18 おっちゃん、無双する。
久しぶりの更新!
私が対戦場魔術を構築する間、おやじことヴェルフェンと『解放の勇者』アペルドに魔物の足止めをお願いしているのだが・・・。
「だぁぁっはっはっは!! 久しぶりに思いっきりぶん投げれるぜぇ!! オラオラオラオラオラッ!!!」
なんかテンションがおかしいヤツがいる。
ヴェルフェンは一投につき2、3本の剣を凄まじい勢いでぶん投げている。
軽く音速は越えているんじゃないか?
最下位とはいえ竜種であるレッサーワイバーンの眉間に剣が深々と刺さっているし。
竜種特有の鱗はとても硬く、ただの剣では傷すら付かないはずなんだけどな。
アペルドも口を開けて唖然としてるし。
「ていうかアペルド殿は地上の魔物担当なのでは? 倒しに行かなくてもいいのか?」
「オレも行くつもりだったのだが上空の魔物担当の店主殿が撃ち落とした魔物がその・・・なんだ、地上に降り注いでいてな。 まとめて押し潰されてこちらに来ないんだ」
「あぁ・・・まあ、うん。 お疲れさま」
んじゃまぁ魔力も練れたし、いっちょデカいヤツをぶっ放しますか。
「お~いヴェルフェン! 剣はまだ残ってるか?」
「おう! あと1000本くらいだな。 2分くらいでなくなるぜっ!!」
「おっけ~。 んじゃ投げ切ったら魔術発動させるから退避してくれ!」
「了解っ!!」
なんかアペルドが「2分で1000本投げるって・・・投げるって・・・」とブツブツ言っているがとりあえず放置する。
シュウタも「おっちゃん・・・楽しそうだな~・・・」と死んだ魚の目をしながら遠くを見ていたが、これも放置。
私は魔術の構築に入る。
「我の問いかけに応えよ、星の精霊! 全てを引き寄せ、集め、蒐め、無に帰する力をこの手に!」
久しぶりに詠唱するからちょっと緊張するな。
私が使おうとしているのは『重力魔術』だ。
上位の魔術師なら扱える魔術だが、制御が難しく使いこなせる者は少ない。
応用の利く、とても便利な魔術なんだけどな。
詠唱とともに、魔剣『フォースイーター』を中心に魔物が発生している召喚術陣に被せるように魔術陣を構築し、座標の固定化を行う。
「なんて広さの魔術陣なんだ・・・。 こんなの街が丸ごと収まる大きさだぞ! これが魔王が魔王たる所以か」
「ハハハ・・・ファンタジーだ・・・絶対に怒らせないようにしなきゃ。 ルーのおやつ勝手に食べたこと黙っておこう」
「シュウタ聞えてるぞ。 後でゆっくり話そうか」
「なん・・・だと!!?」
「おい魔王っ子! なんかやべぇのが出てくるぞ!!」
シュウタとOHANASHIすることが決定したとき、ヴェルフェンが少し慌てた様子で叫びながら召喚術陣を見ている。
そちらの方を目で追って見ると、そこには100m級の超大型ドラゴンが出てくる途中だった。
てかマジかよ。
「ギャアアアオオオオオオオッッ!!!!」
うん、こっち見てる見てる。
めっちゃ威嚇してる。
完全にターゲットになってるわ。
「古代龍!?!? なんてものまで出てくるんだ!!??」
「ドラゴン観るの憧れだったけどリアルで観ると絶望しかないわ。 あれはアカン、どうにもならん。 地球に存在しなくてよかったわ」
チキュウにはいないのか。
平和そうな世界で羨ましい限りだ。
と、現実逃避してる場合じゃない。
「今私は魔術構築で手が離せない! アペルド殿かヴェルフェン! どっちでもいいから何とかあのトカゲをあの場所に釘付けにしとけ!! 私の魔術でまとめて消す!!」
「おう任せとけっ! おい勇者の小僧! あのトカゲを足止めできる手段なんかあるかぁ?」
「あるわけないだろう!?!? アレは少なく見積もってもオーバーSクラスの化物だぞ!?」
「なんでぇそんなんで魔王っ子に勝負挑んだのか? それじゃぁまず勝てねぇぞ! おっちゃんが勇者ってのがどんななのか教えてやる!」
そういってヴェルフェンは召喚術陣を発動する。
出てきたのは紅い魔槍と鎖付きの魔剣。
「魔槍と魔剣か。 どんな能力があるかわからないがその程度の武器では古代龍には傷すら付かないぞ」
「普通はそうだな。 だからこうするんだよ!」
ヴェルフェンは自身たっぷりに紅い魔槍を全力で投げた。
古代龍のいる場所のはるか東へと。
「どこに投げてるんだ!?」
アペルドが思わずツッコミをした。
魔槍には加速の効果が付与されておりどんどん加速していく。
そしてついに見えなくなっていった。
「ギャアアアオオオオ!!!!!」
アペルドと同様に魔槍が飛んで行った方向を唖然としながら見ていた古代龍は、はっ!と思い出したようにこちらに向き直り、威嚇の咆哮を放った。
と次の瞬間、
「ギャオアッ!!?!?!?」
いきなり古代龍の顔が真横にぶっ飛ぶ。
『何か』が視認できない程のスピードでぶつかったのだ。
「ギャアア!!?? グァァオオ!! アアオオオォォ!!?」
「なっ!!」
アペルドが目を見開いている。
無理もないだろう、何せ古代龍の左目に、ヴェルフェンが投げた紅い魔槍が刺さっていたのだから。
古代龍は痛みでその場でのた打ち回っている。
そのチャンスを逃さず、ヴェルフェンはもう1つの鎖付きの魔剣を投げる。
この魔剣は鎖の部分がどこまでも伸びるという効果が付与されている。
そして魔力を伝達させることによりある程度の軌道修正も可能なのである。
投げた魔剣はヴェルフェンの操作により古代龍の周囲をぐるぐる周り、鎖で雁字搦めにしていく。
「おっしゃ捕まえたぜっ!!」
「すっすごい! おっちゃんカッコいい!!」
「これが勇者が持つ本当の力・・・。 オレ程度が勇者を名乗っていたなんて、なんて恥ずかしいんだ」
「おい勇者の小僧、この鎖ちょいと持っててくれや」
「へ? ・・・へぁ!?!? ちょっ!! これどうすればっ!!?」
勇者の力を目の当たりにして恥ずかしがっているアペルドに、ヴェルフェンはおもむろに鎖を渡した。
あまりにも自然に渡されたのでつい受け取ってしまったアペルドは、素っ頓狂な声を上げながらテンパっている。
そんなアペルドを放置してヴェルフェンは真上に大ジャンプした。
ぐんぐん上昇していくヴェルフェン。
上昇中に大型転移魔術を発動する。
そこから出てきたのは、剣と呼ぶには些か疑問が残るほどの巨大な剣。
その全長はなんと約20m!!
その剣の柄を持ちながら、ヴェルフェンは高らかに言う。
「こいつぶっ刺しとけば動けねぇだろ!!!」
そして上昇が止まったところで巨剣「山崩し」を全身全霊を持って投げ落とす!
衝撃波を出して音速で飛んでいく巨剣。
目に刺さった魔槍と鎖のせいで動けない古代龍は避けることもできない。
ズドォォォォンン!!!!!
凄まじい音と衝撃で地面がめくれ、土煙が舞う。
煙が風に流れていくとそこには巨剣「山崩し」が深々と胴体に刺さり、ピクリとも動かなくなった古代龍の姿があった。
ギルドが定める魔物のランク
オーバーSランク・・・その魔物が単体で国を滅ぼすことのできる程度の強さ
Sランク・・・その魔物が単体で街を壊滅させることのできる程度の強さ
Aランク・・・その魔物が3体以上で街を壊滅させることが出来る程度の強さ
もしくは単体で村を壊滅させることが出来る程度の強さ
Bランク・・・その魔物が3体以上で村を壊滅させることのできる程度の強さ
Cランク・・・その魔物に一般人が遭遇した場合、確実に死亡する
Dランク・・・その魔物に一般人が遭遇した場合、7割の可能性で死亡する
Eランク・・・その魔物に一般人が遭遇した場合、2割の可能性で死亡する
Fランク・・・その魔物に一般人が遭遇した場合、死亡する可能性はなく、容易に討伐することができる
となっています。
参考にしてください。
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