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40cm  作者: 高月
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一億光年先

初投稿になります。どうぞよろしくお願いします。

 「おはよ、ちいこ。今日もおつかれ」

 「うーんおはよー。つかれたー」

 朝。ホームルームの後、1時間目の担当教師が来るまでの間。やえちゃんとするこのやりとり。これは日課。


 私なりに一生懸命勉強して、家から自転車で10分の公立高校になんとか受かった。平均よりほんのちょっと偏差値の高い学校。平均以下の成績しか出したことのない私がここに受かったのは、ひとえに、朝ゆっくりしたいから、これに限る。つまるところ、私は早起きが苦手なのだ。中学は学区の都合で、片道40分かかる学校だった。もちろん遅刻を何回もした。待ち合わせしているはずの友達は、私を待たずに学校に行くようになった。それくらい私の寝起きは悪い。だから、「毎日毎日いい加減にしなさい!」という母親のどなり声で目覚めるなどという気分の沈む日々から脱却しようと、高校は朝ゆっくりと寝ていられる距離の学校を選んだのだ。

 そう、だったはず、なのに。


 入学してから一カ月。私は遅刻こそしないものの、毎朝担任の教師とほぼ同時に教室に滑り込む生活を送っていた。このままだと、数ヵ月後には遅刻する気がする。気がするというか、確実にする。


 「あんた毎日朝からそんな全力疾走してて、すごいね」

 「ありがとう。でも今日は本当に危なかった…ついに遅刻するかと…」


 やえちゃんは憐れむような見放してるような、なんともいえない顔でこっちを見た後、「次、移動教室だよ。はやく準備して」といった。


 「え、移動?現代文なのに??」

 「生物に変更らしい。ちいこは息を整えるのに必死だったと思うけど、ホームルーム中に先生ちゃんといってたからね」

 「うおーまじかー」


 先生ってばいつのまにそんなことを。とかぶつぶつ言ってたら、やえちゃんは私を置いてさっさと行ってしまった。私も慌てて教室を出る。生物の教科書置き勉しててよかった。生物といわずあらゆる教科書を置き勉してるけど。


 「やえちゃーん、ちょっとくらい待っててくれてもいいじゃんよー」


 同じように移動教室に向かう生徒たちの間を、先ゆくやえちゃん目指してバタバタと走り抜ける、途中。


 「うぇっ」


 思わず変な声をあげてしまうくらい、でかい人間がいた。


 すれ違った瞬間の違和感が半端ない。たぶん私の頭はその人の腰くらいまでしかなかったんではなかろうか。15歳の少女の頭が腰の位置って、そんな馬鹿な。

 ついつい振り返って確認してしまう。


 「でけぇ…」


 男の人。ついでにいうと制服着てるから、学生。近くにいる他の人間と比べて、当然のように頭一つ分は背が高い。つまりでかい。2メートルくらいあるよ、たぶん。


 「世の中にはあんなに大きい人もいるわけですね…」


 私なんて150センチにも満たないってのに。いやもちろん成長期だからまだまだ伸びますけどね、なんてボケっとしてたら、授業開始の鐘が鳴った。生物室までは、まだ遠い。遅刻決定。

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