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クラスメイトは異世界王女  作者: くまひこ
第1章 亜人解放戦争

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第8話 自衛隊出撃

 グランディア帝国ドルマン前線基地は、港町ドルマン西側の高地に築かれた広大な駐屯地である。


 元は王都ドルマンを守る軍事要塞であったが、王国が滅亡してグランディア帝国が接収してからは、海上輸送の要衝である港町ドルマンを守る帝国軍の拠点として、また南部異界門を通って日本に侵攻するための前線基地として、拡充に拡充を重ねて巨大な駐屯地に仕上がっていった。


 ドルマン前線基地には現在約2万の軍勢が日本進攻に備えて集結していたが、その約4割はオークやオーガなど属国支配している鬼人族の騎士団であり、その他に帝国本国からはグランディア騎士団が、その他の辺境からも各地の騎士団や雑兵、傭兵たちが召集されて、出撃の時を待ちわびていた。




 そんなドルマン前線基地の南方約10kmの地点では、闇夜に紛れて最新鋭の機甲旅団が展開していた。


 彼らは軍隊ではない。


 だが、この世界において最も統率のとれた武装集団である彼らは、この世界のどの軍隊を持ってしても倒すことのできない、最強戦力であった。


 彼らは約3000名の隊員を有し、この世界のいかなる兵器あるいは魔法の射程距離の遥か遠方から、確実に攻撃を命中させる手段を多数保有している。


 そう、彼らこそが日本が誇る自衛隊であり、陸上自衛隊を核として海上自衛隊、航空自衛隊の一部が参画する特別編成の旅団であった。



 その司令塔である幕僚本部が置かれた司令室では、加藤陸将補以下幕僚たちが偵察機の映し出す敵基地の映像を見ながら、ある通信が終わるのを待っていた。


 その通信とは、港町ドルマンの中心にそびえ立つ巨大な城塞「帝国総督府」に潜入した日本国在ティアローズ王国全権大使・前園瑞貴からの攻撃命令であり、それを受けているのは彼のフィアンセで高校のクラスメイトである神宮路さやか嬢であった。


 彼女は通信を終えると、少し表情を固くして幕僚たちに命令を伝えた。


「加藤陸将補、全権大使より攻撃命令が出ました」


「命令を拝受した。これより我が隊はグランディア帝国ドルマン前線基地に対し作戦行動に入る。りゅう弾砲大隊は攻撃を開始せよ」





 幕僚本部の指令は瞬時に各部隊に伝達され、最初に動き出したのは今回特別編成されたりゅう弾砲大隊であった。


 りゅう弾砲は高仰角で発射された砲弾が上空からほぼ垂直に落下して攻撃対象を破壊する武器であるが、貫通力で敵に打撃を与える戦車と異なり、着弾時に砲弾がさく裂して目標を破壊するのが特徴である。


 一方、グランディア帝国を始めとするこの世界の軍事基地は正面や側面の防御は堅牢であるものの、航空兵器がほぼ存在せず空襲を警戒する必要がないため、上空に対する防御が脆弱であることが多い。


 そこで日本政府は、この異世界に自衛隊を送り込むに当たって、最新式の19式装輪自走155mmりゅう弾砲を投入することを決定した。


 軍事衛星のサポートを受けられない異世界にあって、電子制御された最新鋭の装備は宝の持ち腐れだとの意見が出されたものの、異世界転移が行える総重量の上限の関係から、軽量で燃費効率のいい最新鋭の装備が選ばれた経緯があった。


 そして栄えある先陣を切ることができたりゅう弾砲大隊は、敵基地上空の偵察機からのデータリンクを受けて、精密射撃を開始した。


 一斉に発射されたりゅう弾は、コンピューターによって計算された弾道を描いた後に、攻撃目標となる帝国前線基地に次々と着弾する。


 司令室の大型モニターには偵察機によって撮影された敵基地の映像がリアルタイムで表示されているが、基地正面城壁、基地内部の防御砦や兵舎など、事前に決めていた攻撃目標の全てに砲撃が命中すると、広大な軍事基地がその機能をみるみる喪失していくのが誰の目にも明らかになった。


 基地が瓦礫と化し、方々で火の手が上がって兵士たちが逃げ惑う惨状を見ながら、加藤陸将補は各部隊に次の命令を伝える。


「りゅう弾砲大隊は攻撃を停止。ヘリ大隊と戦車大隊は基地内部に進入し、残敵を掃討しつつ、敵司令官を捕縛若しくは殺害せよ」


 これを受けてさやかは、通信機のスイッチを入れて瑞貴に連絡を取った。


「瑞貴君、先ほど自衛隊による攻撃が開始され、敵前線基地の破壊に成功しました。現在は敵司令官の捕縛と残敵の掃討に作戦が移行し、ヘリ部隊と戦車部隊が基地に向けて進軍を開始しました」


『えっ? 俺が攻撃命令を出してまだ5分もたってないのに、もう基地を破壊したのか?』


「ええ、奇襲作戦は大成功です。完全に無防備な敵に対して彼らの目視不可能な遠方から100%命中するさく裂弾を雨のように降らせれば、帝国兵の大半は自分達に何が起きたのかを理解する間もなく、瓦礫に埋もれて息絶えたもの思われます」


『わ、分かった・・・。ではレジスタンス側も攻撃を開始するから、帝国総督府上空に向けて信号弾を発射してくれ』


「了解しました」


『あ、それともう一つお願いしたいんだけど、総督府にいる魔導師部隊を前線基地の救援に向かわせたい。基地から逃げ出した兵士のうち騎士団幹部だけを総督府まで誘導して援軍要請させることは可能か』


「加藤陸将補と相談しますが、おそらく可能です」


『助かる。ではすぐ実行に移してくれ』





 戦闘ヘリから射出された照明弾が帝国総督府上空で炸裂して昼間のように港町を照らし出し、それを合図に一斉蜂起した犬人族レジスタンスの兵士たちが、街の要所に奇襲をかけた。


 港湾、北城門、南城門、住宅街、繁華街、倉庫街等に設けられた帝国軍の防御砦や兵士詰所など、全ての軍事施設が攻撃目標となったが、それに要するレジスタンス兵士の数は5000名以上にも及んだ。


 これほどの作戦が必要になったのも、港町ドルマンは帝国軍の完全な支配下に置かれていて、犬人族住民は事実上の人質となっている。この現状を覆すためには、全ての軍事施設を同時に叩く必要があるからだ。


 ただし唯一の例外は西城門。


 ここは総督府と前線基地を結ぶ帝国軍の連絡通路でもあり、戦闘が始まってしまうと前線基地と帝国総督府の間が完全に分断され一切の連絡が取れなくなる。


 そこでこの西城門だけは自衛隊が出動して「帝国軍の経路」を確保することになったのだ。


 すなわち、敵前線基地に向かう戦車大隊にあって、西城門の西1km付近を通過中の1台の10式戦車が、その砲塔をゆっくりと城門に向けた。


 アリスレーゼによれば、この世界では古来より魔法が発達していたため、火薬が未だ発明されておらず、鉄砲や大砲などの兵器が存在しない。


 そのため攻城戦は主に破城槌を使った攻撃となり、それに耐えられるように城壁は作られている。


 そんな城壁に向けて44口径徹甲弾が火を噴いた。




            ◇




 突然意識を失い、気がつくと瓦礫の下に埋もれていたグランディア帝国軍副騎士団長のリカルド男爵は、同様に瓦礫の下敷きになっていた部下数人を助け出すと、彼らを連れておびただしい数の友軍の遺体を踏みつけながら、前線基地から脱出した。


 途中、厩舎から逃げ出した軍用馬を捕まえて騎乗すると、燃えさかる基地を後に高地を駆け下りて行く。


 山道には、命からがら逃げだした帝国兵や傭兵たちが我先にと坂道を駆け下りて行ったが、突然空から何者かが接近してくると「タタタタタ」という音と共に兵士たちが次々に倒れていった。


「何が起きてるんだ! 一体誰が我々に攻撃を!」


「あれは空を飛ぶゴーレムだっ! どこかの大魔導師が我が帝国に反旗を翻したんだ!」


「こんな魔法、見たことも聞いたこともねえ! た、助けてくれ!」


 悲鳴を上げる騎士たちを何とか落ち着かせ、上空に静止しながら兵士たちを虐殺する巨大な鉄の化け物の攻撃を掻い潜り、全速力で馬を駆けるリカルド男爵。


 だが前方に港町ドルマンの西城門がうっすらと見えたあたりで、さらに別の敵が出現した。


 これもまた始めて目にする異形のゴーレムだった。


 その鉄のゴーレムは、帝国の魔導師たちが作り出す石のゴーレムよりもはるかに巨大で、しかも人の形すらしていなかった。


 固い甲羅を持つ昆虫のようなフォルムで頭の部分に大きな角のような突起物を持ち、そこから轟音と共に赤い火を噴き出すと、次の瞬間には前線基地の分厚い城壁を多数の兵士たち共々、粉々に打ち砕いていた。


「化け物・・・」


 そんな異形のゴーレムは軍用馬よりも遥かに速いスピードで高地を駆け上がっていくと、リヒャルド男爵たちの横をあっという間に通過して、列をなして基地に走り去った。


 そんな彼らの上空には、空を飛ぶ鉄の化け物が大挙して続いて行く。


「我が軍の基地を攻撃したのは、あのゴーレムたちだったのか・・・」


 リヒャルド男爵は基地防衛を預かる誉れ高き帝国騎士団の副騎士団であり、魔界討伐軍の一員にも抜擢された勇敢な騎士であった。


 ゆえに自分の命が助かればいいという雑兵や傭兵とは異なり、異形のゴーレムを迎撃すべく帝国総督府を守護する魔導師部隊の出動を要請すべきと考えた。


 そんなリヒャルド男爵は部下とともに西城門まで何とかたどり着いたもののその城門は既に破壊されていて、守備兵たちは瓦礫の下で既に息絶えていた。


「まさか総督府にまで敵の攻撃が及んでいるのか!」


 だが街の中心にそびえ立つ城塞は未だ無傷であり、そこに至るプロムナードには男爵を邪魔するものなど誰一人として存在しなかった。


「おいみんな、総督府はまだ健在だ。前線基地の状況を伝えて、あの化け物どもに反撃するぞ!」


「「「はっ!」」」


 リヒャルド男爵は馬を降りて城門の瓦礫の山をよじ登ると、あっという間に乗り越えて総督府目指して全力で駆け抜けた。


 だがその時彼には、なぜ自分たちを邪魔する者が誰一人としていなかったのかを考える余裕はなかった。

 次回「帝国総督府の戦い」。お楽しみに。


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