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13 かくれんぼ

もうすっかり休みモードも抜けて普段の生活に戻りましたね。

また仕事する毎日か・・・


「あ、ルフィナ様すみません、ちょっとお聞きしたいのですが、シュウタさんを見ませんでしたか?」


 ある日の昼下がり、廊下を歩いているとユリアに声をかけられ、そんなことを聞かれた。


「いや、そういえば朝から見ていないな。 急ぎの用事なら感知魔術で探すぞ?」

「いえ、ルフィナ様にそこまでして頂かなくても大丈夫です! たまに見失うんですよね・・・」


 そう言いながら、ユリアはシュウタを探しに行ってしまった。

 そういえば私も、ときたまシュウタがどこにいるか分からなくなるときがある。

 特に用事があるわけではなかったので気にしていなかったが、この私が良く知る人物をそうそう見失うとは思えない。

 丁度手が空いてるし、探してみるもの面白いかもな。

 これは所謂(いわゆる)、”かくれんぼ”というやつだな!

 子供たちがやっているのを見て、私だったらこうするのにとか、ああするのにという発想がいくつも出てきたので試してみたかったのだ。

 早速やってみよう。


 まずは普通に城の中を歩き回って怪しいところを片っ端から見て回ることにする。

 私は少しウキウキしながら、”かくれんぼ”を開始した。


 ・・・1時間後


「・・・見つからねぇ」


 どこを探してもシュウタを発見することは出来なかった。

 まあ予想はしてたけどね。

 私は魔力感知の魔術でシュウタの気配を探ることにした。

 この魔術、探し物をするときはよく使う。

 この世界では万物に魔力が宿っていると考えられている。

 石や鉄などは保有魔力が微量過ぎて感知できないが、草や木、動物などは感知できる程度には魔力を保有している。

 魔導具(シジロマッキナ)も魔力を保有しているので感知することが出来る。

 そんな具合に人や魔導具探しにはとても重宝しているのだ。

 ただ誰でも使えるわけではなく、魔力を敏感に感じ取れる人がその感覚に磨きをかけると扱えるようになる。

 未熟な者が魔術を発動させると、すべての魔力の反応を感知してしまい、情報量が多すぎて脳がパンクしてしまうのでとても危険なのだ。


「シュウタの魔力はどんな感じだったかな?」


 私はシュウタの魔力を探る。

 というのも1人1人、魔力の波長が違うのだ。

 長く一緒にいる人たちの波長を覚えておくと探しやすいというわけだ。


「・・・そういえば気にしたことなかったけどシュウタの魔力波長って感じたことないんだよな。 っていうかあんなに近くにいて感じないことなんてあるのか?」


 よくよく考えてみればシュウタと出会ってから一度も波長を感じたことがないかもしれない。

 それはこの世界の住人ではありえないことだ。

 どんな人でも魔力は保有している。

 つまり、異世界(ちきゅう)から来たシュウタは魔力を保有していないということだ。


「・・・それってなにげに凄くないか? 私ですら感知できないということはこの世界で誰もシュウタを見つけられないということだ。 そうかそれで一番最初に私の寝室に侵入されてもわからなかったのか」


 これはとんでもない発見だ。

 まあ魔力を保有していない存在なんてイレギュラーであるシュウタ以外いないから心配はないんだが・・・。

 そんなことを考えながら城を歩いていると隣の訓練場が見えるとこまで来た。

 ふと訓練場を見るとリンの姿があった。

 どうやら鍛錬をしているようだ。

 正眼の構えをして、目を(つむ)り精神統一をしている。

 ただ剣を構えてじっとしているようにしか見えないが、身体の中の魔力を完全にコントロールして魔力の運用効率を上げているのだ。

 あれができるかどうかで達人の壁を超えれられるかが決まる。

 と、リンの後ろから誰かが来た。


「ってシュウタ!?!? やっと見つけた!」


 リンを脅かすつもりなのかジワジワとリンに近寄っている。

 だが失敗になるだろう。

 いくら魔力コントロールに集中しているからといっても、達人(マスター)クラスのリン相手に背後を取るのは無理だろう。

 ましてや訓練を積んでない素人同然のシュウタでは・・・ん?待てよ?

 あれ、まずくないか?

 シュウタは魔力を保有していないから気配が感知できない。

 今のリンは完全に魔力感知で周囲を警戒してるからシュウタに気付かず、背後に立たれたら気付いた瞬間に襲撃と思って斬りかかりかねない。


 シュウタが脅かす体制になった。

 私は急いで空間転移を開始する。 

 間に合え!!

 

「わっ!」

「!?!?! くっ!!」


 案の定リンが驚くと同時、振り向きざまに剣を横薙ぎに振るう。


 ガキン!


 その剣撃を私は間一髪、障壁で受け止める。


「ふう、なんとか間に合ったか」

「ひっ・・・。 しっ死ぬかと思った」

「え!? シュウタ!? ルっ、ルフィナ様、止めてくれてありがとう」


 リンはそう言いながら剣を降ろす。

 やっとシュウタだと気付いたらしい。

 それにしてもシュウタ、達人すら気付ないとは恐ろしい能力だ。

 その本人が何の訓練も受けてない、というか魔術で身体強化もできないだろうからそのへんの子どもにも負けるくらい弱いなんて、なんて残念なんだ。


「シュウタが変なことをしようとするから罰が当たったんだ。 というか今日はどこに行ってたんだ?」

「ちょっと脅かそうとしただけで死ぬとか洒落(しゃれ)にならんわ! ・・・今日? ちょっと気になることがあったから商業区にね~」

「そうなのか。 まあその話はあとでゆっくり聞くとしよう」


 シュウタが気になるということはまたなにか新しい発見があるかもしれない。

 覚えておこう。


「それよりシュウタの気配が全くしなかったよ! 一体どうやったの!? 異世界(ちきゅう)には完全に気配を絶つ方法でも伝わってるの??」

「そんな方法ないよ? ただそっと近づいただけ」

「リン、私もさっき気付いたんだがシュウタには魔力がないんだ。 それで私たちが使っている魔力感知に引っかからず、気付くのが遅れた訳だ」

「魔力がない!? そんなことがあるの? ・・・でも実際目の前にシュウタがいるのに感知魔術に反応がないからそうなんだろうね」


 リンも驚いていたが、一応納得したみたいだ。


「これからは魔力感知だけに頼るんじゃなく、物理感知、足音とか空気の流れとかにも意識を向けないとな」

「いくつになっても学ぶことはあるんだね~。 ねぇねぇ! クリスも驚かしてみようよ!」


 リンがまたなんか言い出したぞ。


「いやだよ! クリスティーナさんが怒って魔術ぶっぱなしてきたらどうするんだよ! まだ死にたくない!!」 

「大丈夫、大丈夫! そのときはウチがちゃんとガードしてあげるから~」

「本当に!? ねえ本当にガードしてくれる!?」

「対戦場魔術とかじゃなければね・・・」

「ちょっとぉぉぉ!!!」


 結局、クリスをシュウタが驚かすことになったのであった。

 まあがんばれ!


ということで次回はクリスドッキリ作戦ですw



ここまでご覧いただきありがとうございます!

誤字、脱字、感想、ご意見等お待ちしております。


更新は不定期です。 気長にお待ちください。


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