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11 解決、そして就職

皆さん、あけましておめでとうございます。

今年もちょこちょこ更新していきたいと思います!


 亀裂から姿を現したのはなんと今回の黒幕であるグラッツェン伯爵本人だった。

 

「おいメルヴィル!! どういうことだ!! オークからの魔力供給が途切れたぞ!」

「まさかグラッツェンの方から来てくれるなんて、アホなのか? まあ探す手間がなくなってよかったが」

「!?!? 魔王ルフィナがなぜここに! メルヴィル、説明しろ!!!」

「これは伯爵様! 助けにきてくださったのですね!! オーク軍は全滅しました。 しかし、伯爵様がいて下されば魔王など恐れることはない!! 共にぐわぁぁ!!!?」


 グラッツェンがいきなりメルヴィルの心臓を手刀で突き刺した。


「オーク軍の壊滅だと? 役立たずめ、貴様は死ね。 そして私の力の糧になれ」


 急激にメルヴィルの身体がしぼんでいく。

 どうやら魔力を吸い取って自分のものにしているみたいだ。

 ヤバイ急激な展開について行けないんだが。


「フフフ、フハハハ!! さすが(ロード)種ともなると凄まじいな! 力が湧いてくる! 魔王ルフィナ!!これで貴様も終わぷれぱぁ!!!!?!?!」


 なんか調子に乗り始めたのでとりあえず殴っておいた。

 グラッツェンは錐揉(きりも)み回転しながら吹っ飛んで行く。

 木々をなぎ倒しながら100m先でようやく止まったようだ。

 私は近くまで移動し観察する。

 なんかピクピクしてる。


「くっくそ! いきなり殴るとは卑怯な!!」

「戦場で卑怯もクソもあるか! 相手が隙だらけなとこを見逃すほど私は優しくないんだよ」


 そう私は敵がパワーアップするために変身しているとこを容赦なく攻撃する。

 なんたって魔王ですから!


「やはりこのような野蛮な者に世界を管理させておくなど危険すぎる!! いつ世界に牙を向けるかわかったものではない!」

「お前の方が危険だ! 世界がすぐに破滅しそうだわ」

「それにこんなお子様体型なヤツがいつまでもトップなんて締りがない!」

「そういえば残念な胸とかなんとか言ったのはお前か、あの世で詫びろ」


 メルヴィルに吹き込んだのはこいつか。

 まあヤツも「確かに」とか言ってたから同罪だが。

 

 結局グラッツェンはメルヴィルを取り込んだことでパワーアップをしてしまったようだ。

 魔力量が格段に増えている。

 量だけで見たらリンと同じくらいはあるんじゃないだろうか。

 ちなみに魔力量なら私よりクリスの方が多い。

 比率的に 高位の魔力保持者 < リン << 私 <<<< クリス って感じ。

 クリスはずば抜けて魔力量が多い。

 対戦場魔術(一撃で戦場を更地にできる威力の魔術)を10発は撃てるらしい。

 規格外過ぎるのだ。

 リンは魔術が苦手で基本的に身体強化系しか使わない。

 対戦場魔術も使えないこともないが1発で限界らしい。


 話がそれたな。

 とにかく、グラッツェンはリンくらいの魔力量がある。

 しかも魔術にそこそこ精通しているので厄介だ。

 まあ魔術発動させる時間なんて与えないけどね。


「グラッツェン伯爵、お前に勝ち目はない。 いま降参するなら痛みを感じることなく殺してやる。 抵抗するなら苦しみながら死ぬ事になるぞ」

「フン! なにをバカなことを!! 今の私なら貴様を倒すことも容易(たやす)いわ!」

「なんでこういうヤツって相手との力量差が測れないんだろう。 まあ魔力量だけで強さが決まるわけじゃないが」

「さっきからなにをブツブツ言っているんだ! まあいい、私の魔術で消滅するがいい!!」


 本当に人の話を聞かないな。

 グラッツェンは私に捕縛魔術を使ってきた。

 さすがは悪魔族の大貴族なだけあって魔術式の構築が早い。

 まあそれでも魔術が苦手なリンよりも遅いんだが。

 そんなのに私が捕まるはずもなく、難なく全て躱す。


「ええいちょこまかと小賢しい! これでも食らえ!」


 拘束した後、高位魔術で私を倒そうとしていたみたいだが捕縛魔術が当たらず苛立ち、目標を自動追尾する気弾を撃ってきた。

 私はその瞬間、グラッツェンが認識できないほどのスピードで背後に回り込む。

 放たれた気弾が私を追ってグラッツェンの方へと向かってくるが、グラッツェンは私を見失ったので必死に辺りを見渡して探しているため迫ってくる気弾に気づかない。

 

「っ!?!? ぐはぁっ!!」


 気弾がグラッツェンに命中した。

 こいつ本当に強いのか?

 まだメルヴィルの方が強かったぞ。

 

「くっ! もういい! もう容赦しないぞ!! 私が放てる最大の魔術で貴様を」

「魔王パーーンチ!!」

「ぐはぁああっ!!!?!?!」

「お前もういいよ。 三下はおとなしく消し炭になっとけ」


 こいつの茶番には付き合ってられない。

 さっさとケリを着けることにした。

 私は魔力を練ることに集中する。

 そうすることで、より洗練された魔力を練ることができ、通常の魔術より威力の高いものが発動できるのだ。

 自分の右手人差し指に洗練された魔力が収束し、光を帯び始める。

 光度がどんどん上がっていき、まるで小型の太陽が出来たかのような輝きを放っている。

 温度が1万度に達しているだろうそれを、わたしはグラッツェンへ解き放った。


「塵も残さず消えるがいい。 『イカロス・レイ』」


 光の速度には達しないが、それに近い速度で放たれた対戦場魔術『イカロス・レイ』に反応すらできず、グラッツェンはその身を焼かれる。

 着弾と同時に爆発、直径10m程のドーム状に光が展開し摂氏1万度の空間が中にあるすべての物を焼き尽くす。

 10秒ほどで光が収まっていき、ドームが出来ていた場所にはなにも残ってはいなかった。

 10m程のクレーターができていて表面がガラス状に変化している。

 それだけでも、どれだけの温度だったかがよくわかる。

 グラッツェンは文字通り、塵も残さず完全消滅したのである。


「ふう、やっとこの事件は解決だな!!」

 

 私は対して疲れてもいないが額を拭う動作をして、いかにもひと仕事終えたかのように清々しい笑顔でそう言った。

 さて、とりあえず今回の元凶はいなくなったことを冒険者ギルド・アリア支部に報告しに行かないとな。

 というか誰かいるのだろうか。

 受付嬢ちゃんは私の城だし(帰ったら名前聞こう)、ギルド支部長(マスター)とギルドスタッフは出勤すらしてないし、どうしたものか。

 一旦アリア支部に向かおう。

 私は移動しながら今後について考える。

 とりあえずギルマスとスタッフを一発殴ることは確定だな。

 あれ?

 ギルマスたちを・・・一発殴る・・・あっ!

 シュウタを浮かべたままだった。

 忘れてたわけじゃないよ?


「あ~、シュウタ、聞こえるか? いま黒幕を始末し終えたところだ」

『ルー!! よかった~やっと繋がった! なんか途中から念話通じないし、光のドーム?が消えてから戦闘してる感じがしないのに連絡もないからもしかして僕のこと忘れてるんじゃないかと』

「HAHAHA~まさかそんなことあるはずないじゃないか! しっかり覚えてたとも! 大丈夫だとは思うがオークの生き残りはまだいるか上空から確認できるか?」

「・・・・・・はあ、まあいいや。 オークは~・・・うん大丈夫みたいだよ」

「そうかありがとう。 その為に上空に待機させていたんだ! それじゃあ降ろすぞ!」


 私は丁度冒険者ギルド・アリア支部に到着したのでそこにシュウタを降ろすことにする。

 シュウタは不満げになにかブツブツ言っているがあえてスルーしよう。


「うんわかってたけど誰もいないな」

「でも近くの森であれだけの戦闘が繰り広げられてたんだし、そのうち誰か来るんじゃない?」

「んじゃ少し待ってみるか」




 冒険者ギルド・アリア支部に到着してから1時間程が経過した。

 私とシュウタはなぜか2階にあるギルド支部長(マスター)室で書類整理をしていた。

 というもの待っている間やることもないので、クズ人間であるギルマスなら報告書の偽装や賄賂(わいろ)などの不正行為の1つや2つ、やっているだろうと思い、書類関連を見たところ、出るわ出るわ不正の数々。

 300年かけてこういった行為を片っ端から罰してきたが、まだこんなヤツがいたとは。

 そのおかげで書類整理という名の『証拠集め』をする羽目になったのである。

 そのとき、1階から物音が聞こえてきた。

 誰が来たかを確認しに1階に降りる。


「おい! 誰かいるか? ユリア! ・・・全く、あいつめ、ついに逃げ出したか」 


 そこには小太りのおっさんがいた。

 いかにも小物臭がするがとりあえず声をかけることにする。


「お待たせしました、 冒険者ギルド・アリア支部へようこそ! 私は魔王都カトレアより派遣された者です。 すみませんが現在街の機能が麻痺しているため、当ギルドも運営をほぼ行っておりません」

「ほう? 使者殿であったか。 受付に女性が一人いなかったかね? ユリアというのだが」


 おっと思わぬところで受付嬢ちゃんの名前が判明した。


「いえ? 私が来た時には誰もいませんでしたが・・・ギルド支部長(マスター)すらいらっしゃらないのでとりあえず私が受付をしておりました」

支部長(マスター)は私だ。 今までこの不気味な病について調査していたところだ。 そうしたら森の方で何やら戦闘行為が行われているので至急戻ってきたのだよ」

「そうだったのですか! ここのギルド支部長(マスター)は仕事熱心なのですね!」


 隣で無言だったシュウタがドン引きの表情でこちらを見ていた。

 なんだその「うわ~ウソなのがわかってるのにおだてて更に罪を犯させるなんて、さすがは魔王」みたいな顔は!


「それで調査の結果、なにか分かりましたか?」

「それがまだなにも。 高位魔術の広範囲回復魔術(エリアヒール)をかけることができれば事態の集収ができると踏んでるのだが」


 こいつ、回復魔術(ヒール)系かけても病が再発することすら知らないのか。

 相当最初の方からいなかったな。


「私の調査では回復魔術では再発してしまう可能性があると思いますが・・・」

「ふん! まだまだ修練が足らんな。 私はギルド支部長(マスター)だぞ? 私の見立てで間違いないわ! 回復魔術でも直せない病など聞いたことがない」

「ああもうめんどくさい。 おいおっさん、お前の不正の数々はとっくに調べた。 今回だって病が流行し始めた途端に自分だけ安全な場所に引きこもってたことも知っている。 自分が行った不正を全て白状し、自主するなら命までは取らない」

「なっ! こっ! 小娘が!! なんと無礼な!! この私が不正などするはずがない! 証拠はあるのかね!?」


 小娘って。

 私が魔王だと気付いてないのか。


「そんなもん部屋の引き出しから腐るほど出てきたわ。 普通鍵くらい掛けられるとこに入れるんじゃない? なんともお粗末なもんだ」

「!?!? ギルド支部長(マスター)の部屋に無断で入るとは! いったい何の権利があって」

「まだわからないのか? それともお前はギルド支部長(マスター)なのに世界の支配者である魔王の顔も知らないのか?」

「はん! 貴様のような小娘が魔王様であるわけがなかろう! お顔を拝見したことはないがきっと壮麗で威厳があり、尚且つ優しさと慈愛に満ちているに違いない! 間違ってもこんな小娘ではないだろう! 貴様、魔王様を語るなど極刑に値するぞ!!」


 その言葉に、私は(うつむ)きながら肩を震わせていた。

 怒りが爆発しそうになるのを我慢する為に。

 隣でシュウタも顔を背け肩を震わせていた。

 笑うのを必死に堪える為に。

 あとでお仕置きだ。


 私は一瞬だけ抑えていた魔力を周囲5mに開放した。


「ひぃっ!」


 その魔力にアテられたギルマスのおっさんが顔を真っ青にさせ、後ずさり、尻餅をついてしまった。

 ビビらせ過ぎたかな?

 まあいいや。


「あまり人を見た目だけで判断しないほうがいいぞ?」

「はっはい!! 大変失礼致しました!!」

「とりあえずお前は一発殴らせろ」

「ぼげらはっ!!」


 ふう、これで少しはスッキリしたな!

 もちろん受付嬢ちゃんことユリアちゃんのために殴ったんだよ?

 まさかこの私が小娘呼ばわりされて怒るはずないじゃないか~!

 一緒にシュウタも殴ってたしこれでユリアちゃんも報われるというものだ。


「さてあとはこのおっさんをアストレア城で尋問して吐かせるだけだな」

「お、おうそうだな。 それじゃ、今回の事件は解決かな? やっとゆっくり休めるよ~」

「いや今回は本当にシュウタがいてくれて助かったよ。 流行病の原因がオークであることを突き止めて、更にグラッツェンの謀反を未然に防ぐことになるとはね。 この功績はとても大きい!」


 実際のところ、私やリン、クリスだけならグラッツェンの陰謀までは判明することはなかっただろう。

 シュウタがいたからこそ、親玉までたどり着けたのだろうと思う。


「いや~僕はただそうかなって思っただけでなにもしてないよ。 それに戦ったのは全部ルーだし」

「人には向き不向きがあるんだからいいんだよ。 とにかく、今回の功績でやっと反対派を黙らせることができるな」

「反対派? 何の?」

「シュウタを『魔王専属相談役』という役職に任命することだよ」

「断固辞退する!」

「なんだと!?!?」


 いったいなんの不満があるんだ、私の相談に乗ってくれるだけでいいのに。


「役職なんてめんどくさいものになんか就きたくない! というか働きたくない!」

「あ”あ”ん?」

「はいすみませんでした喜んでその任に就かせて頂きます」

「シュウタならそう言ってくれると思ったよ! 今後も期待してるよ!!」


 そんなやり取りをしつつ、アストレア城へと帰る私たちであった。



ということでシュウタさん就職しました。

あと受付嬢ちゃんの名前がユリアということが判明しました。

今後多分ちょこちょこ出てきますw


ここまでご覧いただきありがとうございます!!

誤字、脱字、感想、ご意見等ありましたら気軽にご連絡ください!


更新は不定期です。 気長にお待ちください。

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