3 質問タイム
今回は世界感の説明回です
さて、とりあえずシュウタには服を着替えてもらおう。
なんせよくわからない服を着ているのだ。
白と黒の横線が交互に描かれた模様が上から下まで全部ある。
黒い髪に黒い瞳、少し黄色っぽい肌とまるで髪の毛先から足のつま先まで全部が模様の様なのだ。
これを見たヤツは目が疲れると思う。
シュウタ曰く、
「このパジャマですか、なかなかカッコよくないですか? 囚人服っぽくてお気に入りなんですよ!」
とのこと。
シュウジン服とはなんなのかまったくわからなかったが、この世界にこんなヘンテコな模様の服はないので目立ってしょうがないのだ。
「シュウタ、その服は着替えてもらう。 まぁ君の唯一の持ち物だから取り上げることはしない。 大事にしろ」
「やっぱさすがにパジャマのままじゃダメですよね・・・ ところで僕は今後どうなるんですか? パターン的に政治系のいざこざに巻き込まれる気がするんですが」
む、意外と鋭いのか?
というかパターンとはどういうことなのだろう。
「ないとは言い切れないな。 ただ私個人的にはそんな面倒なことはしたくなから極力関わらせないつもりだ」
そう、シュウタはおそらくこの世界にない技術や知識を持っている。
そんな人物がいるとわかったらどんな手段を使ってでも手に入れようとするヤツが出てきても不思議ではないのだ。
「とりあえずシュウタの部屋を用意させるからそこで私が行くまでゆっくりしていてくれ」
「わかりました。 その間に色々聞きたいことを考えておきます」
「私もそうしておこう」
そう言って私は軍部の会議に向かった。
最近、ようやく私がいなくても会議が進むようになってきた。
この100年間、有能な部下を増やして私の仕事を押し付け・・・、任せようと、育ててきた甲斐があったというものだ。
いくら私が世界征服したといっても300年も経っているんだ。
私が管理しなくてもいい頃合いだろう。
というかぶっちゃけ自由な時間が欲しい。
さて、シュウタのところに行かなければ。
聞きたいことが山ほどあるのだから。
「さて、ではまずシュウタの質問に答えよう」
「それでは遠慮なく。 過去に僕みたいなトリップ、転移者っているんですか?」
「私の知る限りはいない、こんなことは恐らく初めてだろう」
少なくとも私が生まれて以降の450年間はそんな事例など見たことも聞いたこともない。
「そうなんですか、、、ではこの世界に魔法は存在しますか?」
「存在はしているが使える者はいないな。 なんせ神々が扱う技術だからな、我々では扱おうとするだけで体が崩壊する。 我々が使うのは魔術と呼ばれるものだ」
この世界で生きるものは大抵魔術を扱うことができる。
魔法は世界の理事態に作用させるもので、その力は星を消滅させることもできるほどだとか。
「魔術ですか。 術式的なものを作って魔法に近い現象を起こすって感じですか? では魔術で動いている道具ってあるんですか?」
「その理解で大方合っている。 魔法に近い、ではなく魔法の力の一部を引き出すというのが正しいな。 発動方法も2種類あるがまあまた今度説明しよう。 稀に魔術を発動できないほど魔力が少ない者がいるが、魔術式を道具に封印して魔力を注げば扱える魔導具『シジロマッキナ』というものがあるので生活には困らない」
魔術を発動させるには術式の理解と魔力の精密な操作、一定以上の魔力量が求められるので子供や魔力が少ない者には発動できない。
そこで生活に役立つ簡単な魔術は魔導具にして誰でも扱えるようにしている。
例えば料理をするときに『火を灯し続ける』ことや『部屋を明るくする光を放つ』などは生活必需品になっている。
「魔導具はあるのか・・・それならこの世界の技術水準は高い気が・・・」
何やらシュウタがブツブツと独りごとを言っている。
おそらく自分の知識と照らし合わせてこの世界がどの程度向こうの世界と違うのかを考えているのだろう。
「あ、そういえばルフィナさんが言ってた世界を管理しているってどういうことですか?」
「ん? 言っていなかったか、私は魔王としてこの世界を征服したんだ。 そして300年間、統治し続けている」
「まっ魔王様なんですか!? というかじゃあこの世界で1番偉い人ってことですか!? 僕、結構失礼な態度とってましたよね・・・すみません」
「あぁ別に謝らなくてもいいぞ。 むしろ畏まらなくてもっと気軽に話してくれていいんだぞ?」
「いやいやそんな恐れ多いです。 世界の王様にタメ語とか使えないですよ!」
むぅ、せっかく政治や世界に関係ない気軽に話せる人物を見つけたのにお互い敬語というのもなにか違うな。
ここは魔王の権限を使って強制的にでも気軽になってもらうか。
「とにかくこの堅っ苦しい喋り方は私の前では禁止にしよう。 これは魔王命令ということで」
「うっ分かりま・・・わかったよルー」
「!? ルっ、ルーとは私のことか?」
そんな呼ばれ方をされたのは私がまだ子供の頃だぞ!?
「他に誰がいるんだ。 気軽にってことは友達感覚でいいのかなって思ったからなんかあだ名というか愛称みたいので呼んでみたんだけど、やめたほうがいいかな?」
「そっそんなことはない。 うん、ルー・・・ルーでいいぞ!」
私はそう言いながらシュウタから顔を背けてしまった。
たぶん私の顔は真っ赤になっているだろうから。
それほど気恥ずかしかったのだ。
私が友と呼べる者はもう数える程しかいないので、友人のように接してもらう機会などほとんどない。
その為、愛称で呼ばれたことなどここ350年程なかったので耐性がなかったのだ。
「ゴホン・・・では今度は私の番だな。 シュウタは向こうの世界でどんなことをしていたんだ?」
気を取り直してシュウタのことや向こうの世界について聞いてみる。
「向こうの世界、地球のことか・・・うーん普通に仕事して休みに漫画読んだり、遊びに行ったり、その時にやりたいことをなんでもやってた感じかな」
「地球というのか。 とても自由な生活ができるんだな。 まんがとはシュウタの記憶を見たときに読んでいたアレか?」
「そうそうアレだよ。 うっ、記憶を見られてる時のゾワゾワ感はトラウマものだよ・・・」
「あれだけしっかりと描かれた絵の本を持っているとはシュウタはかなりの金持ちだったのか」
本というのは基本的に高い。
文字を書くだけでも大変なのに、絵を描くなど正気とは思えない。
「いやいや僕全然お金なかったよ、漫画はそんなに高くないからつい買っちゃうんだよ」
「そうなのか、本というのは高価なものなんだが地球では違うのか。 それだけでも驚きだ」
やはり文明の発展の仕方に相当差があるらしい。
文明といえば、
「そういえばシュウタは魔術のことが気になってたみたいだけど、もしかして地球では魔術の技術はあまり発展してないのか?」
シュウタの反応を観察する限り、地球に魔術の技術はそれほど高くないように見られる。
「あまり、というかまったくないかな。 地球には魔術、というより魔力がないと思う。 もしかしたらあるかも知れないけど発見されてない」
え?
どういうことだ、魔力がないということは火を起こしたり、部屋を明るくする光とかはどうしているんだろう。
「地球は基本的に電気を使って生活してるんだ」
「電気? 電気ってつまり雷のことだよね。 あれってビリビリするだけじゃないのか?」
「うん雷をビリビリするだけって表現する時点でルーが常識はずれなのはわかった」
「なっ!?失礼な!」
今のどこに常識はずれの部分があったというのだ!
雷なんて当たっても体がビリビリしてちょっと動きにくくなるだけじゃないか。
そんなものを使って生活が成り立つのだろうか。
「魔王様、そろそろ王都視察のお時間です」
私が雷のことについて考えていると、部屋の入口で控えていた侍女が入ってきてそう言った。
「おお、もうそんな時間か。 シュウタ、続きはまた今度じっくり話そう。 今から街の視察に行くからシュウタも一緒に行くぞ」
「え、僕も行くの? まあこの世界がどんな感じなのか見てみたかったから丁度いいけど」
雷の話はまた今度じっくり聞くとして、今は仕事もこなさなくては。
はぁ、早く自由な時間が欲しいな・・・
やっと王都に出られる!文才がないのでなかなか話が進まない・・・




