9 オーク全滅作戦 (ただし、戦うのは魔王のみ)
師走ですね。 忘年会が多くて毎週くたくたです・・・
ちまちまと書いていたらこんなに空いてしまいました。
「これで137匹目!!」
今、私は眠らない都市アリアから程近い所にある森の中で片っ端からオークを狩っている。
なぜこんなことをしているかというと、時を遡ること約1時間前。
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「とにかくここら一帯のオークをすべて消し炭にすればいいんだな」
「けっ消し炭!? いや、まぁ手っ取り早くていいけど」
眠らない都市アリアを襲った謎の病、『インフルエンザ』の元凶が『オーク』であるとシュウタは推測した。
私はその元凶を断つため、都市周辺の森に生息するオークを根絶やしにすることにしたというわけだ。
「そうと決まればまず森に行く準備をしないとね。 ルー、なにか必要なものはある?」
「いや特にはないよ」
「え? だって森でオークと戦うんでしょ?」
「そのつもり。 だからサクっと行ってこようかと」
「え、なにそのちょっと近くのコンビニ行ってくるわ的な感じ」
「コンビニ??」
またシュウタがなにかよくわからないことを言い始めた。
オークを数匹倒すくらい私にかかればそれこそ一瞬で終わらせることができる。
わざわざ森用の装備をがっちり準備しなくてもすぐ帰ってくるつもりだ。
「まあルーがいいって言うなら大丈夫なんだろうけど・・・ それで、僕はどうすればいいの?」
「シュウタは戦闘経験は・・・なさそうだから私のバックアップかな。 都市の上空に浮かばせてあげるから『遠見の眼鏡』っていう魔導具でオークを探して欲しいな」
「じょっ上空!? 大丈夫!? 落ちたりしないよね!!?」
「この私が維持させるんだから大丈夫に決まってるだろう!」
失礼なヤツだ!
これでも魔王なんだぞ!
とりあえず、私は『遠見の眼鏡』をシュウタに渡すため、左手首に魔力を流す。
すると手首にはめたブレスレット型の魔導具が淡く光り始めた。
「それ、リンさんも着けてたけど、そのブレスレットはみんな持ってるの?」
「あぁ『リンクレット』のことか。 私とリン、クリスは持ってるよ。 それ以外の人は持ってない。そもそも空間魔術が扱える者は少ないし、それを魔導具にするのも難しいんだ。 魔導具なら魔力を流すだけで扱えるから誰でも使えるけど信頼の置ける人にしか渡してない」
私はシュウタに説明をしながらブレスレット型部分転移魔導具『リンクレット』で私専用の倉庫から『遠見の眼鏡』を取り出し、シュウタに渡した。
「見た目は普通の眼鏡なんだね」
「まぁね。 その眼鏡をかければ見たいところを自動で拡大してくれるからオークを探してくれ」
「やってみるよ」
「私も対になる眼鏡をかけるからシュウタの見ている場所を私も見ることが出来るし、念話も使える。 なかなか便利だろう?」
私は眼鏡を中指でくいっと挙げながら言う。
ここぞとばかりにこの世界の技術力も負けてないとアピールした。
シュウタも「これ欲しいな~」と、かなりの高評価なので成功と言っていいだろう。
「さて、それじゃあオーク狩りを始めるか! しっかりオーク探してね♪」
「善処するよ。 とりあえず森に出発かな?」
「え? 今からだよ?」
「・・・・・・ん?」
「今から」
「ちょっと待ってなんとなく予想できたけどまだ心の準bうう 」
まだしゃべってた気がするが私は構わず浮遊魔術をシュウタにかけ、一気に上昇させた。
シュウタは瞬く間に米粒になっていった。
「うん、なかなかの速度で上がってったな! 久しぶりに自分以外を飛ばしたけど私が飛ぶ時と同じくらいの速度が出せて良かった良かった」
『ってアホか!!! 早すぎるわ!! 心臓止まるかと思ったわ!!!』
あれ?
そんなに速かったかな?
私的には普通の速度なんだけどな、まぁいいや。
「お、シュウタ。 どうかな眺めは。 よく見えるでしょ?」
『スルーですかそうですかよく見えるよこんちくしょう!! ・・・ていうかルー、オーク滅茶苦茶いるんだけど?』
「どうせ2、30匹でしょ? そのくらいなら普通だよ」
オークは繁殖力が高く、数が爆発的に増えることがある。
過去の記録では一度に70体もの数が確認されたこともあるそうだ。
『いや・・・多分だけど3桁はいると思う』
「はぁ!? ・・・・・・・おいマジか」
私は『遠見の眼鏡』の効果でシュウタが見ている風景をリンクさせて確認してみた。
すると都市アリアを囲むようにオークがいて、今にも攻めてきそうな状態だった。
そしてなにより数が尋常ではなかった。
目測でおよそ300体程度はいる。
周りにこれだけの数がいてこの私が気付かないなんてありえない!
が、実際に周りにこれだけの数がいるのだ。
とりあえず殲滅しよう。
原因究明は後回しだ。
「シュウタ。 予定通り、オークの殲滅作戦を開始する。 1匹残らず狩り尽くしてやる」
『了解。 ルー、気をつけて』
「ふっ、誰に向かって言ってるんだ。 魔王の力、見せてあげよう」
私はブレスレット型部分転移魔導具『リンクレット』に魔力を流し、剣を一本出した。
実は私の戦闘スタイルは基本的に武器を使用せず、肉弾戦が主体だ。
というのも武器を使うとすぐに壊してしまうからだ。
どうも力加減がうまくできずに剣をすぐにポッキリ逝かせてしまう。
なのでこの機会に力加減の練習をしようという魂胆である。
「行くぞ!!」
私はそう言って目にも止まらない速さで大地を駆け、オーク狩りを開始した。
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そして1時間かけて137体を葬ったわけである。
まだ半分も狩っていないという事実に頭痛がしてくる。
ちなみに剣は2本折った。
「ていうかオークいすぎでしょ!? ホントにどうなってんの!?」
私はついそう叫んでしまった。
これはもしかすると『王種』が発生している可能性がある。
『王種』とは魔物の最上位種のことで、今回発生した一連の事件の元凶はオーク種の最上位種、『オークロード』である可能性が高い。
魔物は基本的に知能が低く、本能で行動するが『王種』は人族並みの知能を有し、中には言葉を交わせる者もいる。
まぁそれにしてもオークの数が多すぎる気がするが・・・
「オークロードを探し出して倒したほうが早そうだな」
私は魔力の気配を探る。
この世界では、万物に魔力が宿っていると考えられている。
草木や花、人が作った鉄や機械、道端の石ころに至るまで魔力を保有している。
そして通常は魔力量に応じて気配も濃くなる。
達人クラスになると自分の魔力を完璧にコントロールして気配を断つこともできるが、魔物であるオークロードはそこまでのコントロールはできないはずだ。
しかし、
「うがああぁぁ!! オークが多すぎて気配がイマイチわからんわ!! シュウタ、聞こえる~? なんかオークより2周りくらいの大きさの強そうなヤツどっかにいない?」
『またざっくりした情報だな~。 ちょっと待ってね・・・いた! 僕の位置から南に2km行ったとこ! この眼鏡本当にすごいね、距離まで分かるなんて』
「了解。 激レアな魔導具だしね。買おうとすると3000万くらいするよ」
『マジで!?!?』
シュウタが金額を聞いて慌てふためいている。
私は南に移動しながらオークロードの気配を探る。
ロード種くらいになれば普通の魔物に比べて3~5倍ほど魔力が多いので気配を感じ取れやすいはずなんだが、イマイチこれといったヤツがいない。
今回の事件、不可解なことが多すぎる。
シュウタがこの世界に迷い込んだことといい、なにか世界に異変が起こっているのは確実だろう。
おっ、やっとそれっぽい気配を感じた。
そっちに行ってみよう。
私は気配の主を確認するために気配のした方向に向かった。
「さてさて、どんなヤツかな」
私は物影から気配の主を観察する。
体長はおよそ3m程度。
脂肪と筋肉が入り混じり、いかにもパワー特化ですよといった体型。
武器には恐らく冒険者から奪ったであろうバスターソードを片手で軽々と扱っている。
間違いない、オークロードだ。
ただ目視できるほど近くに来ているのに気配がオークと比べてちょっと強いかな程度なのがおかしい。
それともう一つ、不可解なことがある。
オークロードがバスターソードで『素振り』してるんだが。
メガネをかけたかったんです! ただそれだけなんです!!
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