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クラスメイトは異世界王女  作者: くまひこ
最終章 侵略者グランディア帝国と日本防衛の最終決断

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第44話 生徒会長選②

 怒りを滲ませて質問を終えた女子生徒は、興奮したのか最後には水島さんを睨み付けた。


 完全に逆ギレだと思うが、神宮路さんはため息をつくと質問に答える代わりに水島さんの前に歩み寄り、頭を下げて謝罪した。


「クラスの委員長のわたくしが葛城さんたちの行動を見過ごしてしまい、結果的にあのようなイジメが行われてしまったことを心より謝罪します。本当にごめんなさい水島さん」


 神宮路さんから既に謝罪を受けていた水島さんは、まさかみんなの見ている前でもう一度謝罪を受けることになるとは予想してなかった。


 突然のことにどう反応していいのか分からなかった彼女は、だが頭を上げた神宮路さんが目で送った合図にその意図を察し、神宮路さん代わって中央の壇上に上がった。


 そして一礼すると、質問者の女子生徒に対し自ら回答を行った。


「質問者のあなたには自己紹介の必要はないと思いますが、他の皆様は初めまして。2年A組の水島かなでです。今の質問に対する答えですが、イジメられる者の立場から言わせてもらえば、「イジメられた方にも責任がある? ふざけるなっ!」と言いたいです」


 神宮路さんの公約のうちイジメに関する部分は水島さんが作ったものであり、彼女が答えるのがベストなのを俺達は分かっているが、他の生徒たちはそうではなく、彼女が話を始めるとさっきまでざわついていた会場が一気に静まった。質問者の女子生徒もまさか水島さんが回答するとは思わず、あまりの気まずさに顔を俯けている。


 そして水島さんの回答は続く。


「でもイジメを学校から完全になくすことはたぶん無理だと思う。いくら監視の目を強くしてもやりたい人は絶対に陰でこそこそイジメをするし、やってる本人がイジメと認識せずにしていることも実はイジメだったりするから。仮に罰則を設けたとしても、学校教育の指導の範囲なので大した罰は与えられないし、それに味をしめた生徒はゲーム感覚で、ギリギリのところでイジメを楽しもうとするもの」


 水島さんの話に思い当たる節のある生徒は少なくないようで、下を俯く生徒の数が徐々に増えて行った。


「でもこれは学校の問題というより人間の本能的な問題で、大人の社会で起きているパワハラやセクハラ、DVなんかも根っこは同じだと思う。だから大人の社会で有効性が認められた対策を学校にも導入したり、イジメを抑制できるだけの十分大きなペナルティが校則として事前に示されることが大事で、それには生徒や保護者の協力が不可欠なの」


 完全に静まり返った体育館に、水島さんの声だけが響き渡る。


「私が言いたかったのは、過去にあったイジメの解決も大事だけど、これからイジメが起きないようにする仕組みをみんなと一緒に作って行きたいの。もしそれに賛同してくれるなら、神宮路さやかに清き一票をよろしくお願いします」


 そうしてペコリと頭を下げた水島さんに、会場からは少しずつだが拍手の数が増えて行った。


 万雷の拍手とは行かないものの、趣旨を理解して賛同してくれた生徒も存在することがこれでわかった。





 神宮路さんの質問タイムも終わり、いよいよ両陣営による公開討論に移った。


 ここからお互いの公約について論戦を戦わせる訳だが、一般論で言えばエッジの効いた神宮路さんの公約は論点となる部分も多く、こういった学校の討論会では不利に働く。


 だが実際に討論が始まると、神宮路さんが一方的に攻め立てる展開になった。というのも神宮路さんの公約によって、逆に芹沢の公約に何の中身もないことが明らかになってしまったからだ。


 もちろん神宮路さんの弁論技術も凄まじく、前生徒会の内情を知り尽くした彼女に、芹沢だけでなくスタッフ全員なす術がなかった。


 そして討論開始から10分もせず完全論破されると、芹沢は自分の公約の不備を認めたが、そ知らぬ顔で会場の生徒たちに目線を向けると、突然その場で新たな公約を追加した。


「では新たな公約を発表します。僕が生徒会長になったら生徒会メンバー全員が学園アイドルとなり、みんなが学園生活を楽しめるイベントを企画します」


「「「学園アイドルーーっ?!」」」


 生徒たちは自分の耳を疑い、神宮路さんもあきれ顔で芹沢に尋ねた。


「芹沢君、あなたは自分が何を言っているのか分かっているのですか。今は公開討論の場です。ふざけるのもいい加減にしなさい!」


 だが芹沢は神宮寺さんに向き直ると、


「ふざけてなんかないさ。リッターの襲来で日本中が恐怖に怯えている今こそあえて楽しく過ごすべきで、高校生だからできる何かに挑戦したいんだ」


「挑戦って・・・だからと言って、学園アイドルって一体何なのですか。不謹慎ですっ!」


「アイドルというのはあくまでキャッチフレーズで、僕が言いたいのは生徒会が前面に立って、生徒全員が参加できる楽しい企画を次々に打ち出して盛り上げていこうということ。つまりはこれまでの生徒会活動の延長線上でおかしなことは言ってないさ」


「これまでの延長線・・・では具体的には何を」


「やることはいつもと同じだけど、生徒会独自のコスチュームを着たり握手会なんかもやってみようかな。それでクリスマスやバレンタインなど季節ごとにイベントを開催して学園全体を盛り上げていくのさ」


 そう言って会場にウインクをする芹沢に、ファンクラブの女子たちは絶叫する。


「キャー! 翔也くーーん!」


「私、絶対並ぶから握手してーっ!」


「瑞貴さまも翔也くんの生徒会に入って、二人でユニットを組んでっ!」



 一度は崖っぷちまで追い詰められた芹沢だったが、新たな公約「学園アイドル」により完全に息を吹き返してしまった。そんな盛り上がりを見せる会場に芹沢はさらなる一手を繰り出す。


「ちょうどいい機会だからここでみんなの誤解を解いておきたい。僕がここにいる女子全員と付き合っているなんてデマが流れているけど、僕は誰とも付き合っていないし、みんなも特定のカレシがいないことをこの僕が保証する。僕を含めて全員フリーだから男子も女子も安心して推しを応援してくれて大丈夫だよ!」


 そんな話、誰も信じるわけがないと俺は思ったが、耳を澄ませると男子生徒の間に流れていた芹沢に対する嫌悪感が徐々に薄らいでいく。


「・・・すぐには信じられんが、さすがに全員と付き合っているというのは誇張だったかもな」


「学園アイドルか・・・いいんじゃね!」


「実は俺、風紀委員長の七海ちゃんが気になってたんだよ。彼女なら芹沢も絶対手をつけてないと思うし」


「七海ちゃんはちょっと真面目すぎないか。俺は断然会計の未結ちゃん派だな」


 まずい・・・。


 俺たちの圧勝だった公開討論を一瞬でひっくり返した芹沢に、だが神宮路さんが必死に巻き返しを図る。


「全校生徒の皆さん、学園アイドルなどという言葉に惑わされないで下さい! 高校生活を楽しむのも結構ですが今の学園には課題が山積しており、後輩たちのためにも生徒会の改革は急務なのです!」


 必死に訴える神宮路さんだったが、生徒たちの関心はすでに芹沢陣営に移っていた。





「・・・そういうことか。やっとお姉の行動の意味が理解できた」


 ボソッとつぶやいた愛梨の一言を俺は聞き逃さなかった。


「どういうことだ愛梨、詳しく聞かせてくれ」


 愛梨はこういうことに勘が鋭く、ひょっとしたらアリスレーゼが芹沢陣営に加わった理由に気がついたのかもしれない。


「実はお姉、自分の部屋で夜中に独り言をつぶやいてたんだけど、あれってこの練習だったんだ」


「練習? ・・・ていうか何やってるんだアイツら」


 舞台中央に目を移すと、芹沢陣営の女子たちが順番にマイクを手にして、自分のアピールポイントを紹介したり簡単な歌とダンスを披露していた。


 しかも適当ではなく、かなり練度が高い。


 つまりこの学園アイドルという公約は、苦し紛れに今思いついたものではなく、最初からこの公開討論の場で発売する予定だったと考えるべきだ。


「全て計算づくかよ・・・」


 そして一番最後にアリスレーゼの順番が回って来たのだが、彼女は自己アピールの前にいきなり歌い出すと、その高い歌唱力に会場がシンと静まり、彼女の歌に聞きいった。


「アリスレーゼって、こんなに歌が上手かったんだ」


 おそらくティアローズ王国の歌なのだろう。初めて聞く彼女の歌はあまり聞きなれない不思議な旋律だったが、目を閉じれば悠久の歴史に彩られた魔法王国の荘厳な街並みが目に浮かぶようだった。


 とても短い歌だったが、会場からは万雷の拍手が鳴り響く。


 そして望郷の想いからなのだろうか、目にうっすらと涙を浮かべたアリスレーゼが、会場のみんなに話し始める。


「これはわたくしの祖国に古くから伝わる歌で、世界を作りたもうた神々の御業を讃える歌詞になっています。そして我らが末代までの繁栄と幸福を賜るよう、神々に祈る際によく歌われたのですが、そんな祖国も今はもう・・・」


 会場の誰もアリスレーゼが語った真の意味を理解する者はいないだろうが、俺には分かる。彼女は今すぐにでも祖国に帰りたいのだ。


 俺が胸の痛みに耐えていると、芹沢は神宮路さんを見てニヤリと笑い、アリスレーゼに話を振った。


「アリスレーゼ君、キミの歌はとても素晴らしかったが、キミの魅力は歌だけではないことを僕はよく知っているよ」


 アリスレーゼの魅力だと?


 どんな作戦かは知らないが芹沢の野郎、聞いた風なことを言いやがって!


 アリスレーゼのことはお前なんかより俺の方が絶対詳しいに決まってるんだからな。


 俺の視線に気づいた芹沢は一瞬たじろぐが、すぐに表情を戻すとアリスレーゼに向き直った。


「キミは祖国でとても厳しい家庭に育ったそうだね。おかげで本当の恋愛を経験したことがないそうだが、それがキミの一番の魅力だと僕は思うんだ」


 そんな芹沢に、不思議そうに応じるアリスレーゼ。


「あの・・・それのどこが魅力なのでしょうか?」


「もしキミの初めての恋人になれれば、キミの色々な初めてを一緒に経験できるからだよ。もちろんその相手がこの僕であることを願うばかりだが、さっきからキミの弟が僕を睨みつけてきている。怖い怖い」


 そう言いながら芹沢は俺にウインクをして挑発してきた。


「こいつっ!」


 俺は思わず叫ぶと、神宮路さんの制止を振りほどいて芹沢の胸倉をつかむ。


「俺のアリスレーゼに、どういうつもりだ!」


 だが芹沢は余裕の表情を見せると、


「暴力はやめたまえ前園君。僕はただキミの姉さんの魅力を会場のみんなに教えてあげただけさ。キミこそ何をしているのかちゃんと理解しているのか」


 周りを見ると、神宮路さんだけでなく他のみんなも集まってきて、俺を芹沢から引き離そうとする。


「瑞貴君やめて! これは芹沢君の罠だからこれ以上彼の挑発に乗らないで」


「神宮路さん・・・だがっ!」


「芹沢君は私たちの事情も何も知らずに、ただ婚約者であるわたくしを揺さぶってるだけなの。だから瑞貴君は何もせずに、黙って後ろに下がっていて!」


「これが神宮路さんへの揺さぶり? なんで?」


 神宮路さんの発言に戸惑いながらも芹沢への怒りが収まらない俺に、今度はアリスレーゼが少し怒ったような表情で俺に言い放った。


「およしなさいミズキ。これは選挙戦の討論会なのだから、暴力ではなく弁論で戦うのが筋でしょ」


「アリスレーゼ・・・でも芹沢がキミのことを」


「わたくしの身を心配してくれるのは嬉しいのですが、今は敵同士。お互い正々堂々と勝負しましょう」


「敵同士って、そんな・・・」


 アリスレーゼの言葉にショックを受けた俺だったが、彼女の次の言葉が俺に追い討ちをかけた。


「ごめんなさいミズキ・・・わ、わかったなら、これ以上わたくしに話しかけないで」

長くなりましたが、生徒会長戦は次回決着。


お楽しみに

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