番外編3-1
評価ブクマいいねありがとうございます。
前回ふたつの番外編はあれでしたが、番外編3は授業に戻ります。
まあ授業内容が番外編ってどうなんだって気もしています。とても。
召喚魔法があるのだから、当然送還する魔法もある。
召喚主と使い魔は召喚時に契約を結び、魂を同一にしてしまう。なぜそんなことをするのかと言われれば、その方が魔力の循環効率がいいからだ。少ない魔力で、豊穣の魔法が使える方が、いいに決まっている。
しかし問題がある。
使い魔というものは基本的に、人間より寿命が長い。彼らは通常別の場所に住んでいる。魔界妖精界第三軸などなど色々な呼び名があるが、実際の所は何とでも呼べばいい、らしい。彼らは彼らの住まう場所に名前を付けていない。
いやつけてはいるが、それは集落の名前だったり森の名前だったり滝の名前だったりするだけで、世界の名前ではない。だから、人間が何と呼ぼうがどうでもよかったのだ。
使い魔とその主の魂が同一になっている、ということは、寿命の短い人間が死ぬ時に一緒に使い魔も死ぬということだ。
≪構わんが≫
「いやこっちが構うんだよ」
そこまで織り込み済みで召喚される肝の座った使い魔ももちろんいるが、中には妻子が待っているので帰りたい、というタイプの使い魔もいる。なぜお前はその状態で召喚されたんだ、というのは永遠の謎である。使い魔の方に答えがないので。
「送還の呪文には、二種類ある」
魔術大国アベイタの王都にあるカバジェロ学院の大講堂で、男は口を開いた。約四百人の学生とその使い魔が座して聞いているためざわめきがある。誰も声を発していなくても、その身じろぎだけで、ざわめくものだ。これだけ人と使い魔がいると。
「一つは人が死んだときに行うものだ。
親族などが死んだときに、見たことのあるものもいるだろう」
ダミアン先生の言葉に、手を挙げるものがいる。人間の子供の他に、使い魔も手を挙げていた。
「何なら自身が送還されたことがあるものも、それなりの数がいるだろう」
先ほど手を挙げた使い魔たちは、そのまま手を挙げていた。中には手ではなく、角を振ったものや花を持ち上げた者もいるが、まあそれは誤差だ。
「死んだ者、死にゆく者の使い魔を送還するための召喚陣についての説明は、百五十九ページを開いて」
生徒たちが一斉に、教科書をめくる。その音が、大講堂を埋め尽くした。
ダミアン先生は生徒たちが教科書を開いて、そのページの文章を読み終わるのを待っていた。これから説明があるだろうと、開いて机の上に置くものもいたし、軽く目を通すものもいたし、使い魔が読みふけっているものもいた。
「通常」
読んでいる者たちは置いておくことにして、大講堂を埋め尽くしているほぼ全員が教科書を開いたことを確認して、ダミアン先生が授業を再開する。生徒たちの視線が、ダミアン先生に集まった。
「送還の魔法陣は市販されている。どの店で取り扱っているのかは、場所によってまちまちだから、確認しておくように」
雑貨屋が取り扱っていることもあれば、村長が一括管理している村もある。
建物に入りきらない大型の鳥から手のひらサイズのネズミちゃんまで使い魔の大きさは様々である。そのため、召喚陣のように特定の場所への設置は行われなかった。
「また、どの時点で送還するかについては、ちゃんと使い魔と相談しておくように」
生徒達は己の使い魔と顔を見合わせた。どの、タイミングで?
≪そりゃ、見送りたいと思う者もいるし、見送りたくないと思う者もいるさ≫
「死した後の家族が心配で、しばらく残ることを選択する使い魔もいる。
その際には、残される家族にそれを伝えておくように、驚くからな」
教卓の卓上から、ダミアン先生の使い魔の声がする。
席が近い生徒からは、卓上にちょこんと座り、自身の体よりも大きな袋を背負っているダミアン先生の使い魔が見えるが、後ろの方の生徒の視点では声がするだけにしか見えない。
お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、この作品は学園モノではありません。
前提条件を説明するのに学園モノにするのが楽だったので学園モノになっている、という状態です。
なので今後も学園での授業内容は番外編になる可能性が大きいです。