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番外編2-2

 イポリトとウーゴの作った火柱は、遠くからでもよく見えた。アベイタとファジャの国境に作られたゲルラの砦からも見えたし、ファビオの使い魔であるエリオドロの報告を受けてゲルラ伯爵領に向かう王ホアキンと、その使い魔、空を泳ぐアオウミガメのイグナシオからも見えた。


≪とりあえずあの火柱の所に行くねぇ≫

「火柱かなあ」

≪多分ウーゴとイポリトのヤツのだね。あれ。あ、自分はそろそろこの辺で。ファビオが近い≫

「案内ありがとう、エリオドロ」

≪どういたしまして≫


 エリオドロはひょい、と、イグナシオの甲羅から飛び降りる。翼を閉じて飛び降りて、森の道のそばまで来たら翼を開く。

 ホアキン王はそれを器用だなと眺めていたが、イグナシオは空を漕いで先へと進んだ。


「誰かいるかい?」


 火柱の上から、イグナシオとホアキン王は中を覗いた。火の中から、トカゲと鳥が顔を出す。


≪すげえ、空の亀だ≫

≪亀って空泳ぐのか……≫

≪泳ぐさ≫


 イグナシオはこともなげに、イポリトとウーゴに返事を返す。二匹は何か感心したように声を漏らすきりだ。


「すまないがふたりとも、何があったのか教えてくれるかい?」

≪ん? ああ、ここはさ、コンラドの大事なお姫様の大事な街だろ?≫

≪そこにさ、なんか悪いことしようとしてる連中がいたから、とっちめといた≫

≪あ、ダニエル達と、コンラド達は城に行ったよ≫

≪ガビノとヒル置いてってくれりゃりいのに、連れてっちゃった≫

≪王様お城行くんでしょ? だったらさ、ガビノとヒルにこっち来るように言ってよ≫

≪そうそう。それからさ、一応こいつら殺してないから。ふん縛れる連中も連れてきてよ≫

「分かった、そのようにしよう」


 イポリトとウーゴの作った火柱の中に巻き込まれた人間たちは、うつろな瞳で空から火柱の中を覗き込む人間を見つめていた。動かないし声も出ないようだが、生きてはいるようだった。心臓が動いていることを生きている、と称するのであれば。


 イグナシオが、ゲルラ伯爵領にある街、ギジェンにある城に、視線をやった時。ぶわり、と、熱波が広場を襲った。空に、大きな鳥が浮かび上がっている。熱波を感じるに、コンラドの使い魔のダニエルだろう。コンラドの魔力を食べて、巨大化したのだろうと、ホアキン王とその使い魔のイグナシオは察した。


≪とりあえずは城かな≫

「話を聞いてから追いかけよう。間に合うといいんだけれど」


 グイ、と、イグナシオは空を漕いだ。

 城壁は高く、堅牢だ。有事の際にはこの城壁の中にギジェンの街の住人たちを匿う為だ。今回は、そうならなかったが。

 城門のすぐそこ、広場の部分に人が集まっているようだった。彼らは空を見上げ、イグナシオとホアキン王に気が付き、場所を開ける。そこに、降りられるように。

 誘導に気が付いたイグナシオは、そこへ降りる。

 ホアキン王はイグナシオの背から降りずに、人々の顔を見まわした。


「イポリトとウーゴの主であるである、ガビノとヒルはいるかい」

「はい」

「ここに」


 二人の人間が、一歩だけ進み出る。跪くかと二人は一瞬悩んだが、それよりも分かりやすい方を選んだ。

 アベイタの王は、ちょっとの不敬くらいは笑って許してくれる。我が前に跪き頭を垂れよ、というのはそれはもう相当お怒りで、他の人間相手であればまずすでにその首が飛んでいるようなことが行われた後である。


「ギジェンの街の広場において、イポリトとウーゴが捕虜を捕えておる。急ぎ兵士たちとそこへ赴き、捕縛してくるがよい」

「は」

「直ちに」


 ガビノとヒルはす、と頭を下げて、一歩下がった。それから、側にいたこの街の兵士に声をかけて、その場を辞した。


「なにがあり、コンラドとダニエルが出立したのか、極力簡潔に述べよ」


 イグナシオであれば、すぐにその距離は縮まる。相手は鳥とはいえ、風の属性の使い魔ではない。空を司るイグナシオの方が速い。

 速いが、速ければいいというものではない。


「恐れながら、直答のご許可を」

「よい。まずは名を」


 進み出たのは、一人の女性だった。ゲルラ伯爵家の娘、セリアではない。


「ゲルラ伯爵家の息女、セリア様にお仕えしておりますクラウディアと申します」


 彼女の話はよく要約されていて、わかりやすくまとめられていた。そしてそれを聞いている内に、ホアキン王もイグナシオも顔色をお失った。


 戦士の国ファジャの兵士たちの一部は現在、国境付近でアベイタの、正確にはゲルラ伯爵家の兵士たちと小競り合いを続けている。

 その最中、ファジャの商人たちがアベイタへと少なくない数入ってきていた。何かを仕入れ、戻りはしない。何かを持って入国し、ギジェンの街中に潜伏していた。

 それに気が付いていたセリアは婚約者のコンラド達に何かあったら連絡をすると伝えていた。


「お嬢様は現在傷つき、お部屋で臥せっておいでです」

「命に別状はないのだな?」

「はい」


 王とその使い魔は視線を交わした。そこには、仕方ないな、という色が強い。


「コンラドが無茶をしてもまあ仕方があるまい。しかし年長者として、この国の王として追わねばなるまいな。

 捕虜はどれだけおるのだ」


「城内に引き込むことに成功いたしましたのは、十人ほどです。すべて捕えてございます」


 城塞の兵士だろう男が、す、と頭を下げて答える。確か、同じほどの数が広場で蒸し焼きにされていたか。


「ではそいつらを縄でつないでくれ。切れないようにな。一連の数珠つなぎにしてしまうと地面が近すぎるものも出るだろうから、三人くらいずつ繋いでもらおうか」

≪まあ、覚悟の上よな≫


 魔術大国アベイタの王は人が良い。戦争を嫌う腰抜けだというのが、戦士の国ファジャでの評価である。

 戦争は嫌いである。侵略されるのはもっと嫌いである。

 だから、まあたまには、厳しくすることだってできるのだ。


「さて諸君」


 城内に引き込まれて捕虜となっていた十人と、城下町で焼かれていた十人をまとめて三人ずつ程度の数珠につなぐ。


「君たちは戦士の国ファジャからの侵略者である。間違いないね?」

「…………」


 誰も答えない。答えなければ真実であるかなど分かるまいと高をくくっているのか、喉が焼かれて声が出ないのか。ホアキン王は、気にしなかった。


「異論はないようだ。それでは空の旅にご案内しよう。

 まずは国境沿いの砦だな」


 ホアキン王は二十人の捕虜を連れて、空の旅を開始した。まずは戦闘が膠着している国境線で、捕虜を一人解放した。

 ギジェンの街に潜入したファジャの兵士約二十名はこうして捕虜としてある。君たちが今すぐ引くというのであれば、捕虜を解放しよう、と。

 ファジャ軍がそれを受けいれたので、イグナシオは一人分の縄を切って落とした。

もうちょい続きます。

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