15 勇者参上!
お待たせしました。
久しぶりの更新です!
みなさんこんにちわ。
私はルフィナ=ローレイン=アストレア、『魔王』やってます。
あることがきっかけで世界征服することになり、本当に征服してしまいました。
そのせいで世界の管理なんかをしてますが、これがまた面倒くさい、とてつもなく面倒くさい。
その中でも一際面倒くさいイベント(?)がやってきてしまったようだ。
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「ルフィナ様、街の住民から苦情が届いています。 それもすごい数です」
そう言って苦情の紙束を私の机に置くのは侍女として最近勤務している人族のユリアだ。
それにしてもこの苦情の多さ、心当たりが・・・。
「・・・内容は?」
「それが・・・勇者が出たとか」
やっぱりか・・・。
『勇者』
それはこの世界で稀によく現れる、『1つの能力に特化した存在』のことである。
数十年に1人くらい現れるので人族からしたら稀なのだが、私からしたら魔王になってからの300年間で何人勇者を見たことか。
『稀だがよく現れる』、それが勇者である。
勇者の能力は様々で、剣技や魔力といったものから視力や味覚、健康なんてものまでいたのには笑った。
勿論、身体能力も格段に高い。
リンがこの前倒した地竜と互角に戦える程度には身体能力があるのだ。
そして勇者はその能力を使い、何故だか私、つまりは『魔王』を倒しに来るのだ。
その過程で様々な厄介事を発生させ、今回のように一般市民から城に何とかしてくれと苦情が殺到するのだ。
「今回の勇者は何に特化してるんだ?」
「それが・・・」
「うん? なにかとんでもない能力なのか?」
「いえ、そういう訳ではないんですが・・・」
「なんだやけに濁すじゃないか。 勿体ぶらずに早く言ってくれ」
「実は、今回の勇者の特化能力は『開放』だそうです。 よく分からない能力ですよね」
「『開放』・・・ヤバイヤツだわそれ」
「え?」
またとんでも能力を持ったものだ。
『開放』というのはいろんなものに適応してしまう。
例えば宝箱、例えば家の鍵、例えば・・・”人の心”
どこまでその能力が有効かはわからないが、仮にも『勇者』なのだから相当な力であるはずだ。
私は苦情の内容に目を通す。
どうやら民家の玄関を能力で開錠して勝手に侵入し、タンスや花瓶の中を探し回って現金や回復薬といった物を持ち去っていくらしい。
開放の能力で宝箱や金庫すら開錠してしまうため被害が出る一方なのだとか。
その他にも宿屋に勝手に泊まったり、武器屋に素材は準備したから最強防具を作れと依頼したりと、やりたい放題している。
しかも、
「オレは勇者なんだから別にいいだろ? むしろ魔王を倒してみんなを救うんだから感謝して欲しいくらいさ!」
とデタラメなことを宣ったという。
なんとも自分勝手な言い分だ。
自分の心までも『開放』しているのだろうか。
そのほかの苦情も大体同じような内容だった。
一応、人の心に干渉するようなことはしていないようだ。
とにかく勇者は毎回面倒くさいヤツが多いが今回のはとびっきり級の面倒くささだ。
「それで、やっぱり私を倒すとかなんとか言ってるのか?」
「はい、そのつもりのようです。 すでにこの街に入っているそうです」
これは近いうちに勇者と遭遇することになりそうだ。
まあ遭遇したならしたで丁度いい。
今回の勇者の人となりを観察するのも悪くないかとも思う。
正直な話、世界征服してすでに300年も経っているのだ。
そろそろ誰か私に代わって世界の管理を任せたいのである。
私を倒すなり交渉するなりしてくれと言いたい。
ただし、管理を任せた途端に世界が破綻したり、世界大戦が勃発したりする可能性があれば全力で潰すがな。
そういったことから、今までの勇者は不合格として返り討ちにしてきたのだ。
そしてなぜか私に負けた後、魔王都カトレアは住み心地がいいと言って住み着いてしまうヤツが多い。
なので魔王都カトレアには『元勇者』が結構いるのだ。
その『元勇者』が『新勇者』を私に挑むのに相応しいかどうかをテストしているらしく、私にすら辿りつけない新勇者もいるのだとか。
まあ私が振るいにかける手間が少なくなるので黙認しているんだけど。
とりあえず、その勇者くんがどんな人物か見に行ってみるとするかな。
「わかった、報告ありがとう。 後で街の様子を見に行くから注意しておくよ」
「ではその時は私もお供いたします!」
「ああ、お願いしようかな」
そのあとも一通り報告を聞き、事務作業に勤しむ私であった。
お昼ご飯を食べ終え、事務作業がひと段落したので、私は街に行くことにした。
本来、魔王である私自らが街に行って様子を確認する必要はない。
というか幹部たちからはホイホイ出歩くなと怒られるのだ。
だがこれは私の趣味みたいなものなのでやめるつもりはない。
城の中でずっと過ごしているのは性分に合わないのだ。
「ユリア、そろそろ街に行くぞ」
「はい、ではすぐ準備します」
ユリアに声をかけてから街へ行く。
取り合えず勇者の情報を集めてみよう。
私はユリアを引き連れて商業区へ向かった。
「よぅ~魔王っ子! 相変わらずちっせぇな! 今日はユリアちゃんも一緒かい? おやつにゴリンの実でも食べて気合入れなっ!!」
大通りを歩いていると八百屋のおやじがゴリンの実を2つ投げながら挨拶してきた。
ここのおやじは私を見つけるとよく何かを投げてくる。
この前、おやじが「寒い時期はやっぱり鍋が一番だな! ほら! 白菜持っていきなっ!」とか言って丸々1つぶん投げてきた時には本気で殴ろうかと思った。
「いい加減魔王っ子って言うのやめろ! 奥さんにあんたの恥ずかしい珍事件の数々教えるぞ!」
「おいそれだけは勘弁してくれっ!!」
とりあえずゴリンの実をキャッチしてユリアに手渡してからおやじに一応礼を言う。
ついでに勇者について聞いてみよう。
「そういえば最近勇者が現れたらしいけどおやじは何か知ってるか?」
「おう噂の新勇者の事かい。 そうだな~、なんでも人の家に勝手にあがって物取ってくって話だぜ?」
「やはり報告書の通りか。 見たことはあるか?」
「ああ、しょっちゅうこの辺に来るぜ。 俺の店にも来て買い物してったぞ。 大体今の時間くらい・・・に・・・あっ」
「ん? どうした?」
おやじがしゃべっている途中で私の後ろに視線が行った途端、石像の如く固まってしまった。
私は不審に思って振り返ってみると、そこには長身金髪で整った顔立ち、職人にオーダーメイドで作ってもらったと思われる最高クラスの防具、そして禍々しい魔力を放つ剣を装備した、20歳前後の男がいた。
あの剣どっかで見たことあるような・・・、どこだったかな~?
男はこちらに気付くと駆け寄ってくる。
嫌な予感しかしない。
「そこの赤髪! 魔王ルフィナ=ローレイン=アストレアだな。 オレは『勇者』アペルトだ。 お前を倒し、オレが世界を魔王の支配から解放する! オレと勝負しやがれ!!」
まさか早速遭遇してしまうとは。
その男は『解放の勇者』その人だった。
改めて毎日更新している人の執筆速度に驚きました。
一体どうやってるんだ・・・
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