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クラスメイトは異世界王女  作者: くまひこ
第1章 亜人解放戦争

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第10話 ドルマン陥落

 日没とともに始まった犬人族レジスタンスによる一斉蜂起は、一気に港町ドルマン全体に戦闘が拡大し、方々に火の手が上がって行った。


 ドルマンに駐留する帝国軍の兵員数は5000名程度と推定されていたが、レジスタンス側より遥かに強力な装備を持ち、強固な防御砦に陣地を構えているため、それに倍する10000の兵力を持ってしてもレジスタンスは苦戦を強いられていた。


 次々と倒されていくレジスタンス兵士たちだったが、それでも人質同然の犬人族市民たちが帝国兵に蹂躙される状況だけは辛うじて防げており、一斉蜂起の成果はあったと言えた。


 だがそんな兵士たちの士気を挫きかねない事態が、目の前に迫っていた。


 というのも、輸送船を制圧したポーチ率いるレジスタンス精鋭部隊と、藤間警部率いるUMA室戦闘員の混成部隊が、帝国艦隊の攻撃を受け始めたのだ。


 レジスタンスもその所在を事前に確認できていなかった帝国艦隊が突如港内に侵入してくると、輸送船を一気に沈めてしまわんと魔法を始めとする遠隔兵器を無数に打ち込んできた。


 それを強固なバリアーで跳ね返してはいるものの、何度も破られてはバリアーを張り直す展開に、決して万全な防御でないのは誰の目にも明らかだった。




            ◇




「大丈夫か、水島」


 船倉の帝国兵を撃退して拉致女性を連れて甲板まで上がって来た敦史たちは、同じく帝国兵を撃退して甲板の占拠に成功していた藤間警部たちと合流した後、船全体を強力なバリアーで覆って敵の増援部隊をシャットアウトした。


 だか想定外だったのは、10数隻の大型艦からなる帝国艦隊に突如包囲されると、あらゆる魔法攻撃が対艦用大型射出兵器とともに集中砲火されたのだ。


 その中には帝国総督府から陽動作戦で誘きだされた魔導部隊の一部も合流しており、その攻撃の激しさにかなでのバリアーが10分と持たない有り様だった。


 そこでUMA室戦闘員全員で交互にバリアーを展開しながら、途切れることのない敵の攻撃をなんとかしのいでいた。


 だが思念波エネルギーは無限に使える訳ではなく、日本に比べてマナ濃度の低いこの世界では各人のエネルギーが枯渇するのはあっという間だった。


 そんな中、三度もバリアーを消失させられたかなでが次のバリアーの展開に向けて自身の思念波エネルギーの充填を始めながら、敦史の声かけに答えた。


「伊藤君、わたしはまだ大丈夫。それより他のみんなの方が持たないんじゃないの」


「ああ、俺は防御が苦手だからちょっとばかしきついな。翔也はすでにガス欠だし、藤間警部もそろそろ限界が近いと思う」


 敦史は後ろでぐったりしてる翔也に目を向けたが、拉致女性たちが取り囲んで必死で看病している姿を見ると、急に腹が立って来た。


「何でアイツばかりがモテるんだよ! 俺がみんなを助けたって言うのによ」


 翔也の透視能力があってこその救出作戦ではあったが、実際に帝国兵を倒したのは敦史とかなでだった。


 そんなかなでは少しホッとした表情で、


「・・・芹沢くんって、犬人族の女子にまでモテるのね。瑞貴くんがここにいなくて本当によかった」


「水島よ、お前の感想は結局それかよ。あ~あ、もうやってられねえぜ」


 絶望の表情を見せる敦史を、隣にいたポーチはクスクスと笑って励ました。


「元気を出しなさい、アツシ。女の子の中にはちゃんとアツシを見てくれてる娘もちゃんといるわよ」


「え? ほ、本当かポーチ!」


「本当よ。だからもう少し頑張りましょう。この状況では私たちレジスタンスには何もできないし、アツシたちの力に頼るしかないの」


「・・・ようし、じゃあもうひと頑張りするか。今バリアーを展開してくれてる神無月の次は俺だからな」


 そう言って敦史が弥生をチラッと見る。


 弥生はこのメンバーの中では少し事情が異なっており、瑞貴同様この世界に来てから思念波強度が増し、かなでが展開するバリアーに近いレベルのものが展開できるようになっていた。


 それでもまだかなでには及ばないし、エネルギー切れもそろそろ近い。


 それを感じ取ったかなでが敦史に提案する。


「このままじゃ神無月さんも私も長くは持たないし、神宮路さんに救援をお願いした方がいいんじゃない」


「それならさっき藤間警部が連絡してくれたよ。神宮路には何か作戦があるみたいで、もう少しだけ耐えてくれと言われたそうだ」


「そうなの? だったら神宮路さんのことだし、きっとなんとかしてくれるわね」



            ◇



 帝国総督府司令部を破壊したハウルと瑞貴たちは、だが未だに多くの帝国兵が守るこの旧王城を完全には制圧できていなかった。


 1階大ホールは何とか占拠することはできたものの、地下の武器庫や兵士詰所は完全に膠着状態になっており、建物の周りや城壁には帝国兵士たちがズラリと取り囲んでレジスタンスを圧倒している。


 建物の中とは違い、外は敵の数が多すぎたのだ。


 そんなレジスタンスが王城の正面玄関に当たる堅固な城門を巡って必死に戦っていたが、何回かの攻防を経た後どうにか城門を射程に捉える位置に橋頭保を確保することに成功した。


 そこから矢の撃ち合いが始まったが、やはり敵の数が多すぎて、レジスタンス兵士たちが次々と倒されていった。


 そんな惨状に対し、最前線に駆けつけた俺とアリスレーゼは、ガーネット伯爵との戦いで思念波エネルギーを使い切ってしまったため、今日一番の大軍を前になすすべがなかった。


「どうするアリスレーゼ。俺たちの思念波エネルギーが回復するまでまだ時間が必要だし、それまでに何か打つ手があれば教えて欲しい」


「ごめんなさい瑞貴。魔力がなければわたくしはどうすることもできないの。さやかさんなら、何か作戦を思いつかれるかも知れませんが・・・」


「さやかか・・・あ、しまった! 彼女に戦況を報告するのを忘れてた」


 俺は慌てて通信機のスイッチを入れると、すぐにさやかと連絡をとった。




「こちら瑞貴、さやか応答せよ」


『こちらさやか。瑞貴君無事だったのね! 本当によかったわ』


「連絡が遅くなってすまなかった。先ほど帝国総督のガーネット伯爵の捕縛に成功。現在は旧王城を制圧すべく残敵を掃討中。だが敵の数が多すぎてレジスタンス兵士たちが次々と倒されている」


『総督の捕縛、本当にお疲れさまでした瑞貴君。でも戦況はまだ予断を許さないということですね』


「そうなんだ、打つ手がなくて困っている。何か策があったら教えてくれないか」


 そして俺は現在の状況と帝国軍の配置をわかる範囲でさやかに伝えた。すると、


『状況は分かりました。藤間警部からも救援要請が出ていてこちらで作戦を検討していたのですが、同じ作戦が使えそうです。5分後にこちらから一撃を加えますので、友軍を城門付近から退避させてください』


「全員退避させればいいんだな。了解した!」


 通信機を切った俺は、アリスレーゼに頼んでこの場にいる全てのレジスタンス兵にテレパシーで指示を送ってもらう。


『わたくしはティアローズ王国王女アリスレーゼである。今からこの城門に大魔法による攻撃を加える。全兵士は至急この場を退避せよ。いぞげ!』


 帝国兵に対して決死の攻撃を続けていた兵士たちの頭の中にアリスレーゼの命令が直接伝えられる。


 それに戸惑う兵士たちだったが、最後の魔力を振り絞って二人でバリアーを展開し、最前線のさらに前、敵の真正面に躍り出て全ての兵士たちに見えるように手を振るアリスレーゼと俺の二人を見て、兵士たちは涙を流して感激した。


「うおーーーっ!」


「アリスレーゼ王女が最前線にお立ちになられた!」


「俺たちを導くために直接お言葉を告げられたぞ!」


「しかもその隣には、帝国軍魔導部隊をたった一人で倒した魔族の王子が共にいる!」


「俺たちは勝てる! 総員退避だ!」


 兵士たちはアリスレーゼの名前を口々に連呼しながら、一斉に退避を始めた。





 その5分後、自衛隊から発射されたミサイル、正確には12式地対艦誘導弾が夜空を駆けた。そのうちの数発は港町を飛び越えて港に展開する帝国艦隊に着弾。


 そして残りの1発は港町の中心にある旧王城の城門に着弾した。


 対艦ミサイルではあったが現代の軍艦を撃沈するために特化した弾頭の性能を持ってすれば、難攻不落を誇る堅固な城門をその要塞型バリアーごと一撃で粉砕するのに十分な破壊力を有していた。


 轟音と共に巨大な城門が崩れ落ちて行く中、それを目の当たりにしたレジスタンス兵士たちはその破壊力に熱狂した。


「さすがアリスレーゼ王女殿下の大魔法、神の奇跡か悪魔の所業か・・・」


「いや、きっとこれは魔族の王子の魔法だろう。さっきお前も見ただろ、あの帝国魔導部隊を赤子の手をひねるかのように瞬殺した王子の魔力の強さを」


「確かにあれは悪魔の所業だったな。・・・世界最強魔力を誇るアリスレーゼ王女殿下と魔族の王子。この二人の援軍があれば本当に全亜人種族の解放を成しうるかもな」


「ああ! そして俺たちはあの憎むべきグランディア帝国を全て追い払って、ドルマン王国を再建する!」




            ◇




 城門が完全に破壊され、おびただしい数の帝国兵が瓦礫の下に埋もれてしまった総督府守備隊は、間もなくレジスタンス側に全面降伏した。


 帝国兵が次々と投降し、旧王城正面に掲げられていたグランディア帝国の国旗が引きずり降ろされると、代わりにドルマン王国旗が高々と掲げられた。


 炎で赤く燃え上がる港町ドルマン。


 新月の闇夜に赤々と照らされたかつての王城にドルマン王国旗がはためく様子は、街のいたるところからも確認することができた。


 この総督府の陥落、そして港内に殺到していた帝国の大艦隊が一瞬で轟沈・壊滅した事実は、未だ要所で激しい戦いを続けていたレジスタンス兵士たちを鼓舞し、必死に防戦していた帝国軍兵士たちを絶望のどん底に叩き落とした。


 こうして犬人族レジスタンスの一斉蜂起は、夜が明ける頃には港町ドルマンの完全掌握という形で勝利に終わった。

 次回もお楽しみに。


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