4 久しぶりの再会
登場人物が増えます!
アストレア魔王国。
それは300年前、現魔王ルフィナ=ローレイン=アストレアが世界征服をしたときに建国された国。
元々はアリア王国という、人族が統治する国で、この世界では知らない者はいないほどの大国だった。
そんな大国を潰してしまうのはもったいないのでそのまま魔王国として乗っ取った。
ただ、大きい国というのは往々にして汚職の温床になる。
各地区を担当している貴族の権力が及ぶ範囲が大きくなる為、最初は罪悪感がありながらもちょっとなら、1回だけ、という気持ちで始めてしまう。
そして権力で証拠等を消せるとわかればどんどんエスカレートしていき、気付けば汚職に塗れているという訳だ。
この国を乗っ取った時、汚職常習犯達はまず私に取り入ろうとこの国のありとあらゆる最高級品を寄越してきた。
しかし各貴族たちの収支と支出を調べていくと高級品を買った形跡がまるでない。
問い詰めてみるとなんとも誇らしくこう言うのだ。
「私くらいになるとこの程度の金額なら民から簡単に搾り取れますとも。 魔王様のお力があればこの3倍くらいの額でもいけるのでは?」
ええ、ブチッといきましたとも。
とりあえず、この貴族の首は胴体とおさらばしたとだけ言っておこう。
そして、その件から始まる汚職に塗れたクソどもをあぶり出す日々。
最終的に処刑したのは各地区の統治を任せている貴族の約5割、永久投獄が2割、とりあえずボコボコにしてもう汚職しないと悪魔契約を誓わせたのが1割と合わせて8割もいたのだから腐ってるとしか言いようがなかった。
だがそれで終わらないのが腐った大国の厄介なところ。
腐った部分は刈り取ったが腐りかけの部分残っていた。
汚職貴族の顛末を知っている次期統治者は、当然最初は汚職をしようなどとはしなかった。
なんせバレたらどうなるかわかったものではないから。
だが時が経つにつれて恐怖感というのは薄れていくもので過去の贅沢な暮らしが忘れられず、一人、また一人と脱税や違法行為をし始める。
さて問い詰めてみよう。
「私はやるつもりはなかったんです。 でもあそこの領主の口車に乗せられて!」
「嘘を付くでない! 魔王様、私は悪くありません。こやつからやろうと言って来たのです。」
うん、二人とも処刑だね✩
そんなこんなを各国で繰り返し、300年経った今、やっと汚職のほとんどない世界になったというわけであった。
まさか300年もかかるとは思ってもみなかった。
昔、森林地帯で山火事が起きたときに被害を最小限にする為に、その一帯を吹っ飛ばしたことがあったが、 100年くらいで元通りに再生した。
それに比べて人族は300年、人間の欲深かさは計り知れないなと思ったものだ。
それはまあいいとして私は今、シュウタと一緒に『魔王都カトレア』で街の様子を視察している。
魔王都カトレアは私の城、アストレア城を中心に直径15kmほどある大都市であり、アストレア魔王国の首都になっている。
とても賑やかで活気に溢れているのだが・・・
「お、魔王っ子じゃねえか! 今朝もぎ取ってきたゴリンの実だ、持ってきな!」
八百屋の店主が真っ赤に熟れたゴリンの実を二つ投げてきた。
「あら魔王様、今日は珍しくお連れ様がいらっしゃるのですね。 ウチの店でお昼ご飯食べて行きませんか?
新作のメニューもありますよ!」
この店は確か街で3番目くらいに人気のある飲食店だったはず。
その店先にいた店員らしき女性が満面の笑みで手を振ってこちらを呼んでいる。
「あっ! まおーさまだ!」
「さまだー!」
「この前一緒に遊んでくれてありがとー!」
「とぉー!」
先日視察したときに少しだけ相手をしてやった子供の男の子が走ってきてそのあとから妹の女の子もやってくる。
一通り喋って最後に「また遊んでねー!「遊んでー」」と言いながら走り去っていった。
「ルーって街の人からすごい慕われてるんだな」
「そうか? このくらい普通だと思うが・・・あっ! ゴリンの実をタダでもらうのが普通という意味じゃないからな! いつも断っているんだが投げられるから落とすわけにもいかないし・・・」
「ぷっははは」
「なにがそんなにおかしいんだ!!」
「ごめんごめん。 なんか世界を征服したって言ってたからもっと悪い事してる感じを想像してたんだけど真逆で面白くなっちゃって」
笑うのを堪えているのか肩を震わせながらシュウタはそう言った。
実際のところ、今の世代の人族は私が今まで行ってきた非道の数々をあまり知らない。
というのも人族の寿命が100年にも満たないからだ。
遅く見積もって25歳で子どもを産んだと仮定しても10世代以上代代わりが起こっている。
私が行ってきたことを歴史の資料として本に綴って保管してあるが一般の民にはまず目に触れることはない。
親が子どもに言い伝えるとしても大体途中で尾ひれが付いたり、あやふやになったり、史実と違う様になってしまう。
よって、私に対して民が抱いている印象というのは汚職をなくし魔王都を住みやすくする為に頑張ってくれた人という感じだ。
私は少し気恥ずかしくなったので話題をそらすことにした。
「まあとりあえず、もうお昼だしさっき声をかけてくれた店にでも行くか」
私はシュウタをつれて店に入った。
そこで見知った顔に出会った。
「あれ? ルフィナ様、どうしてここに?」
「ルフィナ様、丁度よかった。 このバカをなんとかしてください」
「バカとはなんだバカとは!」
「そのままの意味です」
私の古くからの友人で最も信頼する部下でもある、リン=レオンハートとクリスティーナ=ハルトマンだ。
リンは私より少し背が高くて紫がかった黒髪を肩に着かないくらいの長さで合わせてある。
髪色と同じ瞳とひと束だけ太ももあたりまで伸ばしている髪が特徴的だ。
クリスティーナ(私やリンはクリスと呼ぶ)はリンと同じかやや高いくらいの身長に白に近い金髪が腰まで伸びている。
スカイブルーの瞳がとてもキレイで私は好きだ。
「相変わらずだね。 二人とも今からご飯? じゃあ一緒に食べようよ」
「やったー! 久しぶりにルフィナ様とご飯だ! これでお昼のご飯代が浮く!」
「こらリン! すみませんルフィナ様。 代金は私たちが払いますので」
「いやいいよ、私に払わせてくれ。 久しぶりに二人に会ったんだから」
二人との偶然の再会に盛り上がっていると横にいたシュウタがそわそわしていた。
そういえば完全に放置していたな。
「リン、クリス、紹介しよう。 今度、私の相談役に任命しようと思っているシュウタだ」
「えっと、はじめまして。 織谷 秀太です。よろしくお願いします。 ていうかルー、相談役ってなに?」
「ルフィナ様が相談役!?っていうか『ルー』!?!?」
「貴様、このお方が誰だかわかっているのか? 灰も残らないくらい灼いてやろうか」
「ちょっとストップストップ! 順を追って説明するから」
焦った。
危うくクリスがシュウタを消し炭にするとこだった。
クリスなら本当にやりかねない。
リンはリンで
「ルフィナ様がウチよりも先に彼氏が・・・いやでもそうと決まったわけでは・・・」
となにかブツブツ言っている。
このままではシュウタの命が危ないので、私はリンとクリスに今までの経緯を簡単に話した。
「つまり、この男は異世界からやってきてこの世界のことは右も左もわからないからルフィナ様が保護したと」
「んで保護するならついでに話し相手兼、ちょとした相談に乗ってもらおうってこと?」
「相談事なら私に話して下さればいいではないですか。 こんな得体の知れない男をルフィナ様の近くに置くわけにはいきません」
「そうだよ水臭いな。 ウチらじゃダメなの?」
うーん困ったな。
まさか友達感覚で話せる人が欲しかった、なんて言ったらこの二人がショックで街半分くらい吹き飛ばしそうだし・・・
当の本人は運ばれてきたご飯を「なんだこれウマー!」と言いながらもりもり食べている。
気楽なヤツめ。
「会話をして信頼されれば異世界の知識と技術を引き出せるからな。 記憶を覗いたところかなり文明が発展していたんだ」
と2割くらい本気の話をしておいた。
「なるほど、分かりました。 ただルフィナ様にもしなにかしでかすようなら容赦なく灼きますので」
「まぁルフィナ様がそれでいいんならウチはいいよ」
どうやらそれで二人は納得してくれたらしい。
「そうだ、二人とも午後から予定あるかな? ちょっと北の山脈に討伐任務が入ってて行ってくるんだけど暇なら来てよ」
「ウチは予定なんもないから付いて行こうかな」
「私も大丈夫です」
そのあとはみんなで雑談をしながら食事を続けた。
「ふう、ご馳走様でした。 じゃあ僕は城に戻っていればいいのかな?」
「いやシュウタも来るんだよ?」
「・・・・・・・・え?」
自分だけご飯食べて帰れると思うなよ?
やっと午前が終わった・・・一日が長いw
ゴリンの実はまぁお察しの通りリンゴです。
ネーミングセンスがないので基本的にアナグラムを用いて名前をつけています。
なんのアナグラムなのか暇な時間にでも考えてみてくださいね!




