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40cm  作者: 高月
2/2

とにかく遠い

 「あ。」


 でっかい人だ。


 この前推定身長2メートルとおぼしき男子生徒を発見して以来、私はよくその人を見かけるようになった。

 入学してからつい最近まで見たことがなかったのは、どうやら彼の教室が私とは違う階にあるかららしい。彼の教室は生物室のある東館の3階。私の教室は同じ東館だけど、2階にあった。別に教室の場所をわざわざ調べたわけじゃない。移動教室で生物室に行くとき、よく見かけるからそう考えただけ。だから彼が何組かとか、わからない。上履きの色が私と一緒だから、同じ1年生なんだなってことは、知ってるけれど。


 いつもは移動教室のときに見かけるのだけど、今日は教室の窓から見えた。私のクラスの教室は運動場に面していて、他クラスの体育の授業風景がよく見える。今はまだ休み時間だから、彼のクラスはこれから体育なんだろうか。それとももう終わって、教室に帰るところなのだろうか。

 彼の隣に立っている人も同級生のはずだけど、その人と比べると彼は明らかにひとまわりは大きい。熊みたいだ。むしろモンスターレベル。


 「ちいこ、最近いつにもましてボケっとしてるよね」


 「やえちゃん、あの人、すごくでかいよね」


 「うん?」


 やえちゃんは小学生のころからの友達だから、私が脈絡のない反しをしたってへっちゃら。慣れっこになっちゃってるらしい。申し訳ないとは思うのだけど、なかなかこの癖って治らない。


 「あー、あの人?確かにおっきいね」


 「2メートルくらいあるよね」


 「いやさすがにそこまではないでしょ…180後半くらいじゃないの?」


 「ここから見下ろすとちっちゃく見えるけど!でも実際に目の前に立つと2メートルあるから!モンスターだから!」


 私が一生懸命になって語ると、やえちゃんは興味なさそうに、「へえー」といった。わかってない。やえちゃんてばわかってない。びっくりするくらいおっきいのに。思わず変な声出しちゃうくらいおっきいのに。あまりにもおっきいから、ちょっと威圧感を感じて、私なんか最初の一回以来彼の横をすり抜けることもできていない。毎回遠目に彼を発見するたび、微妙に遠回りして避けている。

 彼がもし冗談で回し蹴りとかしたとして、そのとき運悪く私なんぞが近くにいたら、まずお陀仏だ。なんでって、頭に直撃すること必死な身長差だから。


 「そこのところを、やえちゃんはわかってないよ」


 「よくわかんないけど、ちいこが怯えちゃうくらいにはでかいわけね」


 「そういうこと」


 「まあちいこはちっちゃいからねー。145センチだっけ?」


 「違うよ!145.5センチだよ!こないだの健康診断で伸びてたっていったじゃん!」


 やえちゃんはこれまた興味なさそうに、「そうだっけ?」とか言ってる。もう、ほんとにやえちゃんはわかってない。あのでっかい人のでかさもわかってないし、私の身長にとって0.5センチがどれだけ重要かってことも、まったくわかってない。ダメな親友だ、ほんとに。

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