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クラスメイトは異世界王女  作者: くまひこ
最終章 侵略者グランディア帝国と日本防衛の最終決断

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第49話 死闘の果てに得たもの

 駅の反対側で激しい戦いが行われていることは少し前から感じていたが、それが神宮路さんとヴェイン伯爵によるものだと分かったのはインカムから聞こえる愛梨の悲痛な叫びを聞いてからだった。


『お兄っ! 神宮路さんを早く助けてっ! でないと死んじゃうよ・・・』


「死ぬって・・・そうか、愛梨の予知能力か! 今すぐ俺が助けに行くから、愛梨はアリスレーゼと一緒にそこを動くんじゃないぞ」


『言われなくても分かってるよ・・・それよりお兄、神宮路さんをお願いっ!』


 それだけ言うと愛梨の通信は切れてしまったが、その話を聞いていた葵さんは俺が言うより早く、思念波を振り絞って何かの技を発動させた。


「これが私の秘密兵器「瞬間移動」よ。みんな球体の中に入って!」


 突然、葵さんの右側に直系3メートルほどの巨大な暗黒球体が姿を現すと、彼女はその中に入って行って俺たちに手招きをする。


「よし! 水島さんとヒッグス、この現場は後回しでいいから早くこの球体に飛び込め!」


「うん、わかった!」


「アオイ殿がまさか闇魔法まで使えるとは・・・だがジングウジ殿の救援、このヒッグス委細承知した!」


 そして俺たち4人が球体に入った瞬間、周りの景色が大きく歪んで、その次の瞬間にはバスターミナルの真ん中に立っていた。


 だがそこで最初に目にしたのは、全身から血を流して倒れている神宮路さんと、そのすぐ傍でやはり血を大量に流しながら顔面蒼白で立っていたヴェイン伯爵の姿だった。


「貴様・・・よくも神宮路さんを!」


 彼女にトドメを差そうと呪文を詠唱していたヴェイン伯爵は、だが俺たち4人の姿を見ると慌てて手に持っていた銀の錫杖を天にかかげた。


【ガハッ! くそっ・・・後少しでこの女の息の根を止めていたものを・・・この恨み、必ず晴らしてやるが・・・今はまだその時ではない】


「待て、ヴェイン伯爵っ!」


 俺は即座に思念波弾を発射したが、魔法陣の輝きと共に薄く消えていく伯爵の身体を通過すると、乗客が退避した無人の市バスに命中し、窓ガラスが木っ端みじんに吹き飛んだ。


「くそっ! 一歩遅かったか・・・」





 そして俺たちはすぐに神宮路さんを助け起そうと駆け寄ったが、彼女の姿を間近でみた途端その手が止まって身体中の血がスーッと引いて行くのを感じた。


「神宮路さん・・・そんな」


 彼女は全身に深い傷を負っていて、特殊金属が織り込まれた戦闘服さえも無惨に切り裂かれ、彼女の白い素肌からは鮮血がドクドク流れ出していた。


 特に正視できなかったのが、腹部からの大量出血と既に失われていた右腕だ。


 学園一の美少女と評判の新生徒会長が無惨な姿をさらけ出しながら、光を失った目でただ虚空を見つめており、水島さんが彼女の耳元で必死に名前を呼びかけても、か細い声でうわ言を呟くだけだった。


「・・・瑞貴君・・・わたくしは・・・役目を果たせたかしら・・・」


「聞こえるか神宮路さん! 俺だ、前園瑞貴だ!」


 だが俺の呼びかけに彼女は何も答えず、


「・・・瑞貴君の望みは・・・こ、これで叶ったはず・・・アリスレーゼ様・・・後をお願い・・・」


「神宮路さん! 頼むから気をしっかり持て!」


「・・・ああ寒い・・・恐い・・・助けて、瑞貴君」


「俺はここにいる! だから・・・」


「・・・さようなら・・・わたくしの・・・瑞貴君」


「神宮路さん、死ぬなーっ!」


 俺は必死に呼びかけたが、彼女は最後に俺の名前を呼んだきり、目を見開いたまま何も話さなくなった。


 水島さんは彼女の左手を握り締めながら大声で泣き叫び、葵さんはどこから見つけたのか神宮路さんの右腕を大切そうに抱えていた。


「くそっ! 俺が彼女にアリスレーゼの護衛を頼んだばかりに・・・でもこんなことって」


 俺は神宮路さんに甘えていた。


 彼女は完璧超人で何でもできると錯覚していたが、ついこの前までは普通の女子高生だったんだ。


 それなのに彼女は戦闘員になったばかりか、俺たちのチームリーダーとして全体指揮を取ったり総司令部とのやり取りを一手に引き受けてくれていた。


 そんな彼女に俺はアリスレーゼの護衛まで押し付けてしまったのだ。


「神宮路さん、キミに甘えてばかりで本当に俺がバカだった。すまん、許してくれ・・・」


 俺の幼馴染みで婚約者だった神宮路さん。


 本当なら彼女と結婚して、長い人生を二人で一緒に生きていくはずだったが、そんな彼女はもうこの世にはいない。


 それなのに俺はアリスレーゼのことばかり気にして、彼女には何もしてあげられなかった。


 俺は彼女の気持ちを少しも考えず、優しい言葉一つもかけてやれなかったじゃないか・・・。


 彼女を失ってからそんなことに気づくなんて、本当に俺はバカだった・・・。


「何をやっていたんだ俺は・・・くそっ」


 あまりの絶望に全身の力が失われ地面に両手をついて泣き崩れる俺の涙がアスファルトを濡らしていく。





            ◇





「まだよ瑞貴! 神宮路さんの命を助けたいのなら、今から私の言う通りにしなさい!」


「えっ?」


 振り返るとそこには、息を切らして駆け付けて来た母さんの姿があった。


「母さん・・・どうしてここに」


「愛梨ちゃんが泣きながら電話してきたのよ。それより水島さんは今すぐ治癒能力を全開にして、その全てを神宮路さんの生命維持に使いなさい! とにかく出血が多すぎるから止血と造血が最優先よ。彼女が蘇生できるかどうか、全てはあなたにかかっているの!」


「はっ、はいっ!」


「それから葵さん、あなたはその右腕の切断面の時間を遅延させて劣化を防ぎなさい。もちろん腕の付け根や腹部に空いた穴も、身体中の傷もとにかく全部よ」


「お母様、どうして私の能力を?」


「そんなの少し考えれば誰でも分かるわよ。とにかく急ぎなさい、早くっ!」


「は、はい!」


「それから瑞貴は念動力で心臓マッサージよ! 心臓を捻り潰さないように優しく一定のリズムでお願い。それと全身に付着した微生物やウイルスを念動力で遮断。一切の不純物を彼女から遠ざけること!」


「心臓マッサージは大丈夫だけど、微生物の遮断ってどうやればいいんだよ!」


「物質の組成変化とやり方は同じで、空気中に漂うDNAやRNAを選択して移動させるの。完璧じゃなくていいから救護班が来るまでその二つを続けなさい」


「それで彼女は助かるのか!」


「五分五分ね。だから最後まであきらめないこと」


「分かったよ、母さん!」


「それからヒッグス。あなたは敵の攻撃からこの場を死守すること。この私が許すから、神宮路さんの治療を邪魔する者は敵と見なして全員殺しなさい」


「承知しましたぞ、母上殿!」


 そして俺たちはいわれた通り必死に蘇生を試みた。


 その間に母さんは方々に電話を掛け始めると、警察の救護班やら救急車やらが続々と集まって来て、医療スタッフたちにも次々に指示を出していく。


「バイタルの確認を急いで。・・・傷口は塞いでいるけど血圧は低下したままだし輸液じゃ足りないわね。今から言う薬剤をそれぞれ所定の分量注射して、患部保全も必要だからその薬剤は」


「済みませんが、医師の指示がなければ治療行為は行えません・・」


「そんなのどうでもいいから、言った通りなさい!」


「しかし・・・」


 医療スタッフを怒鳴り始めた母さんだったが、さすがに素人の指示は聞けないだろう。・・・と思っていたら、藤間主任が警察救護班に命じた。


「たった今、警察庁の小野島室長から指示があった。あとで厚労省に詫びを入れておくから、今は前園夫人の指示を医師の指示とみなして、速やかに治療に当たれとのことだ。早くしろっ!」


「「「は、はいっ!」」」


「小野島室長って・・・なんかすげえな」


 そして神宮路さんのリムジンも現場に到着し、中からアリスレーゼと愛梨が飛び出してくると、二人とも泣きながら神宮路さんに駆け寄った。


 だがそんな二人にも母さんは容赦なく指示を出し、泣く暇も与えずこき使った。


 そうしているうちに、近くの総合病院の受け入れ態勢が確認できたため、母さんは神宮路さんを救急車に押し込むと、水島さんと葵さんを連れてサイレンとともに走り去って行った。


「行ってしまった・・・神宮路さんを頼むよ母さん」





            ◇




 その後のことはあまり覚えていないが、掃討戦を終えて敵全員を逮捕した頃には辺りはすっかり暗くなっていて、パトカーで家まで送り届けてもらった俺たち3人はリビングのソファーに座り込んでぐったりしていた。


 疲れているはずなのに今夜は全然眠れそうになく、目をつぶれば腕がちぎれて満身創痍の神宮路さんの姿が脳裏に焼き付いて離れなかった。


「戦闘員になるということは、いつ死んでもおかしくないってことなんだ。その覚悟が俺にあったのか」


 頭では分かっているつもりでいたが、いざ仲間の死を実感すると身体が震えて止まらなかった。


 それは二人も同じらしく、愛梨は俺の腕にしがみついて離れようとしないし、アリスレーゼは自分の代わりに犠牲になった神宮路さんに心を痛めて、謝罪の言葉をつぶやき続けている。


 そうしてしばらく3人で黙り込んでいたが、沈黙が重くのしかかって頭が変になりそうだったので、帰り際に雨宮主幹から「絶対見るな」と言われていたテレビをなんとなくつけてしまった。


 今の時間は夜の10時を回った頃で報道番組がメインの時間帯だが、今日のトップニュースはやはりグランディア帝国騎士団と俺たちの戦いだった。


 いつものパターンだと戦いの様子がダイジェストで流された後に軍事評論家の解説があるのだが、今日はいつもと違って映像の後半は敵兵士へのインタビューだった。


「何だこれは・・・アイツら、さっき捕まえたヴェイン伯爵の雑兵じゃないか。いつの間にこんなインタビューをしていたんだ」


 俺が呆気に取られていると、テレビ画面では彼らが口々にとんでもないことを話していた。


『確認ですが、あなた方はオークやオーガではなく、普通の人間なのですね』


【もちろんです。我々は誘拐された姫様を取り戻しにティアローズ王国からやって来ました】


『姫様が誘拐されたとのことですが、その辺りの話をもう少し詳しくお聞かせいただけますか』


【はい。姫様の名前はアリスレーゼ・ステラミリス・フィオ・ティアローズ。我がティアローズ王国の次の女王となられる第一王女殿下です】


『次期女王陛下・・・ですがそんなVIPが日本に来ているという情報はありませんが』


【姫様はそこの馬車の中に囚われています。すぐにお助けしなければ!】


『馬車・・・ですか? それはUMA特戦隊の司令塔の神宮路さやか嬢が乗るリムジンですが・・・いや、アリスレーゼと言えば確か黒髪王子のお姉様の』


【帝国の魔導師様がおっしゃるには、姫様は洗脳され自分が王女であることも忘れていらっしゃると】


『洗脳・・・それが本当なら大変なことです。では、あなた方リッターが日本に攻めてくる目的はずばり』


【もちろん拐われた姫様をお救いするため】


『そうだったのですか。ではそのアリスレーゼ王女殿下の洗脳が解けて王国に戻られれば、あなた方の目的は達成されると』


【帝国の魔導師様が我々をここに連れてくる際、「姫様さえ救い出されれば、これ以上帝国の若い命を散らす必要がなくなるので協力して欲しい」とおっしゃってました】


『つまりこの日本に攻めてくる理由はなくなる』


【そのとおりです】


『これはとんでもない事実が発覚しました。政府は未確認知的生命体からの襲撃に対処するとこれまで説明してきましたが、相手は人間でしかも日本側による拉致加害や、新兵器の実験を彼らに対して行っていた可能性も否定できません』





「何だこのインタビューは・・・」


 あの雑兵たちを逮捕する前に、まさかこんな映像を取られていたとは・・・。だから雨宮主幹は俺たちにテレビを見るなと言ったのか。


 それにこの言い方だと、アリスレーゼを帝国に引き渡せばリッターの襲撃が無くなるかのような主張になっている。絶対におかしいよこれ。


「ミズキ! あの者たちはヴェイン伯爵の洗脳にかかっています。マインドリーディングで確かめたので、間違いございません」


「洗脳されているのは、あの雑兵たちの方か。でもそんなことマスコミに分かるはず無いし、これってマズくないか」


 そして俺の不安どおり、番組はアリスレーゼを帝国に引き渡してこの騒動を早く終わらせるべきだという論調が展開され、この日を境に日本の世論は二つに分裂することとなる。

次回もお楽しみに

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