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クラスメイトは異世界王女  作者: くまひこ
最終章 侵略者グランディア帝国と日本防衛の最終決断

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第52話 神々の帰還⑤

 そして父さんからのブリーフィングが始まった。


「それでは本計画最終段階の説明を行う。グランディア騎士団本隊と交戦中の自衛隊は既に後退を開始しており、我々のいるこの地点へ全部隊が集結した時点で異世界への転移を開始する。そしてそのための思念波補助デバイスがあの装置になる」


 そう言って父さんが指差したのが、雨宮主幹たちが操作している謎の大きな装置だ。


「あのデバイスは正式名称を「虚数空間仮想フライホイール」と言い、鮫島指名手配犯からこの数か月の間吸い上げ続けていた思念波エネルギーを中に蓄積している。これを帝国の召喚士たちが作り出した異世界転移陣とリンクさせて思念波エネルギーを注入しており、現時点で充填率35%といったところだ」


「父さん、色々ツッコミどころ満載だが時間がないのであえて一つだけ言わせてもらう。鮫島の野郎を刑務所にぶち込まなかったのは、このデバイスに思念波エネルギーを蓄積させるためだったのかよ!」


「その通りだ瑞貴。アイツを刑務所に入れてしまったら思念波エネルギーを吸い取れないからな」


「つまり鮫島が逮捕もされずにのうのうと暮らしていたのは、自衛隊を異世界に転移させるための作戦の一環だったのか・・・」


「もちろんそれだけじゃないぞ。アイツはこともあろうに我が国の国賓であるアリスレーゼ王女殿下を誘拐して異世界に逃げ込んでしまった。従って我々日本政府は鮫島を国際指名手配し、「グランディア帝国を名乗るテロリストが支配する武装地域」に日本の警察を送り込むことを決定した」


「・・・え? アリスレーゼは無事助け出したじゃないか。何を言ってるんだよ父さん」


「王女殿下をお救いするには弥生の瞬間移動を使うしか方法はなかったが、彼女の能力は最厳秘で公式にはその存在を認められていない。よって王女殿下を救いだしたという事実は存在せず、我々は国家の威信にかけて鮫島とテロリスト集団から我が国の国賓をお救いすべく異世界へと赴かなければならない」


「政府の公式見解ってやつか。それとアリスレーゼが国賓ってどういうことだ?」


 俺はさっき意識を取り戻したばかりのアリスレーゼに目を向けると、それを見た父さんは後ろにいる政治家たちに合図を送った。


 すると黒川総理以下政治家たちがぞろぞろとアリスレーゼの前に並んで一礼した。


 そして父さんも一礼すると、懐から一枚の書類を取り出し、それを読み上げた。


「アリスレーゼ・ステラミリス・フィオ・ティアローズ殿、本日付で貴殿を警察庁戦闘員職から解任する。これは不利益処分に当たるため、異議申し立てがあれば国家公安委員長宛に書面を持って提出してほしい」


「不利益処分って・・・そうか昨夜アリスレーゼに送付された警察庁への出頭命令はこれだったのか」


 だが父さんからいきなりそんなことを言われて戸惑うばかりのアリスレーゼに対して、今度は黒川総理が彼女の前に歩み出ると、にこやかな笑みを浮かべてその言葉を伝えた。


「我が日本政府はティアローズ王国を国家として正式に承認し、その国家元首である貴殿が我が国を訪問されたことを歓迎するものであります。同時にティアローズ王国の領土を不法占拠している「グランディア帝国を名乗るテロリスト」の行為は決して許されるものではなく、我が国は彼らに対して強く非難するとともに、貴国の速やかなる国土回復を全面的に支援するものであります」


 俺が呆気に取られていると、アリスレーゼはいつものプリンセススマイルを作って背筋を正し、丁寧なお辞儀をして黒川総理に言葉を返した。


「日本国による我がティアローズ王国の国家承認に感謝の意を述べさせて頂きます。同時に我が国同様グランディア帝国から理由なき武力侵攻を受けている貴国と連帯できることを大変心強く感じます」


 そして彼女が再びお辞儀をすると、黒川総理とその後ろに並んだ政治家たちも再び一礼し、SPや自衛隊幹部たちは一斉に敬礼した。


「そうかこれは形式なんだ。アリスレーゼを警察庁職員、つまり国家公務員の身分を失くした上で、改めて国賓として正式に日本に迎え入れ、既に滅んだティアローズ王国を国家として正式に認めたんだ」


 一方グランディア帝国は日本政府から国家として承認されなかった。将軍様が支配するあの国のように。


「ようやくお前の頭も理解が追い付いてきたようだ。つまり鮫島が行った一連の犯罪行為は、自衛隊を異世界に転移させるための法的根拠となるものなんだ」


「なるほど・・・つまり国際指名手配犯の鮫島が異世界に逃亡したからアイツを捕まえるために自衛隊を送り込むってことだな。そのためにまず鮫島に犯罪を犯させる必要があり、国賓であるアリスレーゼを拉致するようにわざと仕向けた。何て汚ったねえ手口だ」


「おとり捜査は我が国では認められていないが、そんなことは言わなきゃ誰にもバレないし、国際法の裏をかいて自衛隊を海外に派遣するためにはこれぐらいの法的根拠は用意しておく必要があった」


「やりたい放題だな、父さんは・・・」


「それに日本の量刑だと鮫島はせいぜい10年程度で刑務所から出て来て、その後再犯を繰り返すだろう。だったらいっそのことアイツを骨の髄まで利用し尽くした方が、国民の利益の追求になると思ったのさ」


「思ったのさって・・・鮫島への人権侵害が酷すぎて最早言葉も出ないよ。あの鮫島も、父さんに目をつけられたのが運の尽きということか」


「おいおい瑞貴、そんなに父さんを褒めるなよ」


「誰も褒めてねえよ!」


「それに弥生の能力のお陰で王女殿下は無事助け出せた訳だし、後は異世界に乗り込んでグランディア帝国をぶっ潰して、ついでに鮫島を逮捕すればいいだけの話だ。しっかり頑張って来いよ瑞貴」


「頑張って来いよって・・・え? 俺が行くのか?」


「お前、父さんの話を聞いてなかったのか? 異世界には鮫島を逮捕しに行くんだから、あくまでも警察がメインで自衛隊はただの護衛だ。そして現在ここにいる警察官はUMA室戦闘員であるお前たちだけだろ」


「ウソ・・・だろ」





 父さんの頭の中では、俺たちが異世界に行くことが既に決まっているようだが、俺には異世界に行けない事情がある。


「先に父さんに言っておかなければならかったが、アリスレーゼの母親が未来予知の魔法を使ったところ、彼女が異世界に戻るとアレクシス皇帝の子を宿してしまって皇帝の世界征服が完成してしまうという予言をしていたんだ。だから彼女は異世界に帰れないし、俺は彼女を守るために日本を離れるわけにはいかない」


「・・・未来予知の魔法でそんなことも分かるのか。ならもう一度その魔法を試してみようか。ひょっとしたらその未来は変わっているかも知れないからな」


「もう一度試すと言っても、女王陛下は既にこの世にはいないし・・・」


「愛梨がいるじゃないか。おい愛梨、このデバイスを握った状態で、俺の計画通りにお前たち全員で異世界に向かう場合とそれをやらなかった場合で、どんな未来が待ち受けているか予言してみろ」


「分かったけど、愛梨はもうエネルギーが底を尽きてるよ」


「それは大丈夫だ。そのデバイスは「虚数空間仮想フライホイール」にため込んだ鮫島の思念波エネルギーを取り出すことができる端末なんだ。構わんから遥か遠い未来まで全部予知してみろ」


「うえぇ! 鮫島の思念波なんか気持ち悪いよ」


「気持ち悪くなんかないぞ。鮫島の思念波エネルギーと言っても元は自然界の生き物から少しずつ分けてもらったものだから、キレイなもんだぞ」


「自然界の生き物・・・それならまあいいか」


 そう言って父さんに言い含められた愛梨がデバイスのスイッチを入れて未来予知を開始すると、


「わっ、わっ、わっ、何これ・・・すごいエネルギーが愛梨の中に入って来る! え、え、え・・・未来がたくさんありすぎて、どれを選んでいいのか分からない。どうすればいいの、お父さん!」


「それじゃあ、数ある未来シーンの中から愛梨が一番好きなものを選んで、それが起きるにはどんな行動を選択すればいいのか、逆にたどって行くんだ」


「うん分かった! ・・・ええっとどれがいいかな」


 それから愛梨は目を瞑ってしばらく黙り込んだ。そんな愛梨の身体からは膨大な量の赤いオーラがどんどん溢れ出していた。


 そして、とある未来にたどり着いたのか、突然目を開けた愛梨が嬉しそうに俺の顔を見て叫んだ。


「・・・ウソ! 本当にこんな未来が来るの?!」


 だが父さんは慌てて愛梨の口を押えて、


「どうやら素晴らしい未来が見つかったようだな。だがな愛梨、それを口にしたらタイムパラドックスが発生してその未来は消えてしまうかもしれない。だから絶対に誰にも言わず、どんな行動を選択すればいいかだけを言うんだ」


「ええっ?! この未来は絶対消えちゃダメだよ!」


「だったらそこから過去に遡って、大きな選択肢だけを拾って行くんだ。できるか?」


「わかった! うーんとこれはどうやってこうなったかというと・・・あ、そういうことか。それで・・・ええっ、お兄ってそうだったの? おおお、すごい」


 愛梨が興奮したり感心したりで忙しそうだったが、どうやら現在まで帰ってこれたようだ。それを見た父さんが改めて愛梨に尋ねる。


「さあ愛梨、お前が見た未来が実現するには、我々はどんな行動を起こせばいい」


 その簡単な問いかけに、一同ごくりと唾をのみ込んで愛梨の答えを待った。そして彼女が出した答えは、



「お父さんの計画通り、愛梨やお兄たち全員で異世界に行くのがいいと思う。もしもこのまま日本に残ったら「人道と平和のため」とか言って左派政権がお姉を帝国に引き渡してしまい、愛梨たちとは二度と会うことができなくなる上、帝国の襲撃はその後も続いて日本は・・・」


 愛梨は後に続く言葉を口にしなかったが、その後に何が起こるかはこの場にいる全員が理解できた。


 俺は愛梨に一つだけ質問をする。


「アリスレーゼを守るには、俺たち全員が異世界に行けばいいんだな」


「うん。もちろん異世界に行っても必ずお姉を守りきれる訳じゃないけど、異世界に行かずにお姉を守るには今すぐ日本を捨てて亡命しないとダメだよ。それでもあまりいい未来は来ないけど・・・」


「異世界か亡命か。いずれにせよ日本に留まる選択肢は俺たちにはない訳だな・・・」





 俺は仲間たちの顔を一人ずつ見渡していく。


 アリスレーゼが表情を消して真剣に考えているのは、母親の遺志に反する行動となるからだろう。


 その反対に、愛梨はキラキラした笑顔で俺の決断を待っている。コイツそんなに異世界に行きたいのか。


 水島さんは俺に全てを委ねるかのようにニッコリと微笑んでいるが、なぜか芹沢まで彼女と全く同じ表情をしているのがよくわからんし、なんか気持ち悪い。


 そんな中、不安そうな表情で真剣に悩んでいたのが敦史だ。


「おい瑞貴、本当に異世界なんかに行って、俺たちは大丈夫なのか」


「だよな、普通は悩むよな。敦史は異世界に行くのは嫌か」


「嫌じゃないさ。子供の頃はよく異世界に転移した自分を想像して楽しんでいたが、実際に行けるとなると家族の許可をどうやって取ろうかとか、その後を人生をどうするかとか現実をあれこれ考えてしまう。特に来年は俺たち大学受験だしな」


「大学受験か・・・」


 愛梨はともかく、常識的だと思っていた水島さんや芹沢が異世界行きに抵抗を示さない中、意外にも敦史から現実的な問題を指摘された。


 だが俺たちの様子を見ていた進藤幹事長が突然話に割り込むと、


「この計画は現政権を担う我々の責任で行うものだから、もし異世界に行く決断をしてくれたら我々が最大限の支援を約束しよう」


「え・・・進藤幹事長が支援を?」


「当たり前だよ。みんなの親御さんには我々から事情を説明しておくし、大学についても防大や防医なら入学できるよう配慮する。もっとも私大なら異世界帰りの君たちを喜んで受け入れてくれるところもあると思うし、奨学金が必要になれば用意しておこう」


「マジか・・・そこまでしてくれるなら、異世界行きを拒む理由なんかどこにもねえな」


 慎重な態度を見せていた敦史が乗り気になると、メンバーの中に異世界に行きを拒む者はいなくなった。するとアリスレーゼが俺たち一人一人の顔を見てゆっくり頷くと、


「わたくしは「アレクシスの子を産んではならない」という母の遺志を守るため、グランディア帝国の魔の手から必死に逃げて参りました。ですが、今度は帝国に立ち向かわなければならないのであれば、わたくしに選択肢などございません」


「アリスレーゼ・・・」


「わたくしは愛梨ちゃんの予知能力を信じていますし、みなさまの力も・・・。そしてミズキ、わたくしのことを絶対に離さないで下さい」


 グランディア帝国に立ち向かう意志を固めたアリスレーゼが、だが懇願するように俺を見つめている。


 もちろん俺は力強く頷き、


「ああ! この命に代えてもキミのことは俺が守る。だからアリスレーゼ、これから何があっても絶対に俺の元から離れるな!」


「はいっ! 何があっても」


 アリスレーゼが満面の笑顔でそう答えると、俺たちの異世界行きがここに決定した。

次回もお楽しみに



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