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クラスメイトは異世界王女  作者: くまひこ
最終章 侵略者グランディア帝国と日本防衛の最終決断

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第44話 生徒会長選①

「アリスレーゼ、そっちの選挙戦は上手く行っているのか」


 朝食のテーブルで俺は今日も同じ質問を繰り返す。そして彼女も、そ知らぬ顔で同じ答えを繰り返す。


「問題ございません。セリザワさんを始め前生徒会役員の皆様には大変良くしていただいておりますので」


「そうか・・・だが芹沢には気を付けろよ。アイツは女たらしだし、アリスレーゼにもしものことがあったら大変だからな」


「彼はとても紳士です。わたくしに色々なことを親切に教えて下さるし、ミズキが考えているような人ではございません」


「それが罠なんだよ! アリスレーゼを油断させて、自分のモノにしようと狙ってるはずなんだ」


「ミズキ・・・憶測だけで人をそのように言うものではありません。それに日本は自由恋愛の国でしょ。なのにどうしてミズキはわたくしの心配ばかりするのですか。一体ミズキはわたくしの何なのですか?」


「それは・・・す、すまないキミの言う通りだな」



 選挙戦が始まって既に一週間。


 アリスレーゼがどうして芹沢陣営についたのか、未だ理由を聞き出せないまま時間だけが過ぎていった。


 朝のニュースは、昨日大阪で発生したリッター襲撃事件を報じており、少なくとも数十名の市民が犠牲になったことが伝えられた。


 今回は当初から自衛隊も出動していたのだが、報道では銃撃戦によって街の建物が大きく損傷したことを問題視し、政府の対応に疑問を投げ掛ける識者のコメントが目立っていた。


「自衛隊が出動してもしなくても、結局は政府の批判かよ。そんなこと言ったってリッターを倒さなければもっと大きな被害が出るし、UMA室の戦闘員だって無限にいる訳じゃない。一体どうしろって言うんだ」


 俺がテレビにツッコミを入れていると愛梨が、


「お兄、テレビに文句を言い出すのはオッサンになった証拠だよ。そんなことより今日は生徒会の公開討論の日だし、愛梨たちの選挙戦を頑張らないとね」


「そうだった。演説は神宮路さんの仕事だが、俺達もスタッフとして色々盛り上げないといけないからな」


「そうそう。お姉や芹沢なんかには絶対負けたくないし、頑張ろうよ」




            ◇




 その日の午後、昼休みを終えた1、2年生の全員が公開討論に参加するため体育館に集まった。


 今日は投票の一週間前で、これから選挙戦も終盤に入っていく。この公開討論は生徒会長戦の一つの山場であり、生徒たちに情報を与えてじっくり考える機会を与えるとともに、候補者には自分の公約の改善の機会を与えるのが目的で行われる。


 体育館の舞台壇上には、生徒会長候補の神宮路さやかと芹沢翔也の二人が左右に別れて立ち、そのすぐ後ろには役員候補となる各陣営メンバーが並んでいる。


 公開討論の最初は両候補からの演説であり、最初は現体制を引き継ぐ芹沢翔也が舞台中央に登壇した。


「皆様こんにちは、生徒会長候補の芹沢翔也です。さて僕の公約ですが・・・」


 さっそく始まった彼の演説だが、要約すると「この一年間、生徒会は結構頑張ったでしょ。それを引き継ぐ僕たちに任せると安心だよ」いうことに尽きる。


 加えて、より良い学園にしていくために生徒たちの意見を取り入れる「目安箱」の設置を公約の柱に掲げていた。


 確かに現体制は特に問題もなく、この一年間生徒会をちゃんと運営できており、彼らに任せれば少なくとも今以上の学園生活が保証されるだろう。


 もし俺が普通の生徒だったら芹沢に投票しているだろうが、今回の俺はアイツの対抗馬だし何よりアイツのことが気に食わない。


 そんな芹沢の後ろに控えるスタッフは前生徒会役員たちだが、全員顔で選ばれたんじゃないかと疑うほど美少女ばかりが集まっている。思い起こせば去年の俺も、前生徒会長の公約ではなく、神宮路さんを筆頭とする彼女たちのビジュアルに投票した気がする。


 今年も同じ作戦を繰り返す、ハーレム野郎の芹沢翔也が率いる美少女軍団の中にあって、特に飛び抜けた美少女・・・いや美女が一人異彩を放っている。


 そう、アリスレーゼだ。


 見事なまでの豪奢な金髪に青い大きな瞳。他の女子達よりも背が高く既に大人の女性の雰囲気が出ている彼女だが、抜群のプロポーションにも関わらず淫靡さは全く感じられず、常に清楚で上品なのだ。


 柔らかな笑みを浮かべて真っ直ぐ前を見据えるその澄んだ瞳は、下々の者たちの全てを受け入れる慈愛に満ちたものであり、背筋が真っ直ぐに伸びて凛としたその雰囲気は、彼女が一段高みにいる特別な存在であることを万人に知らしめる威厳すら感じる。


 ハッキリ言って今演説している芹沢より黙って後ろに立っているアリスレーゼの方が断然目立っており、その存在感と風格はまさしく女王陛下のそれだった。


「アリスレーゼは、体育館の舞台よりも王宮の玉座が似合ってるな。もはや場違い感しか感じないよ」


 俺がそう呟くと同時に芹沢の話が終わったようだ。


「・・・以上を持ちまして、わたくし芹沢翔也の選挙公約とさせていただきます。ご静聴ありがとうございました」


 演説が終わり、会場からは女子たちの歓声とともに大きな拍手が沸き起きる。


 ここから何人かの質問を受けながら生徒達との討論が行われるのだが、同時に会場から漏れ聞こえる雑談の方が生徒たちの本音としては参考になる。


 耳に「気」を集中させ、男子生徒たちの会話に耳を傾けると、


「やっぱ芹沢の野郎はムカつくよな。アイツ、生徒会役員を全員食ったって話だからな」


「その話マジだったのか・・・断じて許せんが、もしかしてあの神宮路さんも既にアイツのお手付きに」


「俺もそう思っていたが、彼女は前園の婚約者だったし、さすがにそれはないだろう」


「チッ、前園の野郎か・・・アイツはアイツでムカつくが、それより心配なのは我らがアリスレーゼ様だ。なんで芹沢のハーレムなんかに、あのアリスレーゼ様が入ってしまったんだよ」


「理由は分からんが、アリスレーゼ様を守るためにも神宮路=前園カップルには頑張ってもらって、生徒会長になった暁には、芹沢の野郎を弾圧して欲しいぜ」




 やはり芹沢は男子から圧倒的に嫌われているが、俺もムカつかれているのには正直ショックだった。


 そしてアリスレーゼが向こうの陣営に行ったことで男子生徒たちの反感を買い、芹沢陣営に不利に働いていることも確認できた。


 一方で女子生徒からは相変わらずの大人気で、応援グッズを掲げたファンクラブの女子たちが黄色い声を上げている。




 芹沢への質問タイムが終わると、いよいよ我らが神宮路さんの出番だ。彼女が登壇すると派閥の女子生徒たちが一斉に声をあげた。


「「「さやか様がんばって~! 旦那の瑞貴君も奥様をしっかりサポートしてあげてね~!」」」


 会場のあちらこちらからクスクスと笑い声が聞こえる中で始まった神宮路さんの演説は、だが芹沢のような無難なものではなく、学園の改革を求めるエッジの効いた内容だった。


 簡単に言うと、葛城真央の事件で発覚した学園でのイジメ問題を見過ごしていた歴代生徒会の責任を総括し、その上で再発防止に向けた学校側と生徒の連携や役割分担などを提案している。


 またリッター襲撃事件にも言及し、本校生徒が襲撃に巻き込まれた際の対応策について、内閣府より出された危機対応マニュアルに基づき、より具体的な行動指針を制定することを柱に掲げた。


 それ以外にも、より良い学園生活を自分たちで考えて実現するための仕組み、具体的にはネットベースの意見集約システム「オンライン生徒会(仮)」など、従来にはない斬新な提案が盛り込まれている。


「・・・以上がわたくしの公約でした。一度しかない大切な高校時代を、自らの手で楽しく過ごせるように頑張りましょう!」


 演説を終えてお辞儀をする神宮路さんに、会場からは万雷の拍手が鳴り響いた。



 質問タイムが始まり、俺は生徒たちの雑談に耳を澄ませる。


「神宮路さやかは、見た目も頭脳もレベルが違うな」


「あいつだけレベルがカンストしてんじゃね」


「俺達とは頭の出来が違う上にバックには大企業がついているし、ネット関係の公約とかは片っ端から実現してしまいそうなパワーを感じるよ」


「それに後ろにいるアイツら全員、警察の特殊部隊なんだろ。リッターに襲撃されても助けてもらえそうだし、生徒会役員はアイツらにやってもらった方がいいんじゃね」


「それな。あと芹沢と違って、神宮路には絶大な功績があるんだよ」


「なんだったっけ?」


「前園瑞貴の婚約者であることを公表したことだよ。これで前園を密かに狙っていた女子が諦めてフリーになり、俺達にもチャンスが回ってきた」


「それはデカイ! アイドル顔負けのビジュアルもあるし、俺達男子生徒への貢献度ナンバーワンの神宮路さやかで生徒会長は決まりだな」



 貢献度が何を意味しているのか考えたくもないが、どうやら男子票は俺達に流れて来そうだ。だが女子票はどうだろうか。


 俺は女子たちの雑談に耳を傾ける。


「何よあの女! 私たちの前園くんを独り占めして」


「しーっ! 神宮路派閥に聞かれたら大変よ」


「わ、分かってるわよ・・・でもイジメ対策って何をするつもりなんだろ。もしかして私たちが水島のことイジっていたこともバレるのかな」


「もうバレてるわよ。だって水島のやつ、神宮路に取り入って生徒会メンバーになろうとしてるもの。たぶん私たちに仕返しをするつもりなのよ」


「だったら絶対あの子たちを落選させないと」



 どうやら、水島さんをイジメていた女子は葛城以外にもいたらしく、後ろめたい生徒は俺達に票を入れないだろう。


 それより今の話、水島さんに聞こえてしまったんじゃないのか・・・。俺は心配して彼女の方を見ると、


「大丈夫よ前園くん。私はもう、あんな人たちなんか恐くもないし、彼女たちの票がなくても私たちなら勝てると思う」


 以前ならシュンとして黙り込んでいた水島さんは、ニッコリ笑って俺の方を見ている。


「そうだな。水島さんはあのオーク騎士団を血祭りに上げただけでなく指名手配犯の鮫島もボコボコにして病院送りにしたし、あんなヤツラ恐いわけないよな」


「もうっ! 前園くんのいじわる」


 そう言ってクスクス笑う水島さんだが、それを見て勘違いしたのか陰口を叩いていたイジメっ子の女子がムッとした顔で挙手すると神宮路さんに質問をした。


「イジメ対策って具体的に何をするのですか。水島さんに限らず、誰かをイジメたことのある人なんか山ほどいるし、イジメられた方にだって原因があるはず。公平な処分は不可能だと思います」

次回もお楽しみに

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