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クラスメイトは異世界王女  作者: くまひこ
第2章 オーク騎士団の来襲と時空間戦争の足音

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第29話 オーク騎士団の来襲③

 2両目の制圧に成功した俺たち。


 1両目にはまだオークが何体かいるようだが、俺たちを警戒してすぐに攻めて来る気配はない。それを見た葵さんがみんなを2両目に集めた。


「みんな、2両目の制圧は完了したわ。次は1両目のオークを掃討したいところだけど、ここにいる生存者の手当もしなくちゃね」


 葵さんがそう言って2両目を見渡す。


 かなりの数の乗客が犠牲になり、おびただしい量の血液と肉片が辺りに撒き散らされているが、生存者もまだ何人か残っており、早速、母さんと神宮路さんが応急措置を始めている。


 母さんが負傷者の服を手早く脱がせて怪我の箇所を確認すると、神宮路さんが思念波補助デバイスをその患部にかざす。


 すると彼女の身体から緑色の「気」が解き放たれ、怪我のあった場所が徐々に修復していく。


 それを見た葵さんが、


「デバイスを使いこなせているようだけど、神宮路さんはもしかして、自分に『治癒能力』があることを知っていたの?」


「ええ、もちろんですわ。この思念波補助デバイスはウチの会社が製造しているもので、お爺様が試作品を家に持ち帰って来てはわたくしを使って性能テストをなさってましたもの」


「そう言えば、神宮路電子工業が開発したものだって藤間主任も言ってたっけ」


「ですので乗客の応急措置と車両の防御は、前園先生とわたくしにお任せいただいても結構ですよ」


「ありがとう、すごく助かるわ。だけど、まだまだ怪我人が増えるかも知れないから、思念波の使いすぎに注意してね」


「承知いたしました」


 そう言って神宮路さんが負傷者の手当てに戻ると、今度は母さんが俺たちに檄を飛ばした。


「乗客のことは私たちに任せて、他のみんなはオークどもを蹴散らして来なさい。大丈夫、あなたたちならきっと勝てるわよ」


「わ、わかったよ母さん」


 そう言って俺にガッツポーズを見せる母さんだが、この母親は自分の息子がオークと戦うことに何も感じていないのだろうか。普通は心配するのでは・・・。




 一方この二人とは対照的に、普通の高校生らしい反応を見せているのが敦史と水島さんだ。


 2両目の惨状を見てすぐにうずくまると、顔を真っ青にしてゲエゲエ言っている。そんな二人の背中を心配そうにさする愛梨。


「・・・瑞貴、お前はよく平気でいられるな」


 敦史が辛そうにしながら俺に話しかける。


「平気な訳ないだろ。俺だってこんな惨状とても見てられないけど、何の罪もない人々をこんな無惨に殺せるオークどもが絶対に許せないんだ」


「強いなお前は。・・・しゃあない、俺ももう少し頑張ってみるか・・・」


 そして何とか立ち上がって俺の隣に立つ敦史を見て、自分も立ち上がろうとする水島さん。


 だが明らかに無理をしている水島さんに俺は、


「水島さんは3両目に戻って乗客たちの面等を見てくれると助かるよ」


「そ、そうよね。私にはその方が・・・」


 少しほっとしたような表情をした水島さんだったが、すぐに首を横にふって自らを鼓舞すると、


「ううん・・・私も前園くんと一緒に戦いたい」


 そう言った水島さんは、思念波補助デバイスを大切そうに自分の胸にギュッと押し当て、祈るような表情で俺を見つめた。


「水島さん、別に戦うだけが任務じゃないさ。乗客を守るのも立派な・・・」


 たが俺の言葉を遮ると、葵さんは水島さんを一緒に連れていくことを決めた。


「いい心掛けよ水島さん! あなたには戦闘は無理かなと思ったけど、できれば一緒について来て欲しい。(本当は瑞貴の傍にいてほしくないけど、この子にも思念波の適性があるから、現場に放り込んだ方が手っ取り早く覚醒するのよね)」


 そして葵さんが差しのべた手を握って立ち上がった水島さんは、覚悟を決めた表情で俺を見つめた。


 俺には水島さんがオークと戦えるなんてとても思えなかったが、葵さんは彼女に何らかの能力があるのを確信しているようだった。


 だから葵さんを信じて、水島さんに言った。


「一緒に戦おう水島さん。だが俺の傍から離れるな」


「うん! 私も頑張るから!」


 そんな俺たちにため息を一つついた葵さんは、改めて作戦の説明を始める。


「では次の作戦を伝えます。1両目を制圧した後、オーク騎士団の陣容や戦況を確認した上で可能であれば敵に攻撃を加え、無理そうなら電車の中で防衛態勢を敷きます。何か質問は?」


「だったら、最初から電車の中で防衛に徹した方がいいのでは」


「それも選択肢の一つだけど、この電車は12両編成で私たちで全てをカバーするのは不可能なの。救援が来るより先に電車への侵入を許せば、乗客の被害がさらに拡大する。その可能性を減らすためにあえて攻勢に出るのがベターだと思う。そのための敵兵力の規模や陣形の確認よ」


「そういうことなら了解した。だが後ろの車両の守りも心配だし、ここは二手に分かれた方が」


「実はさっき端末にメッセージが入ってて、この電車に乗っていた私の上司が非番の警官たちを集めて、乗客の混乱を収拾させているって。短時間なら彼らがオークの攻撃に対処してくれるはずよ」


「本当か! それなら安心だ」


「だから前園先生と神宮路さんの二人を残して、残りの6人でオーク騎士団に打って出るわよ」






 さて俺たちが1両目に突入するとオークは既に車内から兵を引いており、乗客の遺体だけが残っていた。


 2両目より犠牲者が多かったのはもちろん、ここからオークが突然侵入したというのもあるが、車内に巨大な岩石がゴロゴロ転がっており、これが打ち込まれたことで犠牲になった人も少なくないようだ。


 運転席部分も木っ端微塵に打ち砕かれて、客席部分との壁も完全に破壊されていたため、オークがここからは侵入したことで間違いない。


「敵はおそらく攻城兵器を使用したのでしょう」


「アリスレーゼ、何だそれは?」


「敵の城壁を壊すために用いる投石機のことで、そこに転がっている岩石を飛ばして攻撃します。前方から水平に発射されたところを見ると、敵はオークだけでなくそれをサポートする人間もいるはずです」


「人間? それって」


「ええ」


 そう言ってアリスレーゼは自分の指に光る指輪を俺に見せた。


 バリアーもそうだが、敵が魔法を使用していることは明らかであり、それを駆使しているのはオークではなく人間、おそらく魔術師の類いなのだろう。


「ねえみんな、前方でオークが集まって何かしているわよ」


 葵さんが何かを発見したようで、俺たちは1両目の中を敵がよく見える位置まで前進した。


 すると電車の先頭から100メートルほど先にオークの集団があり、その直上に巨大な魔法陣が浮かんでいてそこからオークが1体ずつ姿を現していた。


「空間から忽然と現れているが、まさかオークを召還しているのか」


「ファンタジー風に言うとそうね。私たちはあれを、並行宇宙からの時空転移現象と呼んでいるけど、過去に8回ほどこれと同じ現象が起きていて、その都度私たち特殊部隊が彼らを撃退してきたのよ」


「時空転移現象・・・つまり、ああいったことがこれまでも起きていて、政府はそれを秘密裏に対処していたってことか」


「ええ。彼らについてはまだ分からないことだらけだけど、戦闘データを収集しながら彼らを撃退する方法を必死に模索してきたのよ。そしてその成果の一つがみんなの手元にある思念波補助デバイス。これのおかげでバリアーを破壊できるようになり、彼らを倒すことが可能になったのよ」


「とても信じられない話だが、葵さんを見てると納得するしかないな。それでここからどうすればいい」


「そうね、あれを見て」


 葵さんが指差した正面のオークの集団は、その一部が俺たちを警戒して守りを固めている一方、残りの大半が空に向けて岩石やら弓矢やらを放っている。そしてその狙いの先には、ヘリコプターの大群がホバリングを続けていた。


「あれって救助隊のヘリじゃないのか? 助かった」


「ええ、だけど喜ぶのはまだ早いわ。あのヘリには私たちと同じ公安UMA室の戦闘員が乗っているはずだけど、彼らはここに近づけずにいるみたい。私たちで援護しましょう」


「わかった。ようするに奴らの攻撃の邪魔をして、着陸できるようにすればいいんだよな」


「ええ。その方法だけど、ここから全員で遠隔攻撃を試してみましょう。やり方はさっき教えた通り、漫画の主人公になったつもりで撃てばいいの。それでみんなの適性を見てみるわね。瑞貴とアリスレーゼさんの二人は自分達の攻撃方法があるみたいだから、そちらでお願い」





 それから俺たちは敵から見えない位置に隠れると、各自のやり方で遠隔攻撃の発射準備を行った。俺とアリスレーゼはマナキャノンを、残りの4人はデバイスによる攻撃だ。


 そして全員の準備ができたのを確認すると、葵さんが発射の合図を出した。


「撃てっ!」


 その瞬間、車両の外側には2つの魔方陣と4つの光の塊が空中に浮かび上がり、そこから6色のビームが一斉に発射された。


 葵さんはすぐに立ち上がると、計測器を構えてそれぞれのビームがどの程度の破壊力を持っているのか確認を始めた。


 一方、物陰に隠れて葵さんの指示を待つ俺たちは、攻撃を受けたオーク騎士団の悲鳴や怒号と、ヘリ部隊によるプロペラ音だけが遠くに聞こえている。


 そして確認が終わった葵さんが再びしゃがみこんで俺たちに戦果を伝える。


「今の攻撃でみんなの適性が判明したわ。瑞貴とアリスレーゼさんはいいとして、愛梨ちゃんと水島さん、敦史の3人では敦史に遠隔攻撃の適性があるみたい」


「マジか、よっしゃー!」


 敦史は俺の傍に寄ると、グータッチを求めて来た。


「やるじゃないか敦史。お前にそんな才能があったなんてな」


「へへっ、どんなもんよ」


「それで敦史の次は愛梨ちゃんだけど、水島さんは残念ながら遠隔攻撃の適性はほとんどなかったわ」


「がーん! この愛梨様が敦史に負けた・・・」


「・・・やっぱり私なんか何をやってもダメなのね」


 ガックリと肩を落とす二人だが、葵さんはさらに説明を続ける。


「愛梨ちゃんには未来予知という特殊能力もあるし、遠隔攻撃もそこそこ強かったわよ。それから水島さんの場合、逆に近接攻撃の適性が強いと思うの」


「近接攻撃・・・イジメられていたこの私が?」


「具体的な能力は分からないけど、傾向としてはね。さあこれでみんなの適性が判明したからチーム分けをするけど、まず遠隔攻撃チームはアリスレーゼさんが指揮官で愛梨ちゃんと敦史がメンバー。ここから正面の敵を攻撃して、上空のヘリ部隊がこちらに近付きやすくしてね」


「承知いたしました」


「それから近接攻撃チームは私が指揮官で瑞貴と水島さんがメンバー。この電車の周囲にいるオークどもを一気に蹴散らすわよ」


「おう!」


「私なんかで本当に大丈夫かな・・・」


「そんな水島さんに、このデバイスの残りの機能を教えておくから、みんなも聞いて」


 そう言って、さっき俺に教えてくれた敵のバリアーを見る機能と、自分自身がバリアーを展開する機能の二つをみんなに教えた。


「デバイスの両端を両手で握って、敵の攻撃を受けるように突き出すのよ。これは攻撃機能のように各自の適性を最大限に引き出すものではなく、セーフティー機能として必ず全員が使えるものだから安心してね。ではアリスレーゼさん、こちらの指揮をお願いね」


「了解したわ」


「じゃあ瑞貴と水島さん、私たちは車両の外に出るわよ。・・・3、2、1、GO!」


「「突撃開始っ!」」

次回もお楽しみに


なお、ストックが全くない上にゼルダが発売されたため、更新は少し遅れるかも・・・。



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