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「僕」は愛される資格がない  作者: 大島千春
4/10

プロローグ「『僕』は、『私』は?」②

長いプロローグその2。あと2つほど続きます。


「甘いもの、おっいしーー!!」


ある放課後の帰り道の途中、クレープ屋さんに寄って頼んだ、山盛り苺の生クリームクレープ(もちろん生クリームは増量!)を頬張りながら、叫ぶ。


それを横目に見ながら「ほんと、わかりやすいね、明里って…」と呟く京ちゃん。


「甘いもの大好き、かっこいいイケメン大好き、可愛いもの好き」

「幸せなんだし、分かりやすくたって、いいの!」

女の子だったら好きで当然でしょ、と京ちゃんが羅列した私の好きなものリストに反論する。


「楽しく生きるのが1番だもん!好きなものに囲まれて生きていたいの!」

食べ終わったクレープのゴミをゴミ箱に捨て、振り返りながら私は言う。

それを聞いた京ちゃんは笑いながら「そうだね」と頷いた。


再び家に帰るべく、京ちゃんと並んで歩き出す。


「そういえば」と京ちゃんが話し掛けてくる。

「明里、三田くん、お姉さんいるの、知ってる?」

ぶふぅっ。

相変わらず驚くと吹き出してしまう私の癖は相変わらず。


「しっ、知らなかった…!どんな人!?」

分かりやすく食いつく私に、「ええっと」と京ちゃんが言葉を考えていると、

「あっ、話をしていれば。三田くんだ。」

と京ちゃんが指差す。


指差した方向に目を向けると、三田くん…だけじゃなくてめっちゃ美人な女の人が一緒にいる。

黒髪ストレートロングのすらっとした美人。

「あれ誰!?だれ!?」

透くんが予想外な人物と一緒に歩く姿にパニックを起こす私。

「あれじゃん、あねって。」

私と対照的に冷静な京ちゃん。


「いやいやいや!似てなかったんだけど!?」


そう、透くんはどちらかと言うとくりっとした目をしていて、スッとした鼻筋なんだけど、さっきの美人は切れ長の目に、鼻筋は普通で少し高めな鼻の顔だちだった。

目、鼻、口を見ても透くんの印象と合わない。


「んー、じゃあ…彼女?」

「し ん じ た く な いいいい」

なんでもないような顔して、さらっと爆弾発言を投下する京ちゃん。頭を抱える私。


彼女…?いや、透くん、私にはそんな話してなかったし…。でもお姉さんがいるって話も聞いてない…。

ぐるぐる考え出す私。

本人に確かめてもいないくせに、悪い方向に考えてしまう自分のネガティヴ思考に嫌になる。


「あーーーっ!やめよ、やめ!また明日!!クラスの人に、また明日聞いてみる!」

「まぁ、聞いてみないとわかんないしね、それがいいよ」

叫んで悪い思考のループを断ち切ろうと、叫んだ私に、「そうだね」と頷く京ちゃん。


そうだそうだ、また明日。もう考えるのはやめだ!


私はやり場のないモヤモヤをつぶすように、ズンズンと家に向かって歩き出した。


******


聞けばモヤモヤが晴れるはずだったのに、クラスメイトからの答えは私のモヤモヤを助長するだけだった。


「三田に彼女?ああ、年上の彼女がいるって噂、聞いたことあるよー。」

クラスメイトの佐藤くんは、なんでもないような声でそう言った。中学2年のときから透くんと同じクラスで、今でも時々遊ぶ仲らしい。


「それ、ホント?」

一大事の私は佐藤くんにズイと詰め寄るように、低い声で尋ねる。


「いや、噂だけど。前に三田と好きなタイプの話しててさ、あいつ年上が好きなんだって。なんか美人な高校生と一緒に歩いているの見た友達やつがいるらしくて、もうできてるんじゃないかって噂。」


俺が知ってるのは以上だ、じゃあな、と去る佐藤くん。彼が去っていくのを見送った後、

「あ″ーーーーっ」

思わず叫ぶ私。

横から京ちゃんが「明里」と声をかけるけど、ごめん京ちゃんそれどころじゃない、無視。

「あ″ーーーーっ」


佐藤くんマジですか、いやだああっ。

お姉さんとの血の繋がりも聞いたけど、「知らない」って言われちゃったし。

マジかマジですかーーーっ!?



ばちんっ!



自分の両頬を自分で平手打ちする。

今日は水曜日。透くんと本が読める日。

話の流れでちょっと聞き出せるかも。


あくまでアレは噂だ。

彼女と疑われているのがお姉さんかどうかもわからないし、彼女が本当にいるかもわからないし、お姉さんとの血の繋がりもわからない。

こんなに不確定事項だらけなんだ、まだわからない。


ばちんっ!


もう一回頰を叩く。

「図書室行ってくる!」

京ちゃんにそう宣言して走り出す。

京ちゃんは、「いってらっしゃい」と言ってくれたので、力強く「うん!!」と返した。


このとき、京ちゃんは私に聞こえない声で、「強いなぁ」って呟いたらしい。後から聞いた話だけど。


******


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