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クラスメイトは異世界王女  作者: くまひこ
最終章 侵略者グランディア帝国と日本防衛の最終決断

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第44話 生徒会長選④

 芹沢君たちも使って、逃げ遅れた生徒がいないことを確認して回ったわたくしと伊藤君の二人は、今度は学園の前を通りかかった一般の人達にも声をかける。


 神無月さんは既にUMA室と連絡を取っており、総司令部から指示を受けた戦闘員や県警・機動隊も直に応援に駆けつけてくるとのことですが、彼らが到着するまでの間は、少なくとも目の届く範囲にいる市民を守る義務がわたくしたちにはある。


 街には緊急避難警報が出たばかりで、近くの建物に避難しようと探し始めた通行人は、わたくしの呼び掛けを聞いて助かったとばかりに、先を争って体育館に駆け込んで行く。


 そして通行人が全て学園に入ると同時にバリアーを展開し、校門を閉じると急いで体育館へと走った。


「おい神宮路、このバリアーって水島のか?」


「ええ、わたくしが彼女に依頼しました。リッターを学園内に封じ込めて街に出さない作戦ですが、増援が来るまでの一時的なものですので、それまでに体育館が突破されたら元も子もありません。急ぎましょう」


 途中校庭に目を移すと、魔法陣から転移が始まった異形の怪物たちを、その現れた瞬間を狙って瑞貴君が片っ端から倒している。


「圧倒的ですわ・・・たぶん愛梨ちゃんの予知能力で出現箇所を予測しているのだと思いますが、これから転移が本格化してくるし瑞貴君たちのキャパを超えるのは時間の問題ね。体育館にあの化け物どもを近づけさせないよう、わたくしたちも配置につきましょう」


「おうよ! もしヤツらが近づいてきたら、この俺様の思念波弾で蜂の巣にしてやるよ!」




 体育館に入ると、中には学校に残っていた全校生徒と教師陣、そしてさっき保護した一般人に混じって、瑞貴君たちを追いかけ回しているマスコミ関係者も逃げ込んでいた。


 そんな彼らは、スクープとばかりにテレビカメラを校庭に向けて設置し、瑞貴君たちの戦いの様子を実況中継していた。


 芸能レポーターらしき男性が、マイクを握りしめて絶叫する。


『ご覧ください! 魔法陣から出現したのはオーガと呼ばれる凶悪かつ大型のリッターですが、我らが黒髪王子がそれを怒涛の勢いで退治しております。皆様は既にご存知のように彼らに通常の武器は効きません。ですが黒髪王子はなんと素手で敵を倒しています! その強さはまさに対戦車ヘリ級! 強すぎるーっ!』


 マスコミはどうやら複数局いたようで、一定間隔を空けて女性レポーターも同じように絶叫している。


『黒髪王子の後ろにいるのは、お姉様のアリスレーゼ様でしょうか! いつものエレガントさは影を潜め、なんと魔法少女のコスチュームに身を包んでステッキから出る光線の様なもので敵を倒しています! その姿はまさに当放送局で日曜朝に放送中のテレビアニメの主人公そのもの! 絶賛放送中、お見逃しなく!』


 リッター襲撃という一大事にも関わらず、さらっと番宣を入れてくるあたりに商魂の逞しさを感じます。でもわたくしが気になるのは、彼らがスポーツ中継のようにこの戦いを報じてしまっていることです。


 この戦いの本質はテロ対策、もしくは戦争ですが、マスコミを含めた一般人には思念波が見えないため、これが格闘技の試合のように見えており、ここにいた報道関係者がたまたまワイドショーの芸能レポーターだったことも要因かもしれません。


 この戦闘を正しく理解するには、思念波補助デバイスという新兵器の存在を抜きには語れませんが、本件は軍事機密に多分に相当するためマスコミ等への情報公開には制限がかかっているのもあるでしょう。


 普段ならもちろんそれでも構わないのですが、やはり気になるのが今は衆議院選挙を控えた時期であるということです。


 リッターの正体は害獣か敵性国家なのか、自衛隊の出動が違憲か合憲かが争点となっている中で、わたくしたち未成年者にできることなど何もありませんが、この実況中継がおかしな結論を導かないよう、有権者である大人たちの良識を信じてただ祈るばかりです。




 さて瑞貴君たちの戦況ですが、結論から言えば能力に応じた見事なコンビネーションにより、現時点でリッターの封じ込めに成功していると言えます。


 中でも水島さんの活躍が一番大きく、自分の防御を完全に放棄して学園全体を強固なバリアーで覆い、今のところ1体のオーガも外に出していません。


 そんな無防備な彼女を守るため、愛梨ちゃんが襲い掛かってくるオーガを全て撃破しています。オーガの動きを完全に見切って確実に急所を破壊していく、未来予知ができる彼女ならではの精密近接戦闘です。


 そしてオーガの撃破数が多いのはやはり瑞貴君とアリスレーゼ様のコンビでしょう。


 校庭の20%ほどの大きさの巨大な転移陣から次々と現れるオーガを片っ端から撃破していく様子は、レポーターが絶賛するのも頷けます。


 ただし特筆すべきなのは、襲撃の規模が分からない現時点において、思念波を実に効率的に使用して戦っている点です。特にアリスレーゼ様が大量の思念波を消費する精神感応攻撃は一切使わず、基本に忠実な近接戦闘を心掛けているのは大したものです。


「彼女は思念波強度が最強ですし、敵バリアーの相殺力もケタ違いですね。この局面で瑞貴君と肩を並べて戦うのは彼女が適任・・・と判断したのはこのわたくし自身なのですが、やはり二人が並んでいるを見ると嫉妬を覚えてしまいます・・・」


 思わず本音をつぶやいてしまいましたが、わたくし以上に悔しい想いをしているのは、自称最強パートナーの神無月さんでしょうね。


 おそらく忸怩たる思いを抱きながらも瑞貴君たちが討ちもらしたオーガを淡々と始末しているのは、さすがエース戦闘員といったところですね。


 ただしその彼女の元にオーガを誘導しているのは、学園内をバリアー壁で大迷宮に変えてしまった水島さんですけど。自由自在に城壁を構築するなんて、絶対に彼女を敵に回したくはないですね。


「伊藤君、わたくしたちもそろそろ戦闘を開始しましょう。わたくしが体育館の中の防御に徹しますので、あなたは体育館2階に上がって敵への精密狙撃をお願いいたします」


「任せとけって! FPSで鍛えたこの俺様のテクニックを世界に発信する時が来たぜ」


「頼りにしています。水島さんが容赦なくこちらにオーガを回してくるので、決して撃ちもらさないでね」


 こうして、わたくしがUMA室戦闘員として正式配属になって初の戦闘が始まった。




            ◇




 この学園はある意味で立地がよく、戦闘開始後10数分で自衛隊のヘリが到着し、戦闘員を含めた警察の即応部隊も学園周辺に集結し始めた。


 ですが30分を過ぎた段階でも、わたくしたちだけで敵部隊を何とか抑え込めており、戦況のバランスを考慮して突入の機会をジッと見定めている状況だ。


『神宮路君、現場の状況報告を頼む』


 インカムから聞こえてくる男性の声は、総司令部に詰めている上官の藤間主任だ。


 こちらの現場指揮官はわたくしであり、彼を通して伝えられるこちらの戦況は、小野島室長や雨宮主幹たちに伝えられて、上空に待機している自衛隊の戦闘ヘリや地上の警察即応部隊に指示が飛ぶ態勢です。


「こちらは大変厳しいですが、現時点で人的被害はなく敵部隊の抑え込みに成功しています」


『了解。こちらからの分析結果でも、君たちの絶妙な戦力配置が上手く機能しており、現時点で戦力の追加投入はむしろ悪手と判断。ただし敵の転移規模が拡大した時点で警告をするのでそれまでは現状維持だ』


「承知しました。わたくしたちにはまだ思念波の余力がございますので、しばらくは持ちこたえられます」




 藤間主任との通信が切れると、わたくしは体育館全体の様子をもう一度確認する。


 壁際からなるべく離れて体育館中央に全員を集め、そこにわたくしのバリアーを集中展開しているが、マスコミ関係者は戦闘の撮影をするため、学校関係者からの再三の警告も聞かず、あれからずっと体育館2階の窓際に居座っている。


『黒髪王子率いる警察特殊部隊が圧倒的な強さを見せています! 次々と湧き出してくる怪物どもを、王子と魔法少女コンビがことごとく仕留めていくのも圧巻ですが、我々が注目したいのは怪物どもをピンポイントで狙撃する伊藤淳史君です。その精度はおそらく100発100中、我々が確認する限り彼から放たれた光弾はすべてオーガの心臓を貫いています!』


 最初はマスコミのすぐ隣で戦闘を開始した伊藤君でしたが、あの絶叫レポーターがうるさすぎて、狙撃に集中できるように体育館の外に出てしまいました。


 ハッキリ言ってマスコミには今すぐここから出て行って欲しいのですが、リッター襲撃中に出て行けとも言えず、彼らは報道の自由を盾にやりたい放題です。


 前園理事がため息まじりに彼らへのバリアー展開をわたくしに依頼してきましたが、言われなくても彼らの生命を守るのも戦闘員の役目です。


 ただしオーガが片付いた後は、あのマスコミどもを学園から叩き出して差し上げますわっ!



 さて体育館の外に目を移すと、レポーターから逃げて行った伊藤君が片っ端からオーガを狙撃していますが、彼の連射速度をかなり上回る勢いでオーガがこちらに向かってきます。


 つまり水島さんがこんな誘導をしなくてはならないほど、瑞貴君たちはもう限界ということでしょう。


 ですがそんなオーガどもを神無月さんが自慢の近接戦闘で次々となぎ倒していきます。これを見る限り、純粋な戦闘力では瑞貴君より強いのかもしれません。


 ストーカーのくせに、さすがエースと呼ばれるだけありますわね、この女。


 そんな彼女の戦いは戦場全体を占う試金石であり、わたくしは彼女を注意深く観察していたのですが、しばらくすると少しずつ余裕が生まれてきました。


 これは彼女が強くなったからではなく、オーガの転移速度がピークを打って戦況が落ち着き始めたということです。念のため雨宮主幹にデータを確認してもらいましたが、わたくしの予想通り転移陣の思念波強度が頭打ちになっている様子です。


「今回はどうやら、わたくしたちだけでリッターの封じ込めに成功したみたいですね」


 早速藤間主任にインカムで状況を報告していると、スマホで懸命にライブ映像を見ていた生徒たちも直感でそれを感じたらしく、恐怖に支配されていた空気が徐々に薄れて歓声が大きくなっていった。


「きゃー! 前園く~ん、素敵~、頑張って~!」 


「魔法少女アリスレーゼちゃん、マジ最強!」


「分かってないなお前ら。この戦場を支配しているのは重戦車・水島かなでだよ。彼女が地味に最強な件」


「アホか! 真のエースは俺達の愛梨ちゃんに決まってるじゃん! まるで背中に目が付いているかのような動きだし、実はニュータイプだったのかも」


「ていうか見ていて一番面白いのは敦史の戦いだよ。完全にFPSのノリだしリアルに無双状態じゃんよ。世界大会に出場できるんじゃね?」


「うん、それそれ! こうして見ると伊藤君ってちょっとカッコいいし、彼女にしてもらおうかな私」


「ズルい! 伊藤君は私が狙ってたんだからね!」


「それを言うなら、敦史のヤツが取り逃した敵を全部血祭りに上げている葵さんが最強なんじゃないのか」


「戦闘用の日本人形か・・・妖しくも美しい」


 男子生徒はまるでゲーム実況を見ているかのように戦いを楽しみ、女子生徒は瑞貴君と伊藤君の二人に黄色い声援を送り続けている。


 そんな生徒たちの様子を茫然と見つめていた芹沢君が、わたくしの視線に気が付くと、ゆっくりとこちらに歩いてきた。

次回、生徒会選挙決着。


そして衝撃の第1部ラストへ。

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