番外編2-1
前回に引き続き戦争のお話ですが恋愛のお話でもありますが戦争のお話です。
前回は人が死んでいるシーンの描写はありませんでしたが、今回は
≪殺してないよ?≫
≪殺してないから誉めて≫
って炎系の使い魔が言ってますので、苦手な方はやっぱりおやめになった方がいいかと思います。
戦士の国ファジャと魔術大国アベイタの国交がまた途絶えて、どれだけ経っただろうか。おそらくかつて留学生から得た知識で、土壌の改善に成功したから留学生が来なくなったのだろうと、商人の国グラシアンの留学生が分析していた。
戦士の国ファジャと国境を接しているのは、ゲルラ伯爵家だ。アベイタがまだ町だった頃に合流し、それ以来守護を担っている一族である。
それは、ゲルラの一族の娘と、まだアベイタが村だった頃から王と共に歩んできたクアドラ一族の息子の、婚姻の話が出た頃にさかのぼる。
その頃はまた、ファジャが侵略戦争を仕掛けてきていた。小競り合い程度では王を呼ぶ必要はなく、シプリアノ・ゲルラ伯爵とその使い魔のクラウディオでどうとでもできた。
ファジャはその頃、散発的に戦闘を仕掛けてきていた。
「深追いの必要はない。帰ったのなら、それで終わりだ」
国境線付近に簡易ではあるが砦を築き、そこを根城に交代で軍は任務にあたっていた。
これは、そんな頃のお話。
セリア・ゲルラがコンラド・クアドラに出会ったのは、カバジェロ学院である。夏至の日に召喚の儀式を行うまで、二人は互いの事を知ってはいたが、知っていただけだった。一週間の休暇の後、二人は同じクラスになったのだ。
火の属性かつ、通常の動物。それが、二人の共通点だった。
それは、一人娘のセリアの元に、コンラドが婿入りするための移動の途中だった。コンラドは五人の彼の幼馴染とともに、ゲルラ伯爵領へと向かっていた。伯爵領にて婚姻の議を行い、その後王城にて王に宣誓を行う。シブリアノ・ゲルラ伯爵は領地を離れることが出来ないために、そういうことに落ち着いた。
一行は主要街道を北へと進んでいた。クアドラ侯爵家の領地からではなく、国の中央に位置する王都から向かっている。クアドラ侯爵家の領地は王都から見て北東、ガゴ山脈の近くに位置している。ゲルラ伯爵領とも、遠くはない。
それでも彼らが王都にいたのは、そこでこれからゲルラ伯爵領に赴き婚姻の儀を執り行うこと、その後王都にて陛下に宣誓する旨の手続きを行っていたからだ。
本来であればコンラドの婿入り先である伯爵家の当主が行うべきであるが、現在散発的にファジャ国と小競り合いが起きていることから、クアドラ侯爵の立ち合いということになった。
街道の先頭を走るのは、灰色の毛並みの八本足の馬、グスタボだ。コンラドの幼馴染の一人、エドガルドをその背に乗せてご機嫌に走っている。勿論、飛ばしすぎず、他の普通の馬に合わせた速度であるから、彼にしてみればのんびり歩いている心持なのだろう。
最後尾で馬を走らせているファビオの肩からは時折、黄色いシギのエリオドロが飛び立つ。
≪特に異常を知らせる狼煙とかはナーシ≫
コンラドの使い魔のダニエルはオオグンカンドリであるし、ガビノの使い魔イポリトはカモメだし、ヒルの使い魔のウーゴはトンボだし、グレゴリオの使い魔のハシントは燕であるが、彼らはみんな火の属性だ。何かがあった際、エリオドロはそのまま王都に向かう手はずになっている。
流石にそろそろファジャ国の侵略は目に余ると、人の好い陛下もそうお考えだった。
エリオドロは翼を閉じて、落ちるようにファビオの元へと戻る。直前で翼を開いて微調整をして、ファビオの肩に着地した。
そうしてまたしばらく走り、エリオドロは羽ばたく。
空に、ポーンと赤いものが飛び出した。
≪あ、以上あり。あれチータじゃない? 今城の方でくるってした≫
コンラドの使い魔のダニエルが、その燕の尾を開いて飛び上がった。何も言わずに、城の方を見る。
また、ポーンと赤いものが飛び出した。
≪チータからの合図だ。先に行く≫
ダニエルは翼に力を込めて、ゲルラ伯爵の城を目指す。イポリトとウーゴとグレゴリオもすぐに飛び立ち、ダニエルの後に続いた。
≪行ってくるねー!≫
エリオドロはそのまま踵を返して、王城へと戻るために、その翼に風の力を込めた。ここからなら、一時間とかからずに戻ることが出来るだろう。
≪よぉし、走るぜ走るぜ走るぜ≫
八本足のグスタボが、前足の蹄で地面をかく。
≪エドガルド、魔力をよこせ。体を最大にして全員乗せて走ってくぜ≫
「ありがとうグスタボ、自分は使い魔もいないし、他の馬たちをまとめて後から行くから、勘定に乗せないでくれ」
≪あいよぉ!≫
エドガルドの魔力を食らって、グスタボの体がぐんぐんと大きくなる。森の木々を超えたりはしないが、主であるエドガルド、それからコンラドにガビノ、ヒル、グレゴリオと乗せても問題なく走ることが出来た。八本の足全てに風の魔力を込めるから、ものすごい速さで疾駆していく。
ガビオの使い魔であるカモメのイポリトとヒルの使い魔であるトンボのウーゴは、ゲルラ伯爵領にある最大の都市ギジェンに到着した。コンラドの使い魔であるダニエルと、グレゴリオの使い魔であるハシントは彼らの先を飛んでいる。おそらくはそう遠くない内に、城へと到着するだろう。
≪なあおいウーゴ、あれってファジャの連中じゃね?≫
≪うん?≫
二匹は丁度、広場の辺りを飛んでいた。もうすでにほとんど人気はなく、レンガ造りの家の扉はぴったりと閉じられている。
使い魔は基本的に、人間の事に興味はない。自分の主と、それに親しいもの達の事にしか興味はない。したがって、主の敵であるファジャの連中は、彼らの敵である。
閉じられた家の扉をこじ開けようとしている者たちがいる。一人二人ではない。三人四人でもない。彼らは武装をしているが、アベイタの者ではない。見ればわかる。あいつらに魔力がないことも。
≪お、マジだ。いい具合にあいつら広場に集まってるし、やっちゃう?≫
≪だよな。城に行くより広場何とかしといた方がいいよな≫
二人はその広場に急降下した。こちらを見ていない人間たちの視界に入らないように、地面すれすれを飛ぶ。翼に、羽に、魔力を込める。産まれてからずっと持っている、火の魔力を。
ゆっくりと、ゆっくりと、二匹は広場を回った。
「おい、なんか熱くねぇか」
そう言って、一人、二人、と、広場の中央に集まってくる。
≪そろそろいいかな≫
≪取りこぼしはなさそうだし、まああってもそんなじゃないだろ≫
「なんだ?!」
「お前今なんか言ったか!?」
使い魔の声に慣れていないファジャ国の戦士たちが、顔を見合わせる。そうして、気味悪そうに広場の中を見回した。
ごうっ!
外に出ている人間だけを囲うように、火柱が立ち上った。火柱の中には空間があるが、ひどく、暑い。
≪お前らファジャの連中だろう?≫
≪国境の砦は破られた様子もないのに、おう、何でここにいる?≫
炎の壁を維持するためにぐるぐるとその中を回りながら、イポリトとウーゴが問いかける。それはまるで、炎の壁そのものが喋っているようであった。
必要な話だから書きましたが書いていて楽しくありませんでした。
戦争はよくない。