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8 対策と予防

少し間が開いてしまいました・・・すみません


「インフル、エンザ? とはなんなんだ?」


 私はシュウタにそう聞いた。


「僕がいた世界、『地球』で大流行した病気でね。 元々は鳥だけがかかる病気だったのが豚を介して人間にまで感染するようになっちゃったんだ。 ほっとくと死んじゃうくらいヤバイ」

「そんな病気があったのか・・・ 治す方法はあるのか?」

「体の中にいるウイルスがいなくならないと治らない、と思う」


 やはりシュウタを連れてきて正解だった。

 私ではまた広範囲回復魔術(エリアヒール)で一時的に治すことしかできなかっただろう。

 原因さえわかれば対処できるはず。

 だが、


 ウイルスってなんだ!?


「ウイルス?」

「そこからか・・・ん~と、菌って分かる?」

「???」

「oh・・・」


 シュウタが両手で顔を覆って(うつむ)いてしまった。

 なんかバカにされてるみたいでイラっとするがここは我慢だ。


「えっとお酒ってどうやって作られてるか知ってる?」

「詳しくは知らないが、確かドワーフ族が作っていてな。 ドワーフ族の中でもごく一部しか契約できないと言われてる酒精霊(しゅせいれい)と一緒に麦や葡萄(ぶどう)を原料にして10日間、酒蔵に(こも)ると完成するらしい。 中で何をしているかは魔王である私にも教えてはくれなかったよ。 それがなにか関係しているのか?」

「やっぱり酒とい言ったらドワーフなんだ・・・。 ていうか精霊がお酒を発酵させてるのかよ!? ・・・まぁ要するに、目に見えないくらい小さな生き物が人の身体に入って悪い作用をすると病気になるんだ」


 シュウタ曰く、世界には目に見えない生き物、菌や微生物というらしいが、そういった生物がいて、色々な現象を引き起こしているのだという。

 食べ物が腐るのも、カビが生えるのも、風邪を引くのだって菌や微生物のせいらしい。


「なんだかよくわからないがとりあえず、そのインフルエンザとかいう病を引き起こしているウイルスを消せば良くなるんだな」

「そうだけど・・・そんなことできるの? 回復魔術(ヒール)系じゃダメだったんでしょ? 表面的にしか回復できないから体内にウイルスが残って病気が再発しちゃったんだと思う」

「う~む、チキュウではどうやって治していたんだ?」

「インフルエンザに効く薬を飲んだり、病気にかかる前に弱体化させた病原菌(ワクチン)を身体に入れて免疫を作って予防したりしてたかな」


 やはりシュウタの世界はかなり文明が進んでいるみたいだ。

 私自身かなり生きているが、インフルエンザなんて病気は初めて聞く。

 さらにその原因であるウイルスというものを発見し、その対策としてウイルスを弱らせて身体に投与するという。

 目に見えないほど小さい物体に手を加える事ができるとは、しかも魔術を一切使わずに、だ。

 私たちの世界では考えられないほど高度な技術力に、私は内心で敗北感に晒された。


「シュウタは薬を作れるのか?」

「ごめん作れない。 どんな成分なのかすら分からないんだ」

「そうか・・・ なにか私たちに出来ることはないか?」

「そうだね・・・マスクして、手洗いうがいをこまめにするしかないかな」

「マスク?」

「口と鼻が隠れるくらいの大きさの布を紐とかで耳に引っ掛けて落ない様にしたものだよ」

「あぁ『口当布(くちあてぬの)』のことか」


 この世界にもあるものが出てきて少しほっとした。

 なんとか対処ができそうだ。

 私は近くにいた医師に声をかけた。


「すぐに口当布を都市全体に配布して着用を義務付けてくれ。 そして手洗い、うがいを徹底させれば事態は収まるはずだ!」

「はっはい! わかりました!」


 医師はすぐさま病院の奥へと走っていった。




「シュウタがいてくれて本当に助かったよ。ありがとう、私では原因すらわからずにまたその場しのぎの広範囲回復魔術(エリアヒール)に頼るしかなかったよ」

「いや、根本的な原因がまだわかってないよ」

「ん? 原因はウイルスによるものなのだろう?」


 私はシュウタの言っている意味がイマイチわかっていなかった。

 ウイルスさえなんとかしてしまえば今回の騒動は解決ではないのか。


「『今まで発生してなかったウイルスがなんで発生したのか』ってこと」

「・・・つまり発生源を突き止めて対処しなければ今後もウイルスが発生してしまう?」

「そういうこと」


 今回この都市『アリア』を襲ったインフルエンザウイルスがいつ、どこで、なぜ発生したのかを調査し、解明しなければ、今後もウイルスが発生してしまう。

 シュウタのおかげで対処方法はわかったが、子どもや高齢者が感染した場合、対処が間に合わずに死亡してしまう可能性だってある。

 折角病の原因が分かっても、それでは意味がないのだ。


「インフルエンザが流行る前になにか変なことは起きなかった?」

「報告書を見た限りではなにもなかったな。 ただ原因すらわかっていなかったからな、たとえ異変があったとしても報告書に書かれなかった可能性が大きい。 一度この都市の冒険者ギルドに行ってみよう」





 眠らない都市『アリア』にある冒険者ギルドの建物は他の都市と比べて少し小さくなっている。

 なぜかというとこの都市に来る冒険者の多くは観光や休息をする為に訪れるため、クエストの受注があまりされないのだ。


 私とシュウタは冒険者ギルドの建物に入った。

 中を見渡すとカウンターに一人、人族で20代前半くらいの受付嬢がいるだけで閑散とした状態だった。

 なんとも寂れた雰囲気になっている。

 受付嬢もよく見ると顔色が悪く、目の下に濃いクマが出来ていた。

 私はとりあえず彼女に声をかけた。


「いらっしゃいませ、冒険者ギルド・アリア支部へようこそ。 すみませんが現在、街の機能が麻痺しているため当ギルドも運営をほぼ中止しております」

「魔王都カトレアからこの都市に起こっている謎の病を調査、対応しに来た者だ。 少し話が聞いたい。 ギルド支部長(マスター)はいるか?」

「魔王都からの使者様でしたか! 来て頂いてありがとうございます! それが・・・支部長(マスター)はこの病が流行り始めた瞬間に「ギルド支部長(マスター)である自分が病に倒れるわけにはいかない」と言って自室から出てこなくなりまして・・・」

「何だよそれ! 職務放棄じゃないか!!」

「・・・ では今回の病について、一番詳しい者は誰かいるか?」

「恐らく、私かと・・・」

「・・・・・・ほかのギルドスタッフは何をしている?」

「ギルド支部長(マスター)が来なくなったらスタッフも次々来なくなりなりました。 もう私しかいなくて・・・すみません」

「・・・ルー。 ギルマスとスタッフをぶん殴りに行こう」

「・・・ああ、この事態が収拾したらな」


 なんと小さいギルドとはいえ、彼女一人だけで運営しているらしい。

 ギルド支部長(マスター)やスタッフたちは彼女にすべてを押し付けて自分たちだけ安全なところで事態が収まるのを待っているのだ。

 私の中で怒りが爆発しそうになる。

 その気持ちを何とか押し込め、私は冒険者ギルドの入り口に『Clause(クローズ)』の看板をかけに行った。


「あの・・・何を? まだ閉店の時間ではないのですが」

「街がこんな状態なのだから大丈夫だ。 それより少し話を聞かせてほしい」

「・・・わかりました。 では応接室に行きましょう」


 そう言って受付嬢は私たちにギルド内にある応接室へと案内してくれた。

 彼女は少しフラつきながらも香りの良い紅茶を用意して、私たちに出してくれた。

 紅茶を飲み、一息ついたタイミングで私は話を切りだした。


「この流行病が発生する前に何か異変はなかったか?」

「異変、ですか。 そうですね・・・そういえば魔物の討伐クエストをしてきた冒険者が森の中で異様に鳥の死体を見つけたと話してました」

「やっぱり、鳥インフルエンザで間違いなさそうだ」

「他には何かあるか?」

「他には・・・その討伐した魔物、オークなんですが、知能が低いので近くに仲間がいてもバラバラに攻撃してきて倒すのにそれほど苦労しないはずなんですが、そのオークたちは連携して攻撃してきたみたいなんです」

「確かにオークの習性ではない行動だな」

「・・・オーク」


 シュウタがなにやら考え込んでいる。


「異変らしい異変はそのくらいでした」

「ありがとう、いい情報が聞けたよ。 キミも今まで無理をさせてしまってすまなかったな」

「いえ、私はギルドスタッフとして当たり前のことをしただけですから!」


 私は彼女に(ねぎら)いの言葉をかけた。

 そして一人になっても健気に頑張ってくれた彼女に私は何かお礼がしたかった。


「その分だとろくに何も食べてないだろう? 温かい食事を食べて、温かい風呂に入ってゆっくり休むといい」

「え?」


 彼女は困惑していたが、私は構わず彼女を連れてアストレア城に転移した。


「!?!? どこここ!??」


 混乱する彼女をそのまま食堂に連れて行き、その辺にいた給仕に指示をする。


「彼女に食事と風呂、それから上質なベッドでの休息をさせるように」

「はい、了解しました、ルフィナ様」

「え? ええ!? ルフィナ様ってあの!?!? でもっ、えっと、そんないいです! 恐れ多い!!」


 彼女は私が魔王ルフィナだと理解しておろおろしながら断ろうとするが無視。


「いいから休め。 キミが頑張ってくれたお礼だ。 十分に疲れが取れたら私の執務室に来てくれ。 ちゃんと寝るんだぞ」

「〜っっ!! ありがっどう!っございまずっ!!」


 彼女は涙を流しながら私に何度も頭を下げた。

 私は彼女の頭を軽く撫でてから食堂を後にした。



 転移ですぐにシュウタのいるところに戻ってきた。


「ルー、お帰り。 たぶんだけどウイルスが発生した原因がわかった」

「本当か! それで、なにが原因なんだ?」

「オーク」

「オーク? 豚か!」

「そう、豚は鳥インフルエンザに感染するんだ。 そして厄介なのがウイルスが豚の体内で変異して人にも感染するようになる」

「そういえばそんなことを言っていたな。 それじゃあ鳥人族以外にも病になる可能性があるのか!?」

「その可能性はあるね。 現状鳥人族しか発症してないからそういう変異をしたんだと思うけど」

「とにかくここら一帯のオークをすべて消し炭にすればいいんだな」

「けっ消し炭!? いや、まぁ手っ取り早くていいけど」


 魔物狩りなら私は大得意なので今日中には終わるだろう。

 私は早速、シュウタを連れて森に向かって出発したのだった。

 さて、受付嬢ちゃんが起きる前に原因を突き止めてさくっと片付けますか。




ギルマスをゲスキャラにしたら受付嬢ちゃんがどんどん健気に頑張っているいい子になっちゃったので保護しました!

キャラが勝手に進化していく謎


ここまでご覧いただきありがとうございます!!

誤字、脱字、感想、ご意見等ありましたら気軽にご連絡ください!


更新は不定期です。 気長にお待ちください。


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