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18. こうしちゃんの強襲

 突如、腹の上に強烈な圧力がかかるのを感じて、ゲーツはかっと目を開けた。


 まだ暗い。曙光が差し込むまでには、ずっと時間があるはずだ。まさかの敵襲――と全身を覚醒させかけた瞬間、毛布を通して巨大な肉球が脇腹に食い込む感触があった。



「……こうしっ……」



 途端に、隣がもぞつく。



「何だ」


「……こうしが、俺の腹に乗ってる……」



 眠たげな欠伸が聞こえた。



「お手洗いに行きたいのだろう。おいで、こうしちゃん」



 起き出そうとするグラーニャの腕を捕まえた。



「……いい。俺が出す」



 毛布の外側は冷えびえとしていて、それがゲーツの裸体に沁みる。窓の鎧戸よろいどをほんの少し開けると、さらなる冷気が入ってきた。ぶふー!! と満足そうに鼻を鳴らすと、こうしは貫禄も豊かに白地黒ぶちの巨体を揺らし、のしのしと出ていく。


 急いでグラーニャの横に潜り込むと、首に腕が巻き付いた。



「お前も、もう行くのか」


「……まだ、早い」



 鍛えられてはいても、やはり華奢でしかない細い体を抱き締める。背中に回されたグラーニャの手が、なだらかに動く。そこに、あの指環の冷たい感触はなかった。それは今、鏡台に置かれた小さな硝子の器の中に、数々の耳飾りと一緒にしまってあることを、ゲーツはちゃんと知っている。



「……ずっとこうしてられたら、いい」



 グラーニャのつむじの中に、鼻を埋めてゲーツは囁いた。



「……俺の、グランと」



 その大切な女は、男の腕の中、ふふんと不遜に笑ったようだった。




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