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クラスメイトは異世界王女  作者: くまひこ
最終章 侵略者グランディア帝国と日本防衛の最終決断

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第43話 2つの選挙

 昼休みの明稜学園高等部生徒会室。


 今期最後の会議を終えて解散した生徒会は、明日から選挙戦に入る。


 明稜学園の生徒会長選は、高等部1・2年生全員による選挙により生徒会長が選出され、副会長以下の役職については新生徒会長が指名する。ただし選挙戦を共に戦ったスタッフが着任するのが通例であるため、生徒たちはそれらも加味して投票を行う。


 そんな次期生徒会長候補の一人である芹沢翔也は、後片付けをする神宮路さやかに声をかけた。


「神宮路君、僕に提案があるんだが聞いてくれるか」


 さわやかな笑顔で語しかけてきた芹沢に、さやかは微笑みを作って彼に向き直った。


「何でしょうか芹沢君」


「僕をキミの選挙戦のスタッフにしてくれないか」


「え?」


「次期生徒会長としてキミを推すから、僕を副会長にしてくれという提案だよ」


「つまり生徒会長戦を回避して、信任投票で次期体制を決めようと」


「そういうことだ。それなら今の生徒会の2年生はそのまま残って、1年生から何人か補充すれば現体制を引き継げる」


「なるほど・・・でもその話はお断りします」


「なぜ」


「確かに現体制を維持すれば生徒会運営は効率的に行えますしとても魅力的な提案ですが、生徒会長戦は民主主義を学ぶための教育の一環でもあるのです。本校の生徒のためにもちゃんと選挙戦を戦いましょう」


「相変わらず優等生だな君は。だがスタッフはもう決めたのかい? 僕は今の生徒会役員全員に声をかけているが、君は誰にも声をかけなかったと聞く」


「ええ。わたくしは婚約者の前園瑞貴君と一緒に戦うつもりですので」


「前園瑞貴か・・・ちっ」


「不服ですか?」


「ああ不服だとも。彼は僕にとってもある意味特別な存在だからな。だがいいだろう、君がそのつもりならこちらも思う存分戦ってやるさ」


「ではお手並みを拝見させていただきますわ。さようなら、芹沢君」




            ◇




「ということですので、わたくしと共に生徒会長戦を戦っていただけないでしょうか瑞貴君」


 放課後、2年A組の教室で帰り支度をする俺は、神宮路さんから生徒会長役員の誘いを受けた。


「いきなりだな。だが俺は生徒会の仕事なんか何も知らないし、役に立てるとも思えないが・・・」


「分からないことは全てわたくしが教えて差し上げますので、一緒に頑張りましょう!」


 小さくガッツポーズをとって、上目使いで微笑みかける神宮路さんに、俺は思わずドキッとする。


 清楚系正統派アイドルとして売り出したら確実に人気が出そうな神宮路さんは、見た目も性格も俺の好みのどストライクなのだ。


 こんな子が俺の婚約者とは今でも信じられないが、今となっては本人や他の女性陣の前では口が避けても言えない。


「神宮路さんの頼みなら俺も嫌とは言えないが、相手はあのイケメン王子の芹沢だろ。話したことはないけど、アイツのことは何となく苦手なんだ」


「それは初耳ですが、どうしてですか?」


「だってアイツ、いつも女子生徒に囲まれてキャーキャー言われてるし、生徒会だってあいつ以外全員女子じゃん。あれって完全に男の敵だよ」


「瑞貴君がそれを言いますか?」


「・・・確かに俺は最近急にモテ始めたけど、根本的にはモテない男子代表みたいな所があるんだよ」


「・・・どうやら愛梨ちゃんの洗脳が効き過ぎてるようですが、女性関係にルーズになられるよりはるかにマシですね。愛梨ちゃんどうもありがとう」


「別にあんたのためにやったわけじゃないよ!」


「これって愛梨の洗脳なのか・・・それに俺、神宮路さんと芹沢は付き合ってるものだとずっと思ってた。イケメンが付き合う女子って結局は神宮路さんみたいな子なんだって、腹が立っていたというか・・・」


「まあ! もしヤキモチを妬いてくださってたなら、とても光栄ですわ。でもご安心ください、わたくしは小さい頃から瑞貴君一筋で、他の男性など絶対相手にしませんから」


「お、おう・・・ありがとう。俺はいいけど、他のメンバーはどうするんだ」


「今の生徒会メンバーは全員芹沢君に付くので、わたくしはここにいるメンバーで戦いたいと存じます」


 そう言って周りにいるアリスレーゼや愛梨、水島さん、葵さん、敦史を順番に見ていく。みんなお互いに顔を見合わせており、敦史が心配そうに神宮路さんに尋ねる。


「俺も瑞貴と同じで、生徒会役員の仕事なんか全く知らない。それに俺達はリッターの襲撃に備える必要があるだろ。そんな暇あるのか」


「生徒会は昼休みに活動を行うので、部活との兼任も大丈夫なのですよ」


「UMA室戦闘員の仕事を部活扱いかよ・・・だが、放課後が空いてるのなら特に問題はないか」


 敦史が腕を組んで納得するが、確かにその問題は俺も気になっていた。


 週末に起きた西日本へのリッター襲撃事件により、無視できない損失を出してしまった警察は、人員を補充するために関東の戦闘員の半分以上を応援に向かわせることを決定した。


 その穴を埋めるのが俺達で、まだ高校生で学業への影響も考慮して関西への派遣は免れたが、UMA室の最強戦力として関東防衛の重責は重くのしかかる。


 駐屯地で詰めている間、次々と知らされる西日本の惨状に愕然としてた敦史はそれを聞いて、関東の平和は自分が守るんだとすごいやる気を出しているのだ。


 そんな敦史の責任感に感心しつつ、俺は他のメンバー一人一人と目を合わせる。


「お兄が手伝うなら愛梨もメンバーになるよ」


「前園くん、私も頑張るから何でも言ってね!」


「神宮路さんの手伝いかあ。ライバルに塩を贈るようでなんか嫌だけど、瑞貴の頼みなら仕方ないか」


「葵さん・・・神宮路さんの護衛の任務は一応続いてるんだし、もっと仲良くしたらいいと思うが。ところでアリスレーゼも協力してくれるんだろ」


「・・・ええまぁ」


 そう言って生返事をするアリスレーゼは、心ここにあらずでボンヤリと窓の外を眺めている。


 ヒッグスの話を聞いて以来、考え事に耽ることが多くなったアリスレーゼは、たぶんティアローズ王国のことを考えているのだろう。


 アリスレーゼは、自分は転移魔法が使えないし知識もないと言っていたが、何らかの手がかりが見つかって元の世界に戻れるようになった時、俺は笑顔で彼女を送り出してやることができるのだろうか。


 その事を考えると俺の心は張り裂けるように痛くなるが、不安な気持ちを無理やりかき消すと、笑顔を作って彼女に答えた。


「まあ無理にとは言わないが、ティアローズ王国には選挙なんかなかっただろうし、日本に来たいい経験になると思う。気楽にやってみるといいよ」


 それから俺達は選挙戦の作戦を立てるため、神宮路さんの家に向かった。





 翌朝のトップニュースは衆議院解散だった。


 「西日本リッター同時多発襲撃事件」により多くの犠牲者を出してしまった黒川政権は、内閣不信任案が可決されたため衆議院を解散させた。


 政治評論家の解説では、与党からも厳しい突き上げのある黒川首相では選挙戦を戦うことはできず、この解散は裏目に出るのではないかとの見方が示された。


 その与党の次の総裁候補として挙げられているのが党内でも右派として知られる進藤氏で、「風見鶏」とも揶揄される調整型の黒川首相とは異なり、自衛隊の治安出動に全く躊躇わない人物なのだそうだ。


 一方野党は大連立を組んでこれに対抗し、平和憲法の元で安易な自衛隊の治安出動に歯止めをかけ、警察の体制を大幅に拡充することでこの難局に臨むべきだとしているらしい。


「ねえミズキ、黒川首相というのは日本のリーダーなのでしょ。その彼が辞めるというのはどういうことなのでしょうか」 


「俺もそんなに詳しくないから、あとで神宮路さんにでも聞いてほしいけど、それでもいいか」


「ええ、教えて」


「日本の政治は国民から選挙によって選ばれた政治家が行ってるんだ。そして議会で過半数を握った政党が実権を握るんたが、そこで選ばれた代表が総理大臣になる。今回は、リッター襲撃で被害を出してしまった責任をとって政治家を選び直すってことだよ」


「つまりティアローズ王国で言うと、元老院議員が貴族ではなく民衆の中から選ばれ、その議長が王国宰相と摂政を兼ねるということね」


「うーん・・・三権分立とか話すと長くなるし、たぶんそれで合ってると思うよ」


「その選挙はわたくしたちも参加できるでしょうか」


「いや、選挙権は18歳以上の成人のみに与えられるから、まだ未成年の俺たちは参加できない」


「それは残念です。ところで元老院議員や王国宰相を民衆が選ぶということですが、彼らに正しい選択ができるのでしょうか」


「というと?」


「民衆は国全体のことより、自分やその家族の生活を大切にするもので、自分に利益のある人を選ぶと思うの。だから国のために本当に必要な人ではなく、民衆に人気があったり、自分に利益をもたらしてくれる人ばかり選ばれてしまうのではないかしら」


「そうだな。だがそうならないように、日本を始めとする世界の民主主義国は、国民の教育を最重要項目として挙げていて、できるだけ正しい判断ができるように知的水準を上げてるんだ」


「国民の教育を・・・。だからわたくしたちの学校にはたくさんの生徒たちがいて、そんな学校が日本中に何千何万とあるわけなのですね」


「そう言うことだ。まあ俺たちは今回の衆議院選挙には関係ないけど、代わりに生徒会長選がある。神宮路さんが勝つように頑張らないとな」





 その後学校に登校した俺たちだったが、俺が敦史たち男子と雑談している間に、いつの間にかアリスレーゼの姿が見えなくなっていた。


 どこに行ったのか目で追っていると、それに気がついた愛梨が俺の耳元で教えてくれた。


「お姉なら、さっきB組の芹沢に呼ばれて教室を出ていったよ」


「芹沢だと? なんでアイツがアリスレーゼを」


「さあ? お姉に告白する気じゃないの?」


「告白っ! あの野郎・・・絶対許さん」


「・・・お姉ならたぶん大丈夫だし、むしろ芹沢に行ってくれた方が愛梨的には大歓迎だけど」




 だが愛梨の言葉とは反対に、教室に戻ってきたアリスレーゼが告げた言葉に、俺の予感が的中した。


「わたくしはセリザワさんと共に選挙戦を戦うことにいたしました。皆さま、本当にごめんなさい」

次回もお楽しみに

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