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クラスメイトは異世界王女  作者: くまひこ
最終章 侵略者グランディア帝国と日本防衛の最終決断

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第47話 Friendly Fire

今回のエピソードはあまり異世界ファンタジーっぽくありませんが、伏線ですのでご容赦ください。




 その日俺はソファーに座って、普段はあまり見ない朝の報道番組をボンヤリ見ていた。


 選挙を控えた各政党による討論会らしく、最大の争点である自衛隊の治安出動の是非について各政党の主張が述べられた後、番組が示すお題ごとに意見が交わされる形式のようだ。


 各政党とも選りすぐりの論客を送り出して来ているとのことで、与党からは次期首相との呼び声の高い、防衛大臣経験者の新藤幹事長が番組に出演していた。


 彼の主張は、京都へのリッター襲撃の際にもっと早く自衛隊を出動させていれば、一般市民や警察官の中にも救われた命が多かったはずだとして、決断が遅れたことに反省の意を示すとともに、その原因となった関係法令の不備を正し、必要があれば憲法改正も辞さないという主張だった。


 野党はそれに対して猛反発し、最初のお題である『リッター対策』について議論がスタートした。


『現行法でも一応はリッターへの対策は可能であり、自衛隊の治安出動はまさに警察では手に負えない大規模な争乱やテロに備えるものであって、今回のリッター襲撃は法が予定した事態に適合している。だが、京都の件でも分かるように自衛隊が行えることが限定列挙されている今の仕組みでは制約が多すぎる』


 新堂議員が口火を切ると野党議員も、


『だからといって対戦車ヘリを多数投入して市街戦を始めるのはやりすぎだ! 安易に自衛隊を使うのではなくまずは警察力の強化を考えるべきであり、例の特殊部隊の数を増やせばいいじゃないか』


『あれはまだ試行段階の部隊であり、詳しくは話せないが特殊な適性を持った隊員個人の能力に大きく依存していて、現時点で簡単に組織の拡充はできない。政権を預かる責任政党としては、リッターに対抗できる武力を既に持っている自衛隊を積極活用して国民の生命を確実に守るべきと考え、むしろヤツラを敵性国家とみなして防衛出動をすべき事案とも考えている』


『治安出動でも行きすぎなのに、防衛出動とは何たる暴言。このような人物がいる現政権に任せていては、この日本に軍国主義が復活してしまう。今こそ憲法を守り、防衛費の増大に歯止めをかけて平和国家日本を堅持すべきだ』


『それではまるで自衛隊の存在が悪のように聞こえるではないか。大切なのは国民の命を守るためにあらゆる手段を惜しみ無く使うことであり、それを妨げるような憲法なら今すぐに改正すべきなのだ!』


『憲法改正などもっての他だ! 今やるべきは防衛費増額ではなく少子高齢化対策と消費減税であり、』


 与野党の議員たちが自分たちの主張をぶつけ合っているが、しばらく聞いていても考え方が違いすぎて、どこまでも平行線が続いて折り合いがつかない。


 隣に座るアリスレーゼも不思議そうに、


「彼らは互いの意見に耳を貸そうとしないようですね。討論会はいつもこのような感じなのでしょうか」


「そうだな。政治家同士の討論なんていつもこんな感じで、議会で過半数を取った政党の考えで政治が動くから、相手を論破するより有権者に自分たちをアピールするためのプレゼンの場なんだよ・・・たぶん」


「なるほど、物事の良し悪しを討論でハッキリさせるわけではなく、多数決で決めるための仲間集めなのですね。ティアローズ王国の元老院は、貴族たちが互いの利害を調整して折り合いをつける場所であり、国王がそれを最終決定する体制なので考え方がまるで逆ですね。でもこれだけ国が栄えているのですから、きっと優れた統治方法なのでしょう」


「うーん、これを見ている限り優れた方法とも思えないんだが、この国って与党はいつも同じだから結果的にはティアローズ王国とそんなに違わないのかも」


「でしたら何のために選挙をやっているのでしょう」




 その後も議論がかみ合わないまま番組は進んだが、ある左派政党から他とは全く違う切り口で問題が提起された。


『このフリップをご覧ください。これは我が党が国会で政府から引き出した答弁に基づき、情報公開請求によって関係省庁に開示させたリッター出現場所の全データです。これを見ると、京都のオーガ騎士団襲撃事件の前後でその出現傾向がまるで違うのです』


 その議員が出したフリップを見ると、京都以前には山中にしか現れていなかったリッターがその後は市街地にばかり襲撃してくるようになっていた。


『我々が指摘したいのは、彼らが襲撃してくるその具体的な場所です。ある共通点があるのを皆さんはお気づきになれますか』


 そう言って、各党議員や視聴者に疑問を投げかける野党議員。そしてみんなが首をひねる中、彼は得意げにその答えを明かした。


『京都桂川、名古屋栄町、大阪難波、神戸三宮・・・この共通点は、必ず近くに自衛隊の駐屯地、もしくは警察特殊部隊の詰所があるのです』


『自衛隊の駐屯地だと? ・・・偶然じゃないのか』


『いいえ、リッター襲撃現場への部隊の到着時間から逆算して、自衛隊や警察の基地を狙っていることは明らか。特に決定的だったのが、例の高校生戦闘員たちが通う明稜学園にリッターが襲来してきた事実』


『明稜学園・・・あれは確かに異質な事案だったが、首都圏のしかも都市部にある学校だし、最近の傾向から見て特に違和感はない。それこそ偶然だろう』


『あれ? リッターを敵性国家とみなして防衛出動をほのめかす進藤幹事長の発言とは思えませんね』


『何だと?』


『仮にリッターが統制された軍隊だとして、なぜ自分からわざわざ倒されるために敵軍の目と鼻の先に現れて、無辜の市民に刃を向けるのですか』


『それは・・・』


『リッターが特撮戦隊モノに出てくる、愚かで愉快な敵役と言うのなら話は別でしょうが、これに違和感を感じないなら進藤議員はテレビの見すぎと言う他はありませんな』




 俺はその野党議員の指摘に驚いた。


「この議員の言っていることは俺も気になっていた。俺たちの学園に襲撃してきたのもそうだし、その後も俺たちの街周辺にばかり襲撃が散発している」


「ミズキ、グランディア帝国の目的は何でしょうか。まさかこのわたくしを狙っているのでは・・・」


「アリスレーゼを? だがリッターの襲撃自体は1年以上も前、つまりアリスレーゼが日本に転移して来るずっと前からあったと雨宮主幹も言っていた。だから全く別の目的だと思いたいが、もしキミを狙っているのなら俺が絶対に守ってやる!」


「ミズキ!」


 不安を覗かせながらも嬉しそうに俺の手を握り締めるアリスレーゼを、その反対側に座っていた愛梨が力ずくで振りほどく。


「お姉のことは愛梨の予知能力で守ってあげるから、それ以上お兄にベタベタしないで!」


 そう言って頬を膨らませて、俺とアリスレーゼの間に無理やり割って入る愛梨だったが、3人でわちゃわちゃやっているうちに、気がつくと討論番組はなぜかおかしな方向に議論が進んでいた。


『つまり基地があるからそこに敵が攻め込んで来るのであって、武力を放棄すればリッターの襲撃はなくなるはず!』


『無責任なことを言うな! それならキミは警察の特殊部隊も存在しない方がいいというのだな!』


『そのとおり。まだ未成年の高校生にUMAと戦わせるなど児童虐待と言わざるを得ないし、戦前の学徒動員以下の暴挙。そんな彼らの犠牲の上に成り立つ特殊部隊などとっとと解散して、彼らを普通の高校生に戻してあげるべきだ』


『今は非常事態だし、彼らの活躍でたくさんの命が救われている。その現実を無視するのか!』


『毎年の交通事故の死亡者は約3000人で、リッター襲撃の犠牲者の数倍近くに上る。なのに交通事故の対策もまともに行わず、リッターを理由に思念波補助デバイスなる新兵器開発や自衛隊の拡充など、どうみても近隣諸国への侵略の意図を隠しきれていない』


『交通警察はしっかり働いているし、そもそも交通事故と武力攻撃の死者数を同列に扱うのがおかしい! それに近隣諸国の軍拡の速度の方が異常であり、批判したいなら向こうに言え!』


『他国への批判は外交権を持つ政権与党の仕事であって、我々野党はあなたたち与党の暴挙を監視するのが役割。それに我々は違憲の存在である自衛隊を廃止すべきと考えており、自衛隊さえ解散すればリッターの襲撃目標もなくなり、この日本に真の平和が訪れる』


『それを本末転倒だと言うのだ! 彼らに対抗できる武力がなければ、リッターによる被害はもっと大きかったはず』


『我々はそうは考えない。際限なく拡大する軍拡競争に歯止めをかけ、全ての武力を放棄してこそ真の平和が訪れる。それこそが憲法が掲げる日本人の目指すべき方向であり、この憲法がある限り日本が他国から侵略を受けることはあり得ない』


『近隣の将軍様もウチの憲法を完全無視してるのに、オークやオーガがイチイチ日本国憲法を読んでから、日本に攻め込むかどうか考えるというのか! バカも休み休み言え』


『バカとは何だ! 今のは明らかな名誉棄損であり、今の発言は国会の場でしっかり追及させていただくからそのつもりで』




「なんだこりゃ。左派の指摘も途中までは面白かったのに、結局いつもの結論に落ち着いてるよ。なんでそうなるんだろうな・・・」


「ミズキ・・・日本はこの議論を何十年も続けてまだ結論が出ていないのですよね。わたくしには到底理解しかねますが、本当に平和な国なんですね」


「お、おう・・・まあな」


 そこからいつもの論戦になってきたため、つまらなくなってテレビを消したが、この放送以降、俺達を取り巻く状況が大きく変わって行った。

次回もお楽しみに

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