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クラスメイトは異世界王女  作者: くまっち
第3章 冒険者大国レガリス
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第47話 セレスフィリア来襲

 帝国軍の包囲網から脱したレガリス騎士団は、執拗な追撃を受けながらも南方への退却を進めていた。


 先陣を切っていた愛梨、弥生、アリスレーゼの3人は後方に合流し、Sランク冒険者級の攻撃力を誇る瑞貴たち全員でしんがりとしての務めを果たしていた。





 そんな瑞貴の前に一人の少女が現れる。


 空間転移で亜空間より出現したその少女はアリスレーゼにとてもよく似た顔立ちをしていたが、グランディア帝国軍の指揮官服を着用していた。


 胸に勲章をいくつも並べて、将官クラスの雰囲気を漂わせていたその少女は、冷酷なまでに整った顔を崩すと、突然ニタリと笑った。


「・・・へえ。あなたがヴェーダの生まれ変わりのミズキなのね。随分と見た目が変わったけど、すぐにあなただと分かったわ」


「なっ!!」


 初対面で自分をヴェーダの生まれ変わりだと言い放つ少女の正体を、瑞貴は疑うことができなかった。


「シーダ・・・なのか。やはり生まれ変わっていやがったか。しかもよりによってグランディア帝国軍の指揮官なんかに」


 呆然と立ちすくむ瑞貴に、だがその少女は攻撃を仕掛けるわけでもなく、楽しそうに話しかけて来る。


「うふふ、4000年ぶりの帰還というわけね。おかえりなさいヴェーダ、あなたを歓迎するわ」


「歓迎だと? 一体どういう意味だ!」


 かつては本気で殺し合った敵同士で、互いの国民を巻き沿えにして多くの命が失われた。しかも現世でも敵同士になったシーダが自分を歓迎するはずはない。


 だがクスクスと笑う少女が軽くスカートをつまんでお辞儀をする。


「改めて自己紹介するわね。今世のわたくしはグランディア帝国第一皇女セレスフィリア。アレクシス皇帝の長女で15歳になったばかりよ」


「アレクシス皇帝の長女・・・それが今のお前か」


「うふふ、前世よりも綺麗になったでしょ。・・・あら? わたくしに再会できたことがそんなに嬉しいのかしら?」


「嬉しいだと? ・・・いやそうかも知れん。これでアリスレーゼがお前の生まれ変わりではないことがハッキリ証明できたんだからな」


「・・・ふーん、それがあの有名なティアローズ王国第一王女のアリスレーぜね。わたくしによく似ているけど、随分と大人っぽいのね」


「・・・しまったマインドリーディングか!」


「オホホホホ! もう遅いわヴェーダ! わたくしがずっと話しかけていたのは、あなたの記憶を呼び起こすため。そして間抜けなあなたから色んな情報を読み取ることができたわ。そう・・・異界門の鍵を盗み出したのはやはりあなたの仕業だったのね」


 完全に虚を突かれた瑞貴は、シーダの生まれ変わりが精神感応魔法の適合者であることを忘れて、記憶を盗まれてしまった。


 慌てて彼女から距離を取ろうとするが、かなでが瑞貴の腕をつかむとセレスフィリアに向けてデバイスを向けた。


 その瞬間、強力なジャミングが発動して精神感応魔法が遮断された。


「くっ・・・わたくしのマインドリーディングを遮断するとは何て強力な結界。そう、あなたがあのカナデね。うふふふ・・・オーッホホホホ!」


 そう言って突然笑い出したセレスフィリアの隣に、一人の男が瞬間移動してきた。


 20歳前後のその男は、セレスフィリアと同じ帝国軍の指揮官服を着用し、だがその容貌は明らかに東洋風で瑞貴のよく知った人物だった。


「お前は鮫島っ!」


「よお前園ぉ久しぶりだなあ。それからかなでも元気そうじゃないか。まだあのダッセえパンツをはいて二人で学園ごっこで遊んでいるのかな。ケケケケケ!」


 薄気味悪い三白眼でニタニタ笑う鮫島に、セレスフィリアが尋ねる。


「あなたが奪いたがっていた女はこの娘でいいのかしら? サメジマ男爵」


「ああ、コイツだ。今の俺が一番欲しいのがコイツの結界師としての能力と強力な光属性魔法なんだ。これで俺は全属性持ち! ウヒ、ウヒ、ウヒヒヒヒ!」


「ちょっと待て、サメジマ男爵だと? 俺たちを裏切った上に帝国に寝返ったのか。なんて奴だ・・・」


 怒りに震える瑞貴に、腹を抱えて笑い出す鮫島。


「ヒャーッハハハ! 帝国貴族は最高だぞ前園ぉ。でかい家に住めて、うまい飯もたらふく食えて、いい女を抱きたい放題だ」


「鮫島・・・お前どこまで人間が腐ってやがる」


「バ~カ。所詮人間なんて欲の塊みたいな生き物で、俺はそれに忠実に生きているだけだ。それに俺を散々利用し尽くして全てを奪った日本と違って、グランディア帝国はあらゆる属性魔法と膨大な魔力を俺に与えてくれた。前園、貴様を殺すためになっ!」


 そして鮫島がいきなり放った思念波弾を、だがかなでのバリアーが完璧にはじき返した。


「瑞貴くんは私が守るっ!」


「ウヒヒヒ! 「私が守るっ」だってさ。いやあダサパンツは本当に健気だねえ」


「私のパンツはダサくなんかないもん! 瑞貴くんはカワイイって言ってくれたし、よく似合ってるから気にしなくていいって言ってくれたもん!」


「ケッ、何がよく似合ってるだバーカ。それはてめえ自身がダセえって言われてるのと同じだろうが。だがお前ら、もうそんな関係になっていたのかよ」


 顔を曇らせた鮫島に、かなではハッキリと言った。


「そうよ。私はもう瑞貴くんのものだからどこかに消えてこの強姦魔っ!」


「ちっ・・・なら二人ともここで死ねっ!」




 言うが早いか鮫島の思念波エネルギーが一気に膨れ上がると、思念波補助デバイスから強力な思念波弾が発射された。


 それは日本にいた頃とはまるで威力が異なり、その破壊力は当時のアリスレーゼにすら匹敵し、その速射能力は敦史をも超えていた。


 あまりの猛攻に辺りは爆風と砂塵で視界が失われ、アリスレーゼたち他のみんなも瑞貴の元に集まり、鮫島に向けてデバイスを構えた。


「みんな! 鮫島は以前とケタ違いの強力な攻撃力を手に入れたようだ。油断するな!」


 すると表情を固くしたアリスレーゼがささやく。


「わたくしの見たところ、この男は光属性以外の6属性魔法を手に入れ、その魔力も依然とは比べ物にならないほど強大になっているのが分かります」


「6属性・・・一体どうやって」


「おそらくグランディア帝国で教会の洗礼を正式に受け、神との契約の元この世界の属性魔法を手に入れたのだと思います。ですがこの短期間でここまで魔力を増大させる方法は、わたくしにも・・・」


 そんな鮫島の猛攻が一段落して視界が開けたその先には、セレスフィリアと鮫島の二人が並んでニタニタ笑っていた。


 そして彼女が愉快そうに口を開く。


「あなたがアリスレーゼ第一王女ね。あら、そう言えば、今はどこかの国の女王様でしたね。うふふふふ」


「・・・あなたは?」


「初めまして。わたくしはグランディア帝国第一皇女セレスフィリア。いいえ、ティアローズ王国初代女王といった方がいいのかしら?」


「あなたがシーダの生まれ変わり・・・300年間も現れなかったのに、どうして今になってっ!」


「このわたくしを呼び捨てなんて、始祖を敬う気持ちがあなたにはないのかしら」


「ございません」


「・・・随分ハッキリと言うのねこの女は。まあいいでしょう。その潔い態度に免じて特別に教えてあげます。この300年間、わたくしは常に存在し続けていました」


「え?」


「4つの異界門を作るにはティアローズ王家の力を必要とした。だからわたくしはあの国を建国したのだけれど、300年前にそれも完成して、あとは発動させる準備を整えるだけになっていた」


「我が王家が異界門を作っていた・・・そんなの知らなかった」


「ティアローズ王家の役目などもう終わっていたので、知らなくて当然でしょ。そしてわたくしは、そんな用済みの国に生まれ変わっても仕方がないので、洗礼を受けて記憶を復活させた後も自分がシーダだと名乗らずこっそり国を去っていた」


「ティアローズ王国が用済みの国・・・」


「それともう一つの疑問にも答えてあげましょう」


「え?」


「サメジマ男爵が急に魔法が使えるようになった理由。それってわたくしのおかげなのよ」


「あなたの?」


「うふふ。サメジマ男爵には特殊な能力があるのをご存じかしら? 周囲の魔力を集めて自分のものにできるという」


「それは存じ上げております。以前、その男の仲間でしたので」


「あらそう。なら自分の中に貯めこんだ魔力をそのまま使ったり他人に与えたりすることにしか使ってなかったのはもちろん知っていたのよね。でもサメジマ男爵の能力の本質はそこではないの。この男は他人の魔法を奪い取ることもできるのです」


「他人の魔法を奪い取る・・・まさかそんなことが」


「普通はあり得ないけど、彼には可能なのよ。それにはもちろん制約があって、魔法を奪い取れる相手は純潔の乙女からのみ。そして純潔を奪うと同時にその女の能力を根こそぎ奪い取ることができる」


「純潔を奪う・・・その能力と共に根こそぎ」


 そのあまりにもおぞましい鮫島の能力に、その場にいた全員の顔が青ざめた。


 だがセレスフィリアは笑いながら、さらなる事実を告げる。


「そんな彼に、わたくしはいけにえを用意してあげたの。下級貴族の娘や、魔力を持って生まれた平民の娘をおよそ100人程度。そして彼女たちの魔力を全て奪い取ったことで、彼はこんなにも強くなったのよ。オーッホホホホ!」


「・・・何て酷いことを」


 愕然とする瑞貴たちに、セレスフィリアは楽しそうに言い放った。


「サメジマ男爵、ここにいる小娘たちは全員処女よ。遠慮なく全員の能力を奪い取ってしまいなさい!」


「マジかよ! うひゃひゃひゃ、こりゃ傑作だ。前園はこの俺様のために、こいつらに一切手を出さずに居てくれたというわけか。ありがとよ前園おおおお!」


 腹を抱えて笑い転げる鮫島の隣で、セレスフィリアが聞き取れないほどの早口でその呪文を詠唱した。



【闇属性極大魔法・シーダの矢】



 その瞬間、巨大な闇が瑞貴たちに襲いかかり、闇のオーラが激しい魔力の奔流となって、全てを黒く塗りつぶしていく。


 全員が必死にバリアーを展開して、多層バリアーで互いの命を守り合ったが、次々と消滅していくバリアーにその再展開が追い付かず、ついには全員まとめて爆風で飛ばされた。


 地面に転がされた瑞貴がすぐに立ち上がると、遠くの方でセレスフィリアが楽しそうに笑っている。


 瑞貴のすぐ近くに飛ばされていたアリスレーゼや他のみんなも次々と立ち上がると、デバイスをセレスフィリアに向けて構えるが、瑞貴の後ろで雨宮主幹が悲痛な叫びを上げた。


「かなでちゃんがどこにもいないの、瑞貴君!」

 次回もお楽しみに。


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