19 平和を守る者
やっと書けた・・・
一日更新とかされてる人を見ると自分のスピードの遅さがひどくて泣けてきます。
どうしてそうなった。
私は魔術を構築している間に起った出来事について考える。
ヴェルフェンとアペルドに古代龍の足止めを頼んだはずが、なぜか討伐しているという謎。
まったくもって意味が分からない。
いやまぁできるなら討伐してくれてたほうが楽だなとは思ってたが、まさか本当に倒してしまうとは。
しかもヴェルフェン1人で。
あんな剣を持ってたなんて知らなかった。
まぁ対人用ではなさそうだから使う機会なんてほとんどなかっただろう。
「だぁっはっはっはっ!! 前から『山崩し』を一回投げてみたかったんだよなっ!! おっちゃんもまだまだ現役でイケそうじゃねえか?」
やっぱり。
「なんだまた私にけちょんけちょんにされたいのか。 いつでも相手にしてやるぞ?」
「だが店が忙しいしもう嫁と子供がいるから危険なことはしてらんねぇな!!」
バッと目線を反らしながらそんなことを言うヴェルフェン。
なんだつまらん。
お、やっと魔術構築が完成した。
「んじゃさっさと店に戻って営業再開しないとな!」
そう言いながら私は対戦場魔術を発動し始める。
ヴェルフェンは「もう今日は店開けなくてもよくね? オレ頑張ったよな?」とか言っているが無視。
「この手に宿すは星の力。 全てを飲み込む暗黒の扉を開く者なり!!」
詠唱とともに、魔物が出てくる召喚術陣を囲むように造った魔術陣の中心に小さな『黒い点』ができる。
「これで終わり!! 対戦場星霊魔術『ワールド・エンド・ダークホール』!!!」
『黒い点』は魔術の発動と同時に直径20mの大きな穴になった。
穴の奥には何も見えない。
ただ暗闇があるだけでその先には何も存在していないのだ。
そしてその穴『ダークホール』は周辺にある全てのものを勢いよく吸い込み始め、うんざりするほどいる魔物の数をどんどん減らしていく。
周りの大気も吸い込んでいるのでダークホールに向かって暴風が発生していて、効果範囲外の私たちですら気を抜くと引き込まれそうになる。
魔物たちは少しでも中心から逃げようとするが効果範囲内は当然のごとく引き寄せる力のほうが強いので、抵抗虚しく暗闇の中へと消えていく。
ならばと発動者である私を攻撃して術の強制停止を狙おうと攻撃を仕掛けてくるが、文字通り『全て』を引き寄せているダークホールは魔物たちが発射した攻撃魔術をも吸い込んでいき、私に届くものは何一つなかった。
「おいヴェルフェン! あのデカい剣なんとかしないと古代龍と一緒に吸い込まれるぞ!!」
「だいぶ地中深くまで刺さってるから大丈夫だと思うぜ? あとオレぁ今魔力切れ寸前だから何にもできねぇってのが正直なとこなんだ」
「吸い込んでも文句言うなよ」
私たちが話している間も吸い込まれる力は衰えず、ついには地面までめくれ始める。
古代龍の身体も浮き始め、剣を伝ってずるずると登っていく。
なかなかにシュールな光景だ。
と、魔物を召喚し続けていた元凶である魔剣『フォースイーター』が刺さっている地面がめくれ、暗闇の中へと消えていく。
すると今まで無尽蔵に魔物を吐き出していた召喚術陣が消滅した。
あとはダークホールで魔物を吸い尽くすのみである。
これで街に危険が及ぶことはないだろう。
あとは古代龍をどう処理するかだな。
現状、剣の柄に引っかかって吸い込めない。
傷口から血がドバドバ流れ出て上に登っていくのが見える。
なんか牛や豚の血抜きしてるみたいだな。
光景が上下逆さまだけど。
・・・ん? 血抜き?
「・・・よし食うか」
「「「は?」」」
私以外全員が見事にハモった。
実はあまり知られていないが、龍種の肉はとてもうまい。
雑食性である龍種は自然界において絶対的な力を持っているので基本的にどんなものでも食べる。
森の果物から柔らかくてうまい子牛まで本当になんでも食べるため、深みがあるのにさわやかで、しつこくない脂と肉の旨味が凝縮された『隠れ絶品食材』として有名なのである。
ただし『龍種を討伐できる実力がある者』のみの中で、だが。
話が逸れたが正直、超広範囲魔術を維持し続けるのはそろそろ限界だ。
だが古代龍は剣に刺さったまま。
他の魔物はほぼ吸い込んだのでどうにでもなる。
ならばせっかくの隠れ絶品食材の龍肉を暗闇へと葬るより、みんなで食べたほうがいい。
しかも古代龍となれば一体どんな味なのか、想像すらできない。
ということで、私は魔術に供給している魔力を止めた。
すると展開していたダークホールが徐々に小さくなっていき、虚空に消えていった。
ズドオオォォォン!!
上に引っ張られていた古代龍の身体が地面に落下する。
辺り一面に見えるのは巨剣『山崩し』と、剣に刺さったままの古代龍、そしてクレーター状に抉れた大地だけだった。
「なんだ魔王っ子、魔力切れか?」
「切れてないし。 維持が面倒くさかっただけだし」
「てかさっき食うとか言ってたが、もしかしてあの龍をか!?」
「その通り。 あんまり知られてないけど龍種ってめちゃくちゃ美味しいんだよ」
「魔王ってのは恐ろしいな。 まさか龍種すら食材としてしか見えないのか」
「おいそこの残念勇者、私をそんな目で見るな」
「ルー、そんなにお腹空いてるの? あれは流石に食べきれないと思うんだけど・・・」
「シュウタ、確かにお腹は空いてるが私1人で食べるとは言ってないぞ」
みんな好き勝手言いやがってこんちくしょう。
なんか私に対するイメージがよくわからないことになってないか?
「魔物も粗方片付いたしもういいだろう。 それにせっかく『勇者』が古代龍を倒したんだし、街の危機を救った祝いの宴でも開けば新しい伝説でもできるんじゃないかと思ってな」
「とか言って本当はあの巨体の処理に困ったからみんなで食べて片付けようとしてるんでしょ?」
「シュウタ、余計な詮索は身を滅ぼすよ?」
「すいませんでした。 宴めっちゃ楽しみです!!」
よろしい。
とりあえずユリアに宴を開くと念話で伝えておくか。
『ユリアか? 勇者との決闘は終わった。 土産に古代龍の肉を手に入れたから街のみんなで食べようと思う。 宴を開く準備をしておいてくれ』
『はぅええぇぇ!!!?!? 古代龍!?!? ええっと、はい、わかり・・・まし、た?』
よしこれで北の山脈の一件解決かな?
・・・あれ、なんか忘れてないか?
「魔王ルフィナ、完敗だ。 オレの力量ではあなたの足元にも及んでいない。 それと世界を恐怖で支配しているという発言を取り消させてくれ。 街を全力で守るあなたを見て、力で支配するような人物でないと思い知らされた。 全て、オレの勘違いだったようだ。 迷惑をかけてすまなかった。」
あ、そうか。
私は『解放の勇者』から勝負を挑まれて戦ってたんだった。
「わっ、分かって頂いてよかった。 もしよかったらこれから宴を開くからぜひ参加してくれ」
「お心遣いに感謝します。 ですがオレは勇者であるという驕りから街の人々に迷惑をかけた。 今更会わせる顔がありません。 それに自分の未熟さを改めて自覚したので一刻も早く修行の旅に出たいのです」
「そうか。 まぁ無理には引き止めないさ。 あ、忠告だがくれぐれも無造作に刺さっているからといってその辺にある剣を引っこ抜くんじゃないぞ」
「肝に銘じておきます」
そういって、アペルドは去って行った。
「あれ、アペルドさん行っちゃったの? よかったのルー?」
「本人がいいって言ってるんだから強制はしないさ。 そんなことよりシュウタ。 私は君に聞かなくちゃいけないことがある」
「ん? どうしたのさ急に」
「私のおやつについてだ」
「!!!?!?!?」
私は笑顔で横を見る。
そこには汗をダラダラと流して顔を引き攣らせるシュウタの姿があった。
と、ここで念話の反応を受信した。
『すみませんルフィナ様、 ユリアです。 ルフィナ様が決闘をされている間に目を通して頂きたい書類が文字通り山になっています。 あと政策関係の相談事も多数来ています。 このままだと宴が開催できませんので至急お戻りください!』
『・・・わかった、シュウタとOHANASHIをしたらすぐ戻る』
ユリアの報告を聞いて私は念話を切る。
「さて、シュウタ、話を・・・」
改めて横を向くと、そこにすでに誰もいなかった。
視線をヴェルフェンに向けるとスッと街の方に指を指したので、目で追って見ると全力で逃げるシュウタの姿があった。
「逃がすか!!!!」
私はシュウタを追いかけるために走り出した。
私から逃げれると思うなよ!!!
「だぁっはっはっはっは!!! 魔王っ子もシュウ坊もまだまだ元気だなっ!!」
さっきまで街が消滅するかもしれない危機的状況だったのに、それが嘘のように賑やかな日常が戻ってくる。
これも魔王が頑張って世界を平和に保っているからかもしれない。
『ルフィナさまぁ~!! 書類が! 書類が崩れるっ!!! 』
「くそぅ世界なんて征服するんじゃなかった!! 誰か代わってくれ!!!」
ここで一旦お話しは終わりにしたいと思います。
ここまでご覧頂きありがとうございました!
もしかしたらちょこちょこ更新するかもしれませんw




