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「僕」は愛される資格がない  作者: 大島千春
5/10

プロローグ「『僕』は、『私』は?」③


「今日、図書室来ないの!?」

「…うん、ごめん。姉ちゃん熱出たらしくてさ。早めに帰るよ。」


図書室に向かう途中、すれ違った透くんに声をかけた。そうしたら返ってきたのは、真相を確かめようと意気込んで行った私にとって、予想もしなかったような返事だった。


「ごめん」と謝る彼に、私は「そんな、しかたないよ」と返すしかない。

「じゃあ、」と透くんは踵を返す。


ぼーっとしながら図書室の窓から外を眺めれば、校門で美人な高校生の女の人と透くんが仲よさそうに帰る姿が見えた。

女の人の方は体調が悪そうで、それを透くんが気遣っている様子だった。


そういえばこの中学校の近くに、県立の進学校の中でも偏差値が高いと有名な高校があったっけなぁ、とぼんやり思う。


…あー。


お似合いだなー。

私より可愛いじゃないですか、敵わないなー。

似てないし、お姉さんとマジで血が繋がってないのかなー。


あ、血が繋がってないなら結婚できるのか。




「…いいなぁ。」




私はぼそりと呟いた。



******



翌日の朝、隣の席に透くんがいないことに気づき、近くの男子に尋ねたことで返ってきた返事に驚く。


「えっ、透くん、学校お休み!?」

「ああ。あいつ姉ちゃんいるじゃん?親も仕事だし、姉ちゃんの看病しなきゃいけないんだってさ。」

「…そっか。」


元の席に戻って行くクラスメートの男子に、ありがとうと言って後ろ姿を見送る。


…。


無言でいる私に、バシッと肩を叩かれる衝撃が体に響く。


「へこむなっ。明日、きっと来るよ。」


京ちゃんだった。

私は「そうだね」と返した。



******


また翌日。


「今日もいないいいい」

叫ぶ私。


今日も看病?

透くんと2人っきりだよね?


京ちゃんは「病気なんだから今だけだよ」「そもそも三田くんがお姉さん好きかなんてまだわからないんだから」といろいろ慰めてくれるけど、モヤモヤを抱えたままの私は、


「…前も2人で歩いてたじゃん」


と疑念を口にしてしまう。

普通、姉弟で恋愛はしないものだし、まだ透くんに確かめてもいない。

でも、タイミングを逃し続け、溜まっていくモヤモヤと遣る瀬無い気持ちの山々。


…こんなこと、私だって思いたくない。

あの人のことが憎いだなんて。


私は完璧に嫉妬していた。





次でプロローグ終わりです。

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