベルタイガーを倒せと言ってたのに私だとダメだってなんで?
盾を持たない父親は、剣でサーベルタイガーの牙や爪を受け流し斬りつけていく。
サーベルタイガーの胴体や足に傷つけ体毛に血が滲んでいる。
「なかなか、手強いな」
『ガァルルルルルルルゥ』
サーベルタイガーは、少し後退したら勢いよく父親の方へ突進し飛び跳ね前足を、大きく振りかぶる。
腰を下ろし剣を下に構え力を貯めている父親。
「でぇあっ」
父親は、うっすら光る剣を飛び掛るサーベルタイガーへ斬りつけていく。
サーベルタイガーの前足と首が父親の左後ろへと飛んでいき胴体が……。
「うわっ!!」
サーベルタイガーの頭と前足2本が転がると同時に残りの胴体から後ろが私の方へと向かってくる。
咄嗟に剣をだし下から斬り上げサーベルタイガーの胴体を真っ二つにする。
爽やかな顔をして、汗を拭う父親に私はドスドスと向かって怒る。
「お父様、サーベルタイガーの首なしが突っ込んで来ましたよ!!」
「わりぃ、わりぃ。まさかゼフィが、そこにいるとは思わなくてな。でも何とかすると思ってたさ」
「お姉様、背中血だらけですよ」
「なぬっ」
「ゼフィ、怪我したのか?」
「怪我なんてしないー。サーベルタイガーの血が掛かったの」
座り込んでいた弟が盾を支えに立ち上がりながら。
「多分、そうじゃないですか」
「お父様、これヤバくないですか?」
「何がぁーーあっ」
言いかけてふと母親の顔を思い出したような顔をしている。
「これ、お母様に絶対怒られますよ。お姉様ヤバっ」
「ライク。元はと言えばあなたが!!」
「お姉様が、真下で斬るからですよ」
ライクは、私に笑いながら言ってきた。
サーベルタイガーの血の匂いが、漂ってくるが直ぐに乾きそうだけど、跡が残ってこれは怒られるパターンなのは明白。
サーベルタイガーの死骸をアイテムボックスのカバンにいれている父親に。
「お父様、これからどうします。まだモンスター探しますか」
「そうだな。ライクの剣術を上げてやりたいからな」
「ライク、あなた剣術レベルいくつなの?」
「えっ? まぁだいたい……ゴニョモニョかな」
唇をとんがらせて口を開かせずに喋る弟に、私は素直に父親にチクる。
「剣術レベル2ですよ。お父様」
「ちょっとお姉様ぁ」
「【剣士】のジョブで使える闘気剣術ソードスラッシュが、使えるのになレベル2なんだろ。不思議だな」
腕を組んでライクを見下げてる父親に私が口を出す。
「お父様とお母様の子ですもの、闘気なんてちょっとコツを使えばいけるのでは?」
「でもなぁ――――」
「良いじゃないですか、お父様とお母様の子ですもの」
2回言ってやったら父親の顔が満足そうな笑みを浮かべる。
「そりゃ、そうだな俺の子だもんな」
弟は、苦しそうに引き攣りながら父親にベシベシ背中を叩かれている。
「おっ お父様、痛いっ、です」
「あっ、悪い悪い。でも、ライク今日はまだまだだぞ」
「えーーっ!!」
項垂れる弟を見て父親は、笑っている。
「お父様、サーベルタイガーを倒した技って何かあるんですか?」
正直その技は、知っている。闘気剣術の1つ[エクステンドブレイド]闘気の刃を伸ばしてリーチを長くする技で使い勝手として武器の重たさが変わらずに攻撃の幅が広がる。【聖騎士】としては使えて普通なのかな。フィルメイアさんは使っている所、見てないけど。
「あー、あれか。 闘気で剣が伸びて、攻撃範囲が広がる[エクステンドブレイド]だ」
「僕も使えますか?」
「使えるぞ。どんどん鍛えてだな【聖騎士】になればなっ。アッハッハッハ」
さらに項垂れる弟が、ため息をついている。
「お父様、これからどうします?」
「もう少しこの辺を散策してライクに戦わせる。早く【剣士】のジョブを取らせたい」
【剣士】のジョブの獲得は、剣術レベル5にする必要がある。
「じゃぁ、どんどんやろう。ライク頑張るぞ」
「えっ、まだやるんですかぁ。頑張ります」
ライクは、疲れきった顔をして返事をするが、ライクの剣術レベルを上げる為、私達はこの辺りでモンスターを探す事にした。
「ゼフィは、どうするんだ?」
「どうするんだとは、どう意味ですか?お父様」
「うーん。ライクと共に王都に行って騎士団に入るか?」
「ライクは、騎士団に入れさせるんですか?」
「まぁな。騎士団の方から連絡が、有ってゲイルがいるからこの歳でも大丈夫かなと思ってな」
ゲイルとは、アルフヴィダント家の長男であり今では【騎士】として立派に騎士団の一員となっている。
「僕、騎士団に入れるんですか?【騎士】になれるんですね」
さっきまで、だらけてた弟が、シャキッと背筋を伸ばし元気よく歩いている。弟は昔から【騎士】と言うジョブを憧れているから嬉しいんだろうな。
「もしかして私は、ライク付き添いで王都に行けという事なのですか?」
「正直、そう言う事になるか。少しの間ライクの面倒をみて貰いたくてな」
「そうですよね。お父様は、行けませんし。うーん」
私は、唸りながら考える。
そろそろこのアーラムの町から出なければ神様からの依頼が、出来ないしそろそろ出てみたい。
世界を旅してみるのも良いかな。ジョブを取る事を気にせずに縛られること無く動けるから良いかなって。
「私、行きますよ。でも、ライクが1人で大丈夫そうだったら少し自由しても良いですか?」
「良いが、ライクが【騎士】になるまで―――」
「どうしました?」
父親が、一瞬黙り込んでいる。強いモンスターが現れた訳ではなく何か思い出したような顔をしている。何時もの事だから慣れているけど、この後嫌な言葉を聞くことになる。
「――――ゼフィ、お前に王都の貴族から誘いの連絡が来てたんだ」
貴族からの誘いなんて、めんどくさい事が起きそう。
「断る事出来たら断っても良いですか?」
「会って話だけでも聞いて、向こうに迷惑かけるなら断っても良いぞ」
「ライクの付き添いかぁ、王都に行きますよ」
この一言を言わなければ、面倒事に巻き込まれずに済んだのかもしれない。
「お願いする。そうだその貴族の家名はアルガス家だぞ」
「アルガス家?」
「お姉様、凄いじゃないですか!アルガス家って言ったら【剣聖】モンドー=アルガス様に会えるかもじゃないですか」
「モンドー?」
「お姉様、忘れたんですか?」
「ゼフィ、大丈夫か?有名な方だぞ?」
2人から物凄く心配そうな顔をされているが[モンドー]って名前知らないぞ。
「お姉様、フィルメイアさんの家名ですよ」
【聖騎士】なのに聖魔法が使えなかったあの人の家からなら、私を指名してくる事に納得し、そして物凄く寒気を感じた。
読んで頂きありがとうございます。
更新遅くすみません。
ここからですが物語りが始まります。
頑張っていく所存です。




