パッチフリー作品その2
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元の作品様です。
キミを守るタメに(解決編)
「どうして来たの……シルヴァーナ」
今にも泣き出しそうな曇り空の下 僕は彼女に向き合う
青髪で蒼色の瞳をした彼女を見つめた
「キミを守るために」
「私を止められるものは誰もいないの」
そう言って笑う彼女 眼下には切り立った崖がある
彼女が何をする気なのかは、探偵ではないボクにでも分かる
ボクは言った。
「そんなことはしらないよ」
「嘘つき」
ただ否定されただけだった
「ボクはただ」
「……」
「キミを守るために来た」
それでももう一度伝えた
リーインは強かった
世界を守るために戦った仲間
そのために全てをなげうってそして
世界を救った後 最後の脅威はリーインだけだった
「どうして……」
「リーインさん、待つんだ。まだ全てを諦めるには早い……そんなものは、私の推理を聞いてからでも十分に間に合うはずですよ」
雨がぽたりと降ってきて、頬を濡らす
それはまるで 涙のように見えて
でもその水滴が突然凍った
リーインの身体はもうその魔力を抑えきれない
賢者が言っていた
リーインを殺せ
あれは世界をまるごと凍りつかせてしまう
「だからこそ、あなたには都合が良かったのではないですか? 真犯人の……シルヴァーナさん」
「できないよ……」
「リーインさんを犯人に仕立て上げ、あろうことか賢者の目まで眩ませるとは。よくもまあ考えたものですなぁ。あなたがシルヴァーナとして生きてきた16年もの間、全くの別人を演じていたわけですから」
生まれて生きて16年
いつも一緒にいたリーインを殺すなんて
「第一の犯行、現場を凍りつかせることで死亡推定時刻をずらし、氷の使い手であるリーインさんに疑いの目を向ける。あなたの目論みは成功した。警察は真っ先にリーインさんを逮捕しました」
「シルヴァーナ」
「どうした……?」
「リーインさんがアリバイの無い瞬間を狙い、あなたは犯行に及んだ……自分のアリバイと引き換えに、犯行現場にリーインという存在そのものをでっち上げてね。私も驚きました。こんな手があるなんて、とね」
「私しあわせだったよ」
「ボクもだよ」
「騙されてはいけない! その男はあなたに罪を被せようとしたんです。あなたがそこから身を投げようとしているのも、全て彼の仕向けたことなんですよ!」
しあわせの形はきっと
誰のものともおなじじゃない
ボクはそう思いたいと思った
「リーイン」
「どうした……? この期に及んで言い逃れか?」
「共に生きていこう」
なんとなく 大丈夫だとおもった
ボクたちなら乗り越えられる
そう信じる心が ある限りは
「うん……」
そこでリーインははじめて泣いた
「リーインさん……あなたは、そこまで彼のことを……」
ボクはリーインの頭をなでた
リーインの頭は冷えていて気持ちがいい
しあわせの冷たさだった
「あなたは最初から知っていたんですね。シルヴァーナさんが犯人であり、自分に罪を着せようとしていることも。それを知ってなお、あなたは犯人として命を絶とうとしていた……」
「シルヴァーナ ありがとう」
「リーイン ありがとう」
「でも、それは間違いです。あなたは犯人を装い、捜査を撹乱した……。犯人蔵匿及び証拠隠滅の現行犯、そして公務執行妨害。リーインさん、あなたも……警察へ連れて行かなければなりません」
雨はもう止んでいた
ぼくらはそして歩き出す
虹のたもとを目指して―――