16 言い出しっぺの法則
ちょっと短めです。
タイトルを変更しました。
今後ともよろしくお願いします!
「そこの赤髪! 魔王ルフィナ=ローレイン=アストレアだな。 オレは『解放の勇者』アペルドだ。 お前を倒し、オレが世界を魔王の支配から解放する! オレと勝負しやがれ!!」
そう言って私に宣言したのは今回の騒動を起こした張本人、『解放の勇者』だった。
ちょっと勇者について情報を集めるだけのつもりがまさか本人に遭遇してしまうとは。
「いきなりなんですかあなたは! ルフィナ様に失礼ですよ!」
「別にいいよユリア。 あぁ~、アぺルドさん? 初めまして。 確かに私が魔王ルフィナだ。 勝負するのは構わないが『支配から解放』というのはどういうことだ?」
「決まっている! お前は世界を征服し、世界中の人々を虐殺して自分が住みやすいように改変した! そして今も絶対的な力で世界を恐怖で支配しているではないか!! 実際さっきもそこの八百屋の店主からゴリンの実を無理やり要求したではないか!!」
「「は?」」
アぺルドは八百屋のおやじを指指しながらテンション高く言い放った。
私とユリアは、勇者のあまりにも素っ頓狂な発言に目を丸くした。
こいつはなにを言ってんだ?
どこをどう見たら、私がおやじをカツアゲしたように見えるんだ!
むしろこっちが毎回無理やり渡されてるんだが・・・。
「ルフィナ様がそんなことする訳ないじゃないですか!!」
「ああ、私がおやじにそんなことする意味もないしな。 それに世界を征服した頃なら多少手荒なこともしたが、今は恐怖で支配なんてしてもいない」
「やはり昔はしていたのか! つまり恐怖を植え付けさせ、代々、魔王に逆らわないように民を教育していたということだな! おのれ魔王め! 許せん!!」
「「・・・」」
やばいこいつ人の話全然聞かねえ。
しかもなんか妄想力半端ないんですけど・・・。
今にも私に切り掛かってきそうな勢いで私を罵倒する勇者。
おそらく、ここが街中ではなく平原とかだったら間違いなくバトル開始だっただろう。
ああもう面倒くさい。
とにかく、一旦この場を離れよう。
「とりあえず、勇者殿の言いたいことはわかった。 だが私も忙しくてね。一対一で戦ってやるから場所と時間を変えよう。 そうだな、明日の正午に街の城壁の外、『ライラ平原』で決闘を受けようじゃないか」
「ふん! 怖気づいたか! どうせ城の中でふんぞり返ってあれをしろこれをしろと命令しているだけだろうが! まあいい、最後の晩餐でも楽しむがいいさ!」
このやろう・・・。
勇者は捨て台詞を高らかに言って去っていった。
残された私とユリアは唖然としながらその場に立ち尽くしていると、八百屋のおやじが話しかけてきた。
「なんだか大変なことになってきたなぁ~魔王っ子」
「うるさい! なんでこう、勇者ってのは面倒なヤツが多いんだ!」
「まあ世界なんて管理してんだから変な輩の一人や二人我慢しな!」
「お前が言うな!」
「だぁぁぁっはっはっはっはっ!!!」
「ルフィナ様と店主さんは仲がいいんですねぇ」
おいユリア、一回医者に眼を診てもらうことを勧めるよ。
私たちはとりあえず城に帰ってきた。
勇者の件以外にもやらないといけない仕事は山ほどあるからな。
私は自分の執務室に戻り書類仕事をこなしながら勇者との決闘について考える。
基本的に決闘するのはいいのだが殺すまでやるのか、戦闘不能にしたら勝ちなのか等、詳細を決めてなかったな。
個人的にはあまり殺生はしたくないというのが本音ではある。
普通、決闘しようってなった場合はどっちなんだろう?
リンが詳しかったはずだが生憎リンとクリスは、この前地竜がいた北の山脈『プルアス山脈』にて、また魔物が大量発生しているということで討伐に向かっていたんだったな。
あそこの山脈は最近どうも変なことが立て続けに起きている。
原因の調査も近々しないといけないな。
おっと思考が逸れた。
とりあえず役職的には『相談役』にしてあるシュウタにでも聞いてみるか。
一般人の意見も聞きたいしね。
部屋にシュウタを呼んで勇者について説明をしたら、シュウタは開口一番こう言った。
「なにそのゲームに出てくるような勇者」
「ゲーム、とは何だ? ニホンにも勇者が存在したのか?」
「あぁ~なんて説明すればいいのかな。 人が想像で作ったお話し、かな? まあその中に登場する勇者そっくりなんだけど、確かにゲームのプレイ中は疑問に思わなかったけど、実際に家のタンス勝手に調べるとか犯罪だな」
「まあそんな訳でシュウタの意見が聞きたいんだ」
「どんな訳だよ! なんでこの世界の住人じゃない僕に聞くんだ・・・。 僕の常識だとそもそも決闘自体ほとんどしないことだし」
「そうなのか? ニホンは平和な国だったんだな~」
決闘をほとんどしないなんて、争い事をどうやって解決しているんだろう?
話し合いとかなら恐ろしく時間がかかりそうだな。
「まあでもなんでもありの格闘技試合みたいなものでしょ? なら審判が決闘に立ち会って勝敗を決めればいいんじゃないの?」
「なるほど、どちらの味方でもないヤツが客観的に見て決めるのか。 んじゃそれ採用で」
「ん?」
「いやだからその案を採用するから審判探してきて」
「いやなんで僕が!?!?」
「言い出しっぺの法則」
「この世界にもそれあるのかよ!!!」
よし、これで決闘に関しては何とかなりそうだな!
何かやろうぜ!って言ったヤツがなにからなにまでやることになる法則!
ただし上司が言った場合は部下にしわ寄せがくる
世知辛い世の中だ。
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